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看取り・グリーフケアで協働 看護師と僧侶ら研修会

※文化時報2021年9月13日号の掲載記事です。有料部分では、「俺を殺してくれ」と言ったがん患者の本心に迫り、看護師から僧侶に寄せられる期待の声を紹介しています。

 看仏連携研究会(河野秀一代表)と浄土真宗本願寺派妙行寺(井上從昭住職、鹿児島市)などは6日、鹿児島地区第1回研修会をオンラインで開いた。地元の看護師や僧侶ら20人が参加。約2時間半にわたって講演やパネルディスカッション、グループワークに臨み、連携の必要性を確認し合った。(主筆 小野木康雄)

 テーマは「地域包括ケアシステム=用語解説=における看護師と僧侶の連携と協働」。臨済宗妙心寺派僧侶でもある河野代表が講演し、看仏連携の基本的な考え方を解説した。

 河野代表は「日本における寺院と病院はルーツが同じ」とした上で、「病院から地域へ、『治す』から『支える』へといった転換が進む今、地域の看護師と僧侶は看取りやグリーフ(悲嘆)ケアに共に当たる必要がある」と述べた。

 研修会は昨年10月に大阪でも開かれ、病院内での連携と協働について語り合った。同研究会は今後も研修会を続けていく方針だ。

気持ちを受け止める

臨床宗教師・井上孝彌さん

看仏連携鹿児島井上副住職

 「『俺を殺してくれ』と言う方に、あなたはどう接し、言葉を掛けますか?」

 パネルディスカッションでは、在宅訪問診療を手掛ける鹿児島市のクリニックで臨床宗教師として勤務する井上孝彌・妙行寺副住職が、参加者らにこう語り掛けた。

 食道がんを患った男性(当時86)。自宅での療養を希望していた。家族との関係は良くなく、息子は「どうなってもいいが、どうしてもと言うなら、1カ月ぐらいは面倒を見る」と言っていた。

 それでも息子は熱心に介護し、けんかしながらも親子水入らずで静かな時間を過ごすようになった。「俺を殺してくれ」と井上副住職が男性に言われたのは、そんな時期だった。

 「命は大切ですよ」「そう言わずに頑張って」「生きたくても生きられない人もいるんですよ」「そんなこと考えたらだめですよ」「仏様がお救いくださいますよ」
 
 井上副住職は、その中のどの言葉も掛けず、殺してほしいという男性の気持ちをそのまま受け止めた。

 長い沈黙の末に、男性は明かした。

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