見出し画像

転職したら文化人類学にハマった話。

自分が文化人類学に心惹かれたきっかけを紐解くと
いくつか頭に思い浮かぶのだけど、
ひとつ明らかなのは、やはり転職だ。

昨年の秋、10年以上勤めた会社を辞めて転職した。
伝統的(と言ってもいいはず)日本企業から
完全に欧米式の組織である外資系企業へ。

前職の会社は人も仕事も大好きだったので、
半年以上むちゃくちゃ悩んだのだけど、
最後に背中を押したのは、異なる組織文化への好奇心だった。
10年以上ひとつの組織に居続けたことによる停滞感や
主に「働き方」に関する前職の人々の考え方への違和感を拭い去るには
違う文化がある環境に飛び込むしかない!と思ったのだ。

率直に言って、前職は忙しかった。
たとえば、お客様が求めるクオリティの提案を作るために
どうしても深夜作業が必要になったとする。
提案は明日なのに、どうしても間に合わない。
自分としても、もう少し頑張りたい。
そんな時、当然のように深夜作業をしていた。
Messengerでやり取りしながら(メールだと怒られるので)
翌日の提案をどうにかこうにか組み上げていく。
そうしてチームで難局を乗り切り、提案を通して実現してゆくことは
その時その時は快感だった。

だが、似たようなことが二度三度繰り返されると、心がモヤモヤしてくる。
なぜまたこうなるのか? はもちろんなのだが、
むしろ「どうしたら、次はそうならないか?」という議論が
チームで起こりにくいことに違和感を持った。
「毎度申し訳ないんだけども…」という上司の言葉はもはや枕詞化していて、
抜本的な改革に着手する気配はなかった。

前職の会社は、働き方のサポートについては非常に手厚い会社だった。
関連する制度だけみれば、いわゆる「ホワイト企業」と言えるだろう。
にもかかわらず、そういう過重労働が習慣的に起きてしまう。
これはもはや「文化」の問題だ、と自分は結論づけた。
いくら制度が整っても、制度を運用する人々の文化が変わらなければ、
働き方は変わらない。
そして、文化を変えるのは、非常に難しい。
そう考えて、多様性の尊重を謳う外資系企業に転職を決めた。

で、いまの会社なのだが。
そういう動機を踏まえれば、今のところ狙い通りの働き方ができている。
詳しく書くと、なんだかボロが出そうなのでやめておくけれど、
良くも悪くも、前職とは真逆の企業文化なのだ!
ほんとうに、いろいろな部分が違い過ぎて、
仕事そのものよりもそれがおもしろい。

やっていることはさして変わらない。
ただ、その進め方とか、前提となる考え方とか、組織とかがまるで違う。
だから、強みも弱みも違ってくる。
業界が近いので、自分としては近所に引っ越したくらいの感覚だったのだけど、
結果としては外国に来たくらいの衝撃を受けることになった。

で、さらにいえば、この体験が
これまでの自分の世界を相対化してくれたというか。
ひとつの世界でしか生きられないと思っていたけれど、
ちょっと勇気を出せば別世界で生きることができるんだっていう
ある種の自信や解放感、あるいは癒しみたいなものも与えてくれた。
不安なんだけど、自由度が増した感じがした。

このなんていうか、
自分の世界のすぐ隣に、一見同じなんだけどまるで違う世界が広がっている
ってことを知って、それが体験としてむちゃくちゃおもしろいし、
そのおかげで癒されたり強くなれたりする。
ってことがわかったのが転職だったんだけど、
文化人類学を知ったときに、同じ匂いを感じたんです。
異文化に深く入り込んで、
誰も(本人たちも)気づいていない人間の思考や行動原理を知る。
それを身につけて、自分自身がちょっと更新される。
もしそういうことだとすると、あ、これ、ハマれそうかも。って思った。

・・・というのが文化人類学にたどり着いた経緯でしたが、
文化人類学の深い森の間際までは来たものの、
奥に入り込むのに適切なルートがなかなか見つかりません。
案内人が必要なのかもしれないな。

終わりだよ。

次回予告:実は明日、また文化人類学のイベントに行くので、それについて書きたい!








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?