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生理の貧困 僧侶も協力

浄土真宗本願寺派・中平了悟住職

※文化時報2021年10月25日号の掲載記事です。

 浄土真宗本願寺派西正寺(兵庫県尼崎市)の中平了悟住職(44)が、尼崎市内の公立学校に生理用ナプキンを無償提供する「生理の貧困プロジェクト」に約9万円を寄付した。経済的困窮や家庭の問題で生理用品が買えない「生理の貧困」について、さまざまな人に知ってもらい、問題の解消につなげることを目指している。(安岡遥)

 プロジェクトは、尼崎市内で子ども支援に携わるNPO法人「子どものみらい尼崎」(濱田格子代表)が先月から開始。市内の小中高校、特別支援学校、朝鮮学校72校に、1校当たり150個の生理用ナプキンを無償で提供している。設置用のボックスや性に関するハンドブックも送り、足りなくなった場合は無償で再配布する。

 中平住職は今年4月、尼崎市教委の教育委員に就任。地域活動を通じて交流のあった濱田代表の会員制交流サイト(SNS)「フェイスブック」で生理の貧困問題を知り、「児童・生徒への支えになれば」とプロジェクトへの支援を決めた。

 7月の誕生日に合わせ、SNSでバースデードネーション=用語解説=を呼び掛けたところ、「困っている人に届きますように」などのメッセージと共に、46人から計8万7932円が寄せられた。

 中平住職は、性的少数者=用語解説=の当事者から話を聞く勉強会などを自坊で実施し、性やジェンダーを巡る社会問題に関心を寄せている。生理の貧困に関しては、男性が生理用品を購入したり身に着けたりするワークショップにも参加。養護教諭を招いて性教育に関する座談会を開くなど、学びを深めている。

 中平住職は「周囲の男性に話を聞いても、パートナーの生理に対する認識はさまざま。僧侶である自分が活動することで、話題にしやすい雰囲気をつくりたい」と話している。

生理の貧困 中平住職と濱田代表

学校へ送る生理用品を前にした中平住職(左)と濱田代表

お寺を対話の拠点に

 生理の貧困は、新型コロナウイルス感染拡大で女性の貧困が拡大したことを背景に、SNSなどを通じて広く知られるようになった。

 国際NGO「プラン・インターナショナル」が今年3月、日本国内の15~24歳の女性2千人に実施したアンケートによると、生理用品を購入できなかったり、購入をためらったりした経験のある人は、約4割に当たる717人に上った。経済的な理由だけでなく、恥ずかしさや保護者の無理解が原因となっているケースもあった。

 「生理の貧困は、さまざまなジェンダー問題と密接に結びついている」。「子どものみらい尼崎」の濱田格子代表はそう指摘する。

 例えば、就労形態や賃金の男女間格差。コロナ禍のような非常事態で収入が保障されなくなった場合、1カ月当たり500~数千円ともいわれる生理関連の支出は大きな負担となる。

 濱田代表はさらに、生理や女性の身体に関する対話の欠如も問題の一つと考えている。例えば、生理を話題にすべきでないことと考える風潮は根強い。学校での教育も、生理の仕組みに重点を置く内容が多く、症状の違いや対処法などについて情報交換する機会はほとんどない。こうした「対話の貧困」が、生理の貧困にも影響している。

 濱田代表は「お金や物の支援が、対話や想像力の貧困に目を向ける糸口となれば」と話し、宗教の役割についても「古くから大切にされてきた宗教施設は、人の良い部分を見つめ、穏やかに語り合うことができる場所。語り合いや学びの拠点となってほしい」と期待している。
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【用語解説】バースデードネーション
 誕生日や法人の設立記念日などに合わせ、自身が支援している団体への寄付を呼び掛けること。

【用語解説】性的少数者
 性的指向や性自認のありようが、多数派とは異なる人々。このうちレズビアン(女性の同性愛者)、ゲイ(男性の同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(身体の性に違和感を持つ人)の英語の頭文字を取ったのがLGBTで、クエスチョニング(探している人)を加えてLGBTQと呼ばれることがある。

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