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【能登半島地震】被災門徒に頼らぬ復興 本堂再建・活動再開へ始動

※文化時報2024年4月2日号の掲載記事です。

 能登半島地震で被災した寺院が、活動再開に向け動き始めている。石川県七尾市の真宗大谷派願正寺(三藤了映住職)は本堂の解体工事に着手し、再建を目指してクラウドファンディング(CF)を実施。同県能登町の真宗大谷派寳藏寺(稲谷英俊住職)は、地震保険を頼りに可能な範囲での修復を試みる。1日で発生から3カ月。被災した門徒に負担をかけることなく、地域のよりどころを取り戻す。(大橋学修)

避難所目指しCF
真宗大谷派願正寺

 願正寺は文久元(1861)年に創建され、30年ほど前には三藤觀映前住職が本堂の基礎などを修理した。前住職の主宰する書道団体「映心会」が音楽イベントを行うなど、門徒や地域の人々が集う場となっていた。昨年11月に法灯を継承した了映住職も、そんなお寺の特色を大切にしていた。

 元日午後4時10分、本堂で大みそかの片付けをしていた了映住職は、激しい揺れを感じて外へ飛び出した。目の前の鐘楼が音を立てて全壊し、振り向くと本堂の柱が倒れてきた。

 全壊はしなかったが大きな被害を受け、専門業者は余震や大雪で倒れる可能性を指摘した。JR七尾駅近くの繁華街に立地しており、倒壊すると近隣を巻き込んでしまう。とにかく解体せざるを得なかった。

解体を開始した願正寺=2月19日、石川県七尾市

 1月11日、本堂前で門徒らと共に最後のお勤めを行った。参加者は「本当に壊さなければならないのか」「子どもの頃からの風景が変わってしまう」と惜しんだ。

 了映住職の願いは、門徒や地域の人々のよりどころとして、お寺が再出発することだ。そのためには、これまで以上に地域に役立つべきだと考え、避難所としても使える本堂の再建を発願した。目標額を2千万円に設定してCFを開始。3月28日現在で、300人から513万円余りが集まっている。

 了映住職は「新たな希望を育む場にしたい」、妻の星子さんは「『何かあれば、あのお寺に逃げよう』と思ってもらえる所にしたい」と語る。

修復に向け寺に残る
真宗大谷派寳藏寺

 寳藏寺は応急危険度判定で本堂が「全壊」と判定されたが、完全には倒壊していない。建設業者の確保が難しく、建物は地震発生直後のままとなっている。

 稲谷住職は当初、徒歩圏内にある町立鵜川小学校に開設された避難所に身を寄せ、3日かけて物置を片付けて居住スペースを確保し、寺に戻った。庫裏は倒壊の恐れがないと判定されたため、本尊を遷座した。

「全壊」と判定された寳藏寺の本堂と倒壊した鐘楼(手前)=石川県能登町

 復旧の方向性を決めるどころか、倒壊した鐘楼の除却もできていない。ただ、保険金を使って、可能な範囲で修復することだけは決めている。

 お寺のある鵜川地区の住民たちは、2次避難先や離れた場所にある親族宅に暮らしの拠点を移した。ほとんど人が残っておらず、所在は判然としない。水道が復旧する見通しも立たず、トイレも風呂も使えない。

 それでもお寺に残るのは、門徒に安心を与えるためだ。金沢市内に避難した門徒は電話で「どうしても声が聞きたかった」と話し、被害の少ない地域に住む門徒は、育てた野菜を持って住職の顔を見に来る。

 稲谷住職は「仏事が再開できるのは、早くても秋ごろになるかもしれない。地震で過疎化が進む可能性があるからこそ、皆が集まる場を復活させたい」と話している。

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