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一人親支援にお寺活用 孤立防ぐ「街HUBプロジェクト」

※文化時報2020年10月24日号の掲載記事を再構成しました。

 困窮する一人親家庭の支援に、寺社や教会を活用する試みが進んでいる。一人親家庭の自立支援に取り組む一般社団法人ハートフルファミリー(藤澤哲也代表理事、東京都新宿区)が手掛ける「街HUBプロジェクト」は、宗教施設や店舗、支援団体が連携し、食料支援や精神面のサポートを提供。地域ぐるみの自立支援に、宗教者後押しを期待している。(安岡遥)

 理事の一人、西田真弓さんは、大学生の息子を持つシングルマザー。一人親家庭の平均年収は一般家庭の約3分の1と言われ、「悩みの大部分は経済的なことだった」と、自身の子育てを振り返る。

 「子育て中のシングルマザー・ファーザーの話を聞いても、経済的な大変さはほとんど変わっていない。食べ物や生活物資の支援だけでなく、心の応援を届け、明日を生きる活力につなげてもらえれば」。そうした思いで、2019年、街HUBプロジェクトを立ち上げた。

 宗教施設や支援団体、店舗などが「マンスリーサポーター」となり、月々一定額を寄付。その上で、ハートフルファミリーが発行する冊子を置いたり、イベントや食料支援などの活動に参加したりする。必要に応じて弁護士やファイナンシャルプランナーなどの専門家へつなぐことも想定し、長期にわたる安定した自立支援を目指す。

 地域の中で孤立しやすい一人親家庭のサポートに欠かせないのは、「支援者の顔が見えること」と西田さん。支援を必要とする人が直接訪れ、周囲とのつながりを築く拠点が必要だという。「心の拠り所として日常的に人が集まる寺社は、支援のつながりを築く上で非常に重要」と期待を込める。

 例えば、広い境内を生かしたイベントの開催。子どもを見守る地域社会づくりを目指してハートフルファミリーが主催する「ぼっちぼっちフェス」には、これまでに全国の約20カ寺が会場を提供した。流通に乗せられない食材を受け入れ、困窮家庭に無料で提供する「フードパントリー」に取り組む寺院もある。

 西田さんは「継続を想定しない単発の活動では、本質的な自立支援につながりにくい。施設の規模や経済力に応じ、できることを無理なく続けてほしい」と呼び掛けている。

子育て支え、食料届ける 真宗大谷派西照寺

 真宗大谷派西照寺(日野賢之住職、石川県小松市)の衆徒、日野史さんは、街HUBプロジェクトのサポーターの一人。自身もシングルマザーで、僧侶として活動する傍ら、趣味の音楽を生かしたイベント運営や子ども食堂にも取り組む。

 ハートフルファミリーが携わる音楽イベントを地元の小松市へ招いたことがきっかけで西田さんと交流が生まれ、1年以上にわたって支援活動に関わっている。

 子ども食堂に集まる食材などを利用したフードパントリーが好評で、一人親を含む約50世帯の子育て家庭が訪れたこともある。現在は地元商店街と協力し、一人親家庭への食料支援を兼ねたイベントを企画しているという。

ひとり親支援

「シングルファミリーパントリー」で参加者と交流する日野さん(左)。パンや米、バナナなどを21 家族に配布した

「後ろ指をさされる」

 だが、課題もある。地方では依然、一人親家庭に対する偏見が根強く、「知り合いに後ろ指をさされるのではないか」「他人から施しを受けていると思われたくない」との考えから、支援を受けることをためらう人が少なくない。

 日野さんは「一人親家庭のほとんどが支援を必要としており、食料配布などの具体的な支援を呼び掛ければ、頼ってくれる人も多い」と分析。一方、「シングルマザー・ファーザーであることを公表したくない人にも配慮し、『一人親家庭の支援』を前面に押し出すことは避ける必要がある」と話す。

 支援活動に積極的な寺院が少ないことも、課題の一つだという。「私の活動を知り、『えらいね』『立派だね』と声を掛けてくれる人は多い。だが、『一緒にやらないか』と誘えば『忙しいから』と二の足を踏む人がほとんど」と、もどかしさをにじませる。

 北陸は真宗王国と呼ばれ、西照寺の近隣にも多くの浄土真宗寺院がある。「活動を理解してもらうことには苦労もあるが、子どもたちの笑顔を見ると『お寺でよかった』と感じる。困っている人のため、施設やマンパワーを活用してくれるお寺が増えれば」と、日野さんは語った。

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