マガジンのカバー画像

月刊文芸誌『文活』 | 生活には物語がみちている。

noteの小説家たちで、毎月小説を持ち寄ってつくる文芸誌です。生活のなかの一幕を小説にして、おとどけします。▼価格は390円。コーヒー1杯ぶんの値段でおたのしみいただけます。▼詳… もっと読む
このマガジンを登録いただくと、月にいちど、メールとnoteで文芸誌がとどきます。
¥390 / 月
運営しているクリエイター

#文芸誌

【文活6月号ライナーノーツ】夕空しづく「神様の質問箱」

『あなたは概念みたいだ』 時折、そう言われることがあります。 それは私が、ネットで文章を書いている人間だからかもしれません。 ネットに綴られる文章には、実体が伴いません。 その人の一側面、思考の断片が、文章というかたちで表れているに過ぎません。 それは血を吐くような思いで紡ぎ出したものかもしれないし、息を吐くように呟いたものかもしれない。それでも、その人がその人として生み出したものに相違ありません。 けれど本当は、私にもあなたにもあの人にも「実体」があります。 各々の

【文活2022年6月号】北木鉄さん長編小説「点々」開始|ゲスト作家は夕空しづくさん|リレー小説「シェアハウス・comma」最終話まで残り三話

こんにちは!文芸誌・文活です。 雨の多い日が続いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。窓を伝う水滴でゆがむ紫陽花片目に、優雅な読書とティータイム……なんて、現代人としては叶わぬ願いなのかもしれません。でも物語や言葉には、一瞬で人を別世界に連れ去る魅力がありますよね。 だからこそ雨の日には、物語が恋しくなるような気がします。今月号の文活は、そんな言葉の力や物語の力をそっと教えてくれるような、梅雨にピッタリの作品が揃いました。 ・上田聡子さん『先生と私のスケッチ』 ・西

【文活5月号ライナーノーツ】西平麻依「噂通り、一丁目一番地」

『オーダーメイドの言葉で』 はじめに 連載小説を書いてみませんかと文活運営のなみきさんにお誘いいただいた時、私は「なみきさんも連載を書かれますか? それなら……」と、ゴニョゴニョと歯切れの悪いお返事をしたと記憶しています。 これは自信のなさの表れで、書き手として及第点に満たない態度だったなあと反省しきりですが、そんな気弱な気持ちからスタートした『噂通り、一丁目一番地』の最終話がこのたび形になり、ホッとしています。物語の完結を見届けて下さった皆さま、また私の新しいチャレ

【文活2022年5月号】西平麻依さん「噂通り、一丁目一番地」最終話|ゲスト作家は兄弟航路さん|読み切り小説三編

こんにちは!文芸誌・文活です。 沖縄では梅雨入りし、すでに夏の足音が聞こえるような日々が続いていますね。ゴールデンウィークもおわり、皆さんそれぞれ毎日に向き合う生活を送られているのではないかと思います。文活の物語も、登場人物たちが自分や家族、関わる人々と向き合うような、そんな作品を集めました。 ・西平麻依さん『噂通り、一丁目一番地』第四話 ・左頬にほくろさん『栞』第二話 先月号から引き続き掲載するこの二作品は、登場人物たちが遭遇する偶然の出来事によって、物語が進んでいく

【文活4月号ライナーノーツ】ネズミ「あの日が私たちの人生を大きく変えた。」

 有り難いことに僕の記事を読んでくれた文活の中村さんから、『「大丈夫」という言葉、僕は好きになれない』をベースに新たな話を書いてくださいという依頼を受けた。  自分なりに一度完結させた話だったため、正直苦労した。  今回は主人公を佐々木大翔から夜凪美穂へ変更して、女性目線で話を書いてみようというアイデアはすぐに浮かんだ。書きたいエピソードも次から次へと出てきた。順調かと思っていたがそのエピソードたちをどういう順番で書けばいいのかに悩んだ。時系列を考えて、配置しないと読みにくく

【文活2022年4月号】左頬にほくろさん連作小説「栞」開始|ゲスト作家はネズミさん|長編小説2本は第三話へ

こんにちは!文芸誌・文活です。 4月と思えない気温の日々ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。新しい年度にわくわくどきどき、今月号の文活は、そんな新生活と同じように、新たな局面を迎えるシリーズ作品多めでお送りします。 ・なみきかずしさん『みずうみ』 ・西平麻依さん『噂通り、一丁目一番地』 の2作品は先月号から引き続いて第三話を掲載し、今月号からは新たに、 ・左頬にほくろさん『栞』 の連作小説がスタート。三話目になる物語は、そろそろ長編としての面白みが出てくること

【文活3月号ライナーノーツ】広瀬ケン「吉祥寺のキャバクラで出会った女の子と桜桃忌に行った話」の、裏話。

この記事は、文活マガジンをご購読している方への特典としてご用意したライナーノーツ(作品解説)です。ご購読されていない方にも一部公開しています。ぜひ作品をお読みになってから、当記事をおたのしみくださいませ。 『お別れの前日』というテーマを見た瞬間、真っ先に浮かんだのは「どうやってお断りしようか?」でした。 締切が近い(実際にテーマがなんであれ締切は物理的に近かったのです)、ワクチン接種が近い(実際に3回目を摂取して寝込んで週末を2日間つぶしました)、それか、もう正直に、「『

【文活3月号ライナーノーツ】雪柳あうこ「きんいろのゆき」

この記事は、文活マガジンをご購読している方への特典としてご用意したライナーノーツ(作品解説)です。ご購読されていない方にも一部公開しています。ぜひ作品をお読みになってから、当記事をおたのしみくださいませ。  かつて暮らしていた家の近くに、とても大きく見事なイチョウの木がありました。  文活3月号に寄稿した「きんいろのゆき」は、季節外れの、とても早くに降る雪を見た時の1シーンがどうしても忘れられないことをきっかけに生まれた作品です。今年はわたしの住む東京でも何度も雪が降り、

【文活2022年3月号】読み切りテーマ「お別れの前日」|ゲスト作家は広瀬ケンさん|長編小説2本は第二話へ展開

こんにちは!文芸誌・文活です。 今月号の文活のテーマは『お別れの前日』。何かと別れがつきもののこの季節。「お別れ」をテーマに3編の小説を掲載しています。 (今回は直球の切ない小説ばかりで、読んでいると切ない気持ちになるかも。。。) 他にも、先月から連載している長編小説2本 ・なみきかずしさん『みずうみ』 ・西平麻依さん『噂通り、一丁目一番地』 は第二話を掲載。展開から目が離せません。 ゲスト枠では広瀬ケンさんに寄稿いただきました。生々しい輪郭で現実を描き、読者を刺

【文活2月号ライナーノーツ】竹野まいか「土曜日のパン・オ・ショコラ」

私、劣等感の塊なんです。いきなりこんなことを申し上げると驚かれて、というか引かれてしまうのでいささか勇気がいるのですが。 体育が苦手な子供でした。特に水泳、あいつは駄目だ。まずプールに枯葉とか虫の死骸が浮いているのが無理。そう、虫も全面的に無理です。数学も苦手。集団行動は好きじゃないけどずっと平気なふりをして生きてきました。大人になってからは週5で会社に行くことと洗濯物を畳むのが嫌いだと気付きました。 だけどほどほどに得意なことや好きなものもあります。ほどほどだけど。国語

【文活2月号ライナーノーツ】上田 聡子「あのひとに雨を降らせて」|過去作のリライトについて

みなさん、毎日寒いですがお元気でいらっしゃるでしょうか。 上田聡子です。 2月のライナーノーツを担当させていただくことになりました。 どうぞよろしくお願いいたします。 今回は、過去作のリライトや、過去作にもう一度光を当てることについてお話したいと思います。 今回の「チョコレートな戦い」をテーマにした拙作「あのひとに雨を降らせて」ですが、こちらは六年前の2016年当時にnoteに書いた掌編「チョコレート中毒」を改稿・リライトしたものなのです、実は。 六年前の「チョコレー

ノベルメディア『文活』のたのしみかた

はじめまして、ノベルメディア『文活』と申します。 『文活』は、人々の生活に物語をとどけるためのノベルメディアです。主な活動として、noteの小説家たちによる、月刊の文芸誌を発刊しています。この記事に気づいてくださったあなたに、ちょっとした自己紹介をさせてくださいませんか? 目次 文活とは どんな作品を出している? 参加している作家は? 文活の受け取り方 SNSアカウント 1. 「文活」とは何かと忙しい毎日のなかで、じっくりページをめくって、物語とふれあうよう

【文活9月号ライナーノーツ】西平麻依 「もしきみに、どこかの街角で会ったら」

この記事は、文活マガジンをご購読している方への特典としてご用意したライナーノーツ(作品解説)です。ご購読されていない方にも一部公開しています。ぜひ作品をお読みになってから、当記事をおたのしみくださいませ。  本音を言うと、私は学校がずっと苦手だった。  学問は時に深くおもしろいし、友人に会えるし、学校生活にだって発見や感動が満ちているから、何一つ文句を言う筋合いはないのだけれど、毎日同じ制服を着ることや、決められたスケジュール通りに動かなければならないこと、それらに何の疑

【文活9月号ライナーノーツ】赤野シン「陶酔」

この記事は、文活マガジンをご購読している方への特典としてご用意したライナーノーツ(作品解説)です。ご購読されていない方にも一部公開しています。ぜひ作品をお読みになってから、当記事をおたのしみくださいませ。  物書きは、と主語を大きくするのは好ましくありませんが、少なくとも私は、ロマンチストで、運命論者な節があります。こうして「文活」に参加させていただいたのも、恵まれた縁あってのことですから。  遅れまして申し訳ございません。はじめまして。赤野シンと申します。過去のライナ