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〈16〉誰のための「頑張る」

※文化時報2021年9月6日号の掲載記事です。

 「感動ポルノ」という言葉をご存じだろうか? 障害者が頑張っている姿を見て感動することに、疑問を呈する言葉だそうだ。オーストラリアの障害者人権活動家ステラ・ヤング氏が使いだしたとされている。

 8月の終わりごろになると「24時間テレビ 愛は地球を救う」という募金を集める番組が放送される。もう40年以上続いている。それをパロディー化した「笑いは地球を救う」を2016年にNHKのEテレが放送した。その時「感動ポルノ」という言葉がわが国にも広がったように思う。

 以後、毎年「24時間テレビ」にかぶる形で放送が続けられている。民放がNHKを揶揄するならありがちだが、逆というのが素晴らしい。NHKの〝攻め〟の姿勢を称賛する声が上がっている。

 ベースになっているのが「バリバラ」という番組。毎週木曜午後8時からEテレで放送される。ぜひ一度視聴していただきたいと思う。「障害者」や「多様性」を考えるのに最適な番組である。

 筆者のところには、「何か仕事をさせてほしい」と親御さんに連れられてやって来る若者が後を絶たない。最近は、生活困窮者自立支援法を根拠に、行政職員と共に来る若者もいる。福祉施設で食器洗いなどの仕事をしてもらうが、それだけで給料を払い続けるのは厳しい。親が期待するような給料までは届かない。

 そんなとき、できる仕事をゆっくりとしていけるように、福祉的な支援を受けるよう勧める。「障害」の認定を受け、苦手な部分や不足している部分を補ってもらうのだ。残念ながら、この提案を快く受け入れてくれる親御さんはほとんどいない。ご立腹される親御さんもいる。「障害者」というレッテルを貼っているのは、われわれなのか、それとも親御さんなのか?

 何とか説得して「障害者」としての暮らしを始める若者もいる。一方、親御さんがどうしても反対して、われわれの元を離れていく若者もいる。そんなに頑張る必要があるのだろうか?

 もし頑張るのなら、自分のために頑張ってほしい。誰かに見せるためならいらない。それでも「ガンバレ」という親御さんがいたら、「虐待」という言葉があることを知らせてあげたい。(三浦紀夫)

 三浦紀夫(みうら・のりお)1965年生まれ。大阪府貝塚市出身。高校卒業後、一般企業を経て百貨店の仏事相談コーナーで10年間勤務。2009年に得度し、11年からビハーラ21理事・事務局長。上智大学グリーフケア研究所、花園大学文学部仏教学科で非常勤講師を務めている。真宗大谷派瑞興寺(大阪市平野区)衆徒。
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