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まちの保健室と協力 お寺と教会の親なきあと相談室

※文化時報2022年7月22日号の掲載記事です。

 大阪市住吉区の浄土宗願生寺(大河内大博住職)が、ほぼ毎月行っているまちの保健室=用語解説=介護者カフェ=用語解説=に、「親なきあと」相談室を合体させる試みを始めた。障害のある子やひきこもりの子の親が面倒を見られなくなる「親なきあと」に詳しい当事者たちが、相談員として参加。分かち合いの場づくりを進める。(主筆 小野木康雄)

当事者で分かち合う

 今月11日午後。大阪府看護協会から派遣された看護師たちが、本堂に机を並べ、健康チェックを行っていた。客殿には、僧侶を含むスピリチュアルケア=用語解説=の専門スタッフや上智大学グリーフケア研究所の実習生らが待機。血圧測定などをひと通り終えた来場者らを迎え入れた。

 その中に、一般財団法人お寺と教会の親なきあと相談室の藤井奈緒理事と、アドバイザーの小迫孝乃さんの姿があった。2人とも障害のある子の母親だ。

 この日は府立東住吉支援学校PTAの片山初美会長ら保護者3人が訪れていた。

 「子どもにはつながりができても、親は孤立しがちで、地域に居場所がない」「親なきあとに関心はあるが、何から相談してどう準備したらいいか分からない」。そうした声に、藤井理事や小迫さんらは耳を傾け、情報提供にとどまらず、お互いの苦労話や日常の笑い話に花を咲かせた。

 片山会長は「困っているお母さんたちが集まって話をするだけで、生き生きする。こういう場があるという安心感が大事」と力を込め、「私たちがお寺を選べるぐらいに活動が広がってくれれば」と期待を寄せた。

参加者が場をつくる

 願生寺は、昨年5月にまちの保健室と介護者カフェの同時開催を始めた。8月を除く毎月第2月曜の午後1時半から行っており、今回で14回目となった。一方で、災害時に医療的ケア児=用語解説=を受け入れるよう検討しており、お寺と教会の親なきあと相談室の支部となるなど、障害児・者や家族との交流を深めつつある。

・門前には親なきあと相談室を含むのぼり3本が立てられた

 大河内住職は「来た人が場をつくる、というスタンスでやっている。〝当事者カフェ〟という形になりつつある中、親なきあと相談室も加わることで、さまざまな方が集まるようになれば」と話した。

【用語解説】まちの保健室
 学校の保健室のように、地域住民が健康などさまざまな問題を気軽に相談できる場所。図書館や公民館、ショッピングモールなどに定期的に設けられ、看護師らによる健康チェックや情報提供が行われる。病気の予防や健康の増進を目的に、日本看護協会が2001(平成13)年度から展開している。

【用語解説】介護者カフェ
 在宅介護の介護者(ケアラー)らが集まり、悩みや疑問を自由に語り合うことで、分かち合いや情報交換をする場。「ケアラーズカフェ」とも呼ばれる。主にNPO法人や自治体などが行い、孤立を防ぐ活動として注目される。

【用語解説】スピリチュアルケア
 人生の不条理や死への恐怖など、命にまつわる根源的な苦痛(スピリチュアルペイン)を和らげるケア。傾聴を基本に行う。緩和ケアなどで重視されている。

【用語解説】医療的ケア児
 人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、 痰(たん)の吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童。厚生労働省科学研究班の報告では、2017(平成29)年時点で全国に約1万8千人いると推計されている。社会全体で生活を支えることを目的に、国や自治体に支援の責務があると明記した医療的ケア児支援法が21年6月に成立、9月に施行された。

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