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お寺は資源 介護者カフェに行政期待

※文化時報2021年11月1日号の掲載記事です。

 大阪府柏原市の浄土宗安福寺(大﨑信人住職)は10月25日、在宅で介護する人々が悩みやつらさを分かち合う介護者カフェ「おてあわせ」を初めて開催した。浄土宗の支援事業を活用した取り組みとしては2例目。行政や大学の関係者らが参加し、お寺を社会資源と位置付けた取り組みに期待を寄せた。(大橋学修)

認知症と共に生きる

 介護者カフェに参加したのは、檀信徒や地域住民のほか、柏原市高齢介護課や柏原市社会福祉協議会の職員、関西福祉科学大学の研究者ら。東京都健康長寿医療センター研究所の岡村毅つよし医師による講演「認知症ケアの最前線」を聞き、それぞれの思いを語り合うグループトークを行った。

 岡村医師は、認知症の基礎知識と予防について紹介。長寿化によって誰もが認知症になる可能性を示した上で、「発想を大転換し、認知症と共に幸せに生きる社会にすることが大切」と呼び掛けた。

 グループトークでは、認知症の症状が出てきた親族を精神科に連れていく際の葛藤や、日々の介護の苦労を語り合った。参加者からは開催翌日、「介護について家族で語り合う機会になった」と感謝のメールが届いたという。

 大﨑住職は「たった1回の開催で何ができるかと思ったが、意義のあることなのだと改めて感じた」と話していた。

寺院は介護の最先端

 宗教施設で介護者の分かち合いを行うというまだまだ珍しい取り組みに、行政職員や研究者らは熱い視線を送った。

 柏原市高齢介護課の金田重孝係長は「市内各地のお寺で、介護者カフェを開いてもらえれば」。柏原市社会福祉協議会の岡山宏志(あつし)係長は「社会資源としての価値をお寺に感じた。介護予防などで場所を提供してもらえれば」と話した。

 関西福祉科学大学の種村理太郎講師も、宗教者と福祉の連携に期待を寄せる。「今は、行政やケアワーカーに宗教施設を活用するノウハウがない。連携を模索することで、システムを構築していけるのではないか」と着目した。

 今回の講師を務めた岡村医師は、地域包括ケアシステム=用語解説=に寺院を組み入れることを提唱。「宗教は、死が終わりではなく、命がつながることを教える。弱ることを受け入れ、自分らしく生きる力を得ることができる」と強調し、「寺院は不安なときに行けて辛苦を分かち合える場。介護の最先端にあると言える」と語った。
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【用語解説】地域包括ケアシステム
 誰もが住み慣れた地域で自分らしく最期まで暮らせる社会を目指し、厚生労働省が提唱している仕組み。医療機関と介護施設、自治会などが連携し、予防や生活支援を含めて一体的に高齢者を支える。団塊の世代が75歳以上となる2025年をめどに実現を図っている。

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