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【能登半島地震】説かずに聴く 真如苑、足湯ボランティアで活動

※文化時報2024年5月31日号に掲載予定の記事です。

 奥能登の玄関口として知られる石川県穴水町は、能登半島地震で甚大な被害を受けた。倒壊した家屋は解体のめどすら立たず、生活の再建を見通せない人々が避難所に身を寄せる。その一つである穴水町さわやか交流館プルートを、3月27日に真如苑の職員と信徒計6人が訪れた。「足湯ボランティア」を行うためだ。(山根陽一)

在家信徒が奉仕(サーブ)

 お湯を張ったたらいに足を浸してもらい、手を握りながら一対一で話を聴く。日常を奪われた悲しみや喪失感、慣れない環境での緊張感、先の見えない不安やいら立ちなどを抱えて避難生活を送る人たちに、ほっと一息ついてもらう―。これが足湯ボランティアの活動だ。

 真如苑救援ボランティアSeRV(サーブ)は、過去にも東日本大震災などさまざまな災害被災地で行っており、能登半島地震では2月1日から認定NPO法人レスキューストックヤード(名古屋市東区)が穴水町で行う足湯ボランティアに加わり、連携しながら活動している。

 この日参加したのは、真如苑北陸本部教化部の真田賢二部長代理、SeRVを担当する真如苑社会交流部の八本俊之部長代理と、石川県在住の在家信徒4人。4人が足湯ボランティアに臨むのは初めてだったが、能登半島地震はひとごととは考えられず「何か役に立ちたい」という思いで自発的に参加した。

 真如苑には、利他行として社会奉仕の実践に取り組む教えがある。人々のよるべとなるために宗教専従の道に立ち、利他に生涯を捧げた伊藤真乗開祖と妻の摂受心院の精神を、信徒一人一人が胸に刻んでいる。

胸の内を受け止める

 「私たちはプロではないので、自然に、素直に接することが大切です」

 プルートでは、継続して災害ボランティア活動を行い、足湯ボランティアをコーディネートしている認定NPO法人レスキューストックヤードのスタッフ、長田富美子さんが、真如苑のメンバーに心構えを伝えた。

 足湯をしてもらう人は、日常のたわいない話や楽しかった頃の思い出、睡眠など健康に関わる話などさまざまな話をする。ふとした瞬間にこぼれる胸の内を、漏らさず受け止めるのがボランティアの役割だ。教えを説かず、ただ寄り添い、話を聴くことに徹する。

足湯ボランティアでは、長引く避難生活を送る人たちに、ほっと一息ついてもらう

 防水シート、バケツ、いす、やかんなどを準備すると、心待ちにしていた高齢者らがやって来た。

 トップバッターの女性信徒は、元看護師という経験を生かし、車いすに座った80歳の高齢男性に優しく話し掛けた。男性は最初、口数が少なかったものの、次第に饒舌(じょうぜつ)になっていった。

 女性は「患者さんに接するときの気持ちと、信者として全ての人に寄り添う気持ちが合わさり、自然と話を聞いていました。これも修行の一つかな」と語った。

 中学校教員の男性信徒は、小学5年の男の子と向き合った。自宅が全壊したという。「明るいそぶりでしたが、心の傷はそう簡単に癒やせない。少しでも本音を吐き出してもらえたら、意味があったかもしれません」と振り返った。

傾聴で自分も元気に

 慣れてくると信徒同士がペアを組んで、マッサージと傾聴を役割分担する光景も見られた。

 小松市の女性信徒は、自分自身も地震の影響で落ち込んでいたが、今回能登支部や避難所に来たことで、かえって励まされたという。「大勢の人といろいろな話ができた。傾聴は人を癒やすと同時に、自分自身にも元気をもたらしてくれる」と笑顔で語った。

 以前からボランティア活動に興味があったという金沢市の女性信徒は、地震発生直後の1月に被災した図書館で本の汚れをふき取る活動をした経験もある。足湯ボランティアについては「スタッフ間にチームプレーが生まれて、信徒同士の親交が深まったことも意味がありそう」と話した。

被災者から聞いた声は「つぶやきカード」として社協などに届け、
医療や心のケアの専門家などにつなぐために役立てられる

 この日は3~4時間で高齢者を中心に10人前後の被災者が訪れた。SeRVは在家信徒4人、責任者1人のチームを毎週派遣。4月からは仮設住宅で継続的に足湯ボランティアを行っているという。

 真田部長代理は「在家信徒の方々が熱心に足湯ボランティアを行う姿に感銘を受けた」と語り、八本部長代理は「教えで培われた利他の心が災害支援の現場でも生かされていると感じる」と話した。


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