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群像劇企画『猫が消えた日』を書き終えて | 左頬にほくろ

こんにちは、左頬にほくろです。

この度ノベルメディア文活から紙の同人誌『文と生活』が刊行されるにあたり、文活メンバーで取り組んだ合同執筆群像劇企画『猫が消えた日』についてお話させていただきます。

いつも文活を読んでくださる皆様にも、
今回初めてお手にとってくださった皆様にも、
自信を持って「おもしろい作品ができました!」とお伝えできるような試みとなりました。

群像劇企画について

我々文活メンバーは、毎月「はしる」「すずむ」など生活の一部に因んだ或る一言のテーマから各作家が繰り広げたあらゆるシチュエーションの物語をお届けしています。

家族、恋愛、友情、、テーマにしたのは同じ一言のはずなのに、箱を開けばまるで想像できないようなカラフルなプレゼントが詰まっているのがノベルメディア文活の魅力だと、書き手のわたしも毎月10日の刊行日が楽しみになるほどです。

しかし、今回取り組んだ群像劇・猫が消えた日では “或る街と出来事” をひとつの括りと定めて創作を行いました。一点モノをそれぞれ楽しむいつものスタイルとはまた違い、ひとつのパズルを全員で完成させるような新たな試みです。

では、全員で何を描くのか。

事前に決まったのは【日本のどこかとある街で、ある日、駅前に設置されていた猫の銅像が消えた】ということ。

ここから、代表して私・左頬にほくろが細かな設定をつけさせていただきました。

パズルの下書き

“ある街で、ある日、猫が消えた”

その全体設定をもう少し明確にするべく、まずわたしが行ったのは「街」の色付けです。

街と聞いて真っ先に想像したのは、その街は都会なのか?田舎なのか?ということ。そこで、都会と田舎、全く異なるふたつの設定を用意して運営の御二方にご意見をいただくことに決めました。

< 都会 >
・「暮らす」<「働く」に特化した場所
・改札が幾つもあり特急も停まる大型駅
< 田舎 >
・「働く」<「暮らす」に特化した場所
・改札がひとつで各駅停車のみの小さな駅

と正反対のそれらには双方異なるワクワク感がありましたが、今回は複数作家での合同創作が初めてということもあり、より幅広く設定が浮かびそうな“都会”で進めることに。そしてその街を『とびヶ丘』と名付けることになったのです。(なぜ“とびヶ丘”なのか名付けの理由は、わたしが書いた小説本編にて明かされております!)

さらに駅前の雰囲気や、猫の銅像の特徴などを作り込みながら、とても楽しく「妄想」という名の骨格形成を進めました。個人の執筆と違って終始留意していたのは「決めすぎずも膨らませる種を仕込む」ことでしょうか。

例えば、猫の特徴に入れた「何故だかどんなサイズの手のひらもフィットするオデコの形をしている」ことや、消えたという事象に対して「そのことに気付いた人と気付かなかった人がいる」など、条件を設け過ぎることなく書き手の自由度が狭まらないようにと意識しながら下書きをしました。

“誕生日でも記念日でもないけれど、ひとつラベルをつけるならば「猫が消えた日」”

ひとつのパズル、と先述しましたが作りたいのは決められた色で塗る一辺倒な絵ではなく、“猫が消えた”という出来事を個性的な書き手が様々なピースで表現する鮮やかな絵でした。

さて、とびヶ丘には一体どんなピースが集まったのか。
それは・・・是非本編をお手に取ってお確かめくださいませ!

■ 「とびヶ丘」設定資料の一部

① 街の様子
北改札・南改札・中央改札がある大型駅 / 特急が停まる、他路線にも乗り換え可能 / この街は「暮らす」<「働く」に特化した場所 / 会社、店、学校、美容院、買い物etc =“外の自分”として訪れる場所 / 人々が生きるが長くは定着しない街 / 赤いレンガの石畳が小洒落た駅前ロータリー / 3つ並んだベンチが特徴 / その真ん中のベンチに“いる”

② 当日の様子
風がカラッとしてる / 運動会の朝みたい / 洗濯物がよく乾きそう / でも少しだけ肌寒い秋の入口 / 今日は絶対に雨は降らない / 何かいいことが起こりそうな空

③ ベンチ猫について
中央改札を出たロータリーのベンチに“いる”→中央改札を使わない人(北or南の利用者)は知らない可能性もある? / 近くには看板や説明書きは置かれていない / 人々は自由に名前をつけている(※しかし、タマ、ミー、などいわゆる古風系統ではない名前) / 性別も年齢も不明 / 新しくも古くもないがいつもピカピカに磨かれている / 目は開けられているがどこから見ても目が合わない / 座り方に貫禄があり控えめには見えない / ツンとした気高い顔立ち / 色は艶やかなブロンズ一色 / 何故だかどんなサイズの手のひらもフィットするオデコの形をしている

有限と、無限と。

今回、下書きと本書き、ふたつの“創作”を経て、有限から生まれる無限の愉しさを知りました。

同じ色の絵の具を使いながらも、混ぜたり溶かしたり薄めたりその使い方は人それぞれ。その結果、作家特有の個性を感じられる色使いの面白みもあれば、不思議と一貫する同系色の融和性を感じられる面白みもある。そんな相反する要素をお届けできるような取り組みになったのではないでしょうか。

そして、何より。
この物語が読者様のお手元に届いた後、皆様の脳内でもきっと何処かに存在する『とびヶ丘』のうつくしい街並みが色鮮やかに浮かんでいれば嬉しく思います。

文:左頬にほくろ
編集:ノベルメディア文活


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