【能登半島地震】進まぬ復興に新展開 宗援連、3回目の情報交換会
※文化時報2024年5月28日号の掲載記事です。
宗教者災害支援連絡会(宗援連、島薗進代表)は18日、真如苑友心院(東京都千代田区)で情報交換会「能登半島地震支援活動の新たな展開」をオンライン併用で行った。能登半島地震に関する3回目の会合。復興が進まない中、支援に入る宗教者・宗教学者らが活発に意見交換した。(山根陽一)
東西本願寺が協働
浄土真宗本願寺派能登半島地震支援センターの川井周裕センター長は、罹災(りさい)証明書の事務手続きなどで真宗大谷派と協調して取り組む考えを明らかにした。
本願寺派寺院は石川県内で98カ寺が被災している。川井センター長は、復旧作業で生じたがれきの処理を巡り、自治体の対応に差があると指摘。「2次避難している門徒の所在地が不明なケースも多い」との課題も挙げた。
進行役を務めた弥生神社(神奈川県海老名市)の池田奈津江権禰宜(ごんねぎ)は、川井センター長に同行し4月25~26日に能登町などで清掃や家具の運び出しなどを手伝った。「支援する人が足りない。現地の人々もどこにいるか分からない。特に津波被害を受けた地域はまだまだ手つかずの状況」と実情を語った。
地震発生以来、地元の信徒を交え足湯ボランティアなど多岐にわたる支援活動に取り組む真如苑救援ボランティアSeRV(サーブ)も現状を報告。八本俊之部長代理は「珠洲市では水道の復旧が進んでおらず、細かいニーズを把握することが必要。活動が長期に及ぶと、地元に住む信徒の活動を充実させることが重要になる」と強調した。
「ごちゃまぜ」で居場所
七尾市を拠点に活動する被災地NGO恊働センター(神戸市兵庫区)の頼政良太代表は、被災者約千人に行ったアンケートを基に、独居高齢者への精神保健が必要だと指摘。「仮設住宅での新しいコミュニティーづくりや、避難所に残る行き先のない人への支援が課題になる」と伝えた。
新日本宗教団体連合会(新宗連)の大滝晃史事務局長は、被災地NGO恊働センターと連携し、加盟教団から4月3~12日に44人、5月17~26日に230人のボランティア登録があったと明かした。「東日本大震災や熊本地震での各教団の実績を生かし、新宗連として結束して支援に当たりたい」と話した。
日蓮宗行善寺(石川県白山市)を母体とする社会福祉法人佛子園の速水健二氏は「NOTO, NOT ALONE」をキーワードに、あらゆる人々が共同で被災地を活性化させる新たな居場所づくりの取り組みを紹介した。被災した同法人運営の輪島市の施設を、新たな「ごちゃまぜ」のコミュニティー施設にリニューアルする計画という。「個々に活動していた人材やノウハウを集約し人口減少時代を生き抜く新たなモデルとしたい。商店街や農業の担い手を生み出すことも可能になる」と述べた。
大阪大学大学院の稲場圭信教授(宗教社会学)は「現地での人手不足は変わらない。社会福祉協議会や一般ボランティアと協調して汗を流す姿勢が大切だ」と訴えた。
島薗代表は、珠洲市などで復旧作業の長期化が予想されるとの見通しを示しつつ、「少しずつ新しい展開が見えてきた」と総括。石川県の復興プランを念頭に「創造的復興とは何か、考えていきたい」と語った。
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