【映画】「ストレイ・ドッグ」感想・レビュー・解説

メチャクチャ面白い映画だったなぁ。もの凄く良く出来たストーリーだった。

内容に入ろうと思います。
物語は、川辺で男の死体が発見されるシーンで幕を開ける。既にLA市警が捜査を開始しているが、同じくLA市警の刑事である主人公のベルも、フラフラとした足取りのままやってくる。現場には、盗難防止の塗料が付いたお札が置かれている。ベル刑事は、お前の担当じゃないんだからさっさと帰れと邪険に扱われるが、「犯人を知っている」と意味深な言葉を残して現場を立ち去るのだ。
場面は変わって。ベル刑事は、オフィスに郵便が届いたことを知らされる。中身を確認すると、なんと盗難防止の塗料が付いたお札だった。サイラスが動き始めた、とベル刑事は理解する。そして、サイラスのことを知っている人間を探し出して、行方を追う決意をする。
サイラスの行方を追うことは、かつての自分を追いかけることでもある。かつてFBIに所属していたベルは、同僚のクリスと共に、あるギャングの潜入捜査をしていた。そのボスがサイラスだ。ギャングの仲間になったフリをして、彼らの仲間と親しくなり、情報を収集していた。
サイラスを追うことは、自分の過去が突きつけられることだ。ベル刑事は、相棒のアントニオをほったらかし、一人で動き回り、あまつさえ、暴力や違法行為も辞さない、何でもありの追跡を続けることになる。
ベル刑事が追いかけているサイラスとは、そして同じようにして追いかけている自らの過去とは、一体なんなのか…。
というような話です。

冒頭からインパクトのある映画だったなぁ。とにかく、主演のニコール・キッドマンの疲れ切った顔が、メチャクチャ印象的でした。俳優のことをほとんど知らない僕でも、さすがにニコール・キッドマンは知ってるので、疲れ切ったようなメイク(あるいは特殊メイク)をしていると分かりましたけど、ニコール・キッドマンのことを知らなかったら、そういう顔の女優だと勘違いしてたと思います。

そして、疲れ切ってフラフラとしているその雰囲気のままに、とにかくニコール・キッドマンがやりたい放題やっている映画です。とても刑事が主人公とは思えないハチャメチャっぷりが最後まで続く、怒涛の展開です。そんなことして大丈夫なのかよ、というような行動をひたすらしてて、痛快と言えば痛快です。

しかし、映画を観ていてずーっと、ベル刑事がサイラスを追う行動原理が分からないままでした。確かに、相棒のアントニオには、「サイラスだけは、自分の手”だけ”で捕まえたい」と強調するように説得していたので、まあそういうもんかと思ったりしたのだけど、それにしても、こんなムチャクチャな捜査をしてたら、逮捕どころじゃないんじゃないか?大丈夫かベル?と思いながら観ていたんですけど、最後、「なるほど、そうなるのか!」という驚きがあって、一気に色んな疑問が解消されました。

疑問と言えば、物語の中にちょくちょく、娘のシェルビーが登場します。どうやら、ベルとシェルビーは一緒には住んでいないようで、仲もお世辞にも良さそうじゃない。というか、シェルビーは明らかに母であるベルを疎ましがっている。そんな態度を取るシェルビーとの関係修復を望むかのような描写が、結構な割合で物語の中に挿入されていきます。これも、正直、全然理解できませんでした。この描写、要るか?と思いながら観てたんですけど、これも疑問が解消されました(まあ、こちらについては、劇中でははっきり明示されないので、僕の予想ですけど)。

基本的には、「なんでこんな行動を取るんだろう?」という疑問符をずっと抱えたまま映画を観る感じになるんですけど、ベルの行動原理が明らかになることで、それらが一気に解消するという、そういう痛快さもある映画だなと思います。

まあ、そんな構成の映画なので、具体的に書けることが少なくなってしまいます。ベル自身の過去の物語についても、断片的に少しずつ明らかになっていくので、なかなか触れにくい部分があります。ただ、過去にそんな出来事があったのだとしたら、酒に溺れ、くたびれ疲れ切った容姿になり、周囲の様々な人から疎まれながら孤独に生きているという現状についても、分からないでもないよなぁ、という感じがします。

個人的に印象的だったのは、雪山を歩いているシーン。というか、それについて語っている場面の方ですけど。ここで語られたことについても、具体的にそれが何だったのか明示されておらず、解釈は人それぞれだと思いますけど、色んな意味で、ベルの人生は、「贖罪」という言葉がつきまとうんだろうなぁ、という感じがしました。

しかし、ニコール・キッドマンが主演の映画だというのに、公開してる映画館が少なすぎてビックリする。この文章を書いている時点で、全国でたった11館でしか公開されていないようです。なんで???

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