〈4〉性と仏教の多様性を求めて
※文化時報2021年2月22日号の掲載記事です。
「文化時報 福祉仏教入門講座」が1日から始まった。第1講から熱量がすごい。リモート開催ではあるが「一言も聞き漏らすまい」と受講している僧侶の皆さんの迫力が半端ではない。今後どう盛り上がっていくのか、非常に楽しみになった。
受講者のお一人を訪ねてみた。性善寺(大阪府守口市)の柴谷宗叔住職だ。性同一性障害の当事者である柴谷住職は「性的マイノリティーが集えるお寺」の建立を願っていた。
お遍路さんたちの協力を得ながら、2018年に大徳山浄峰寺の第3世住職となり、通称を性善寺とした。念願はかなった。しかし、これからという時にコロナ禍に襲われた。「集えるようにと思って場を作ったのに、集うことを自粛しなくてはならなくなった」と、歯がゆい気持ちを話してくださった。「今はネットワークを強化する時期」と前向きに考え、講座に参加する気持ちになったそうだ。
性善寺は、とてもユニークな寺院である。前住職は日蓮宗で、現住職が曹洞宗。本堂には「釋○○」と浄土真宗の法名が刻まれた位牌も並んでいる。単立寺院ゆえの自由さが輝いている。ご本尊は釈迦牟尼佛であるが、弘法大師像と日蓮聖人像も見受けられる。でも、「ごちゃ混ぜ」という印象はなく、厳かな荘厳に自然と手が合わさる。
筆者は、仏教の多様性を信頼している。その時代その社会の価値観を押し付けられて痛み苦しむ人々を救うのが、仏教の大事な役目と思っている。だから、マイノリティーの痛みや苦しみに寄り添うには、多種多様な寺院が必要と考えている。早くもそんな寺院と出会えたことに心から感謝したい。
感染拡大防止のため、国内での移動も思うようにいかない。それでも、講座が終わる8月までには、お一人でも多くの僧侶を訪ねてみたい。次はどんな素晴らしい出会いがあるのかワクワクする。(三浦紀夫)
性善寺の本堂と柴谷住職
三浦紀夫(みうら・のりお)1965年生まれ。大阪府貝塚市出身。高校卒業後、一般企業を経て百貨店の仏事相談コーナーで10年間勤務。2009年に得度し、11年からビハーラ21理事・事務局長。上智大学グリーフケア研究所、花園大学文学部仏教学科で非常勤講師を務めている。真宗大谷派瑞興寺(大阪市平野区)衆徒。
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