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東京五輪開催へ覚悟決めよ

※文化時報2021年3月15日号の社説「開催へ覚悟決めよ」の全文です。

 東京オリンピック・パラリンピックに海外からの観客受け入れを見送る方向で政府が調整していると報じられた。大会組織委員会の橋本聖子会長は「聖火リレーがスタートする25日までには決めたいと考えている」と語ったが、早期に決断すべきだ。

 その上で、東京五輪を着実に開催してほしい。

 新型コロナウイルス感染拡大が終息しない中、中止や再延期を求める声がくすぶることは、理解できなくもない。各種世論調査でも、予定通り実施すべきだという意見は少数派であり、日本だけでなく海外の世論も同様の傾向にある。

 安倍晋三前首相が東京五輪の開催を1年程度延期すると表明したのは、昨年3月24日のことだった。文化時報は同28日号の緊急社説で「新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない現状では、当然の判断だ」と賛同し、今年の新年号の年頭社説では「開催すら不確実だと思っておいた方がいい」と指摘した。

 だが、これまでの主張とは違う形になっても、東京五輪は開催すべきだと強調したい。この段になって中止や再延期をしてしまうと、参加選手や大会関係者のみならず、多くの人々に喪失感をもたらすと考えられるからだ。

 ただでさえ、コロナ禍で社会は疲弊している。昨年の自殺者数は2万1077人(厚生労働省の暫定値)で、11年ぶりに増加に転じた。4都県は年明けから緊急事態宣言が続いており、生活困窮者の我慢は限界に近い。こうした時に五輪を開催しないのは、人々の心の傷口を不用意に広げるだけではないのか。

 海外から観客が来ないことが決まれば、次は国内からどの程度まで受け入れるかが焦点となる。感染拡大の状況次第では、無観客も検討課題になる。

 選手や競技関係者を泡に包むようにして外部との接触を遮断する「バブル方式」は、さまざまな競技で試行され、実績ができ始めている。行動制限やPCR検査など、選手たちへの負担は大きいが、それでも世界中から知恵を集めれば競技自体は実施できるはずだ。

 その上で、商業主義から脱却し、新しい五輪像を模索すべきだろう。

 五輪は平和の祭典であり、東京大会は東日本大震災からの復興を掲げて招致された。コロナ禍を経たニューノーマル(新常態)の五輪は、離れていてもつながれるという連帯感や希望のメッセージを伝えるものであってほしい。

 そこには、心や祈りを大切にする宗教の英知が盛り込まれるべきであり、宗教界も五輪にもっと関心を寄せていい。

 菅義偉首相は「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして」東京五輪を開催する、と繰り返してきた。そんな大上段に構えなくてもいい。今できる最善の五輪をやり遂げるべきである。

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