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【能登半島地震】復興の祈り、舞に乗せ 土佐神社でチャリティー奉納

※文化時報2024年6月11日号の掲載記事です。

 能登半島地震の被災地復興と寺社再興を祈願するチャリティー奉納演奏会「平安の雅(みやび) 白拍子舞と雅楽の世界」が5月25日夜、土佐神社(高知市)で開かれた。国指定重要文化財の拝殿で奏者ら21人が雅楽と舞楽を奉納し、県内外から訪れた200人近い参拝者が被災地に思いをはせた。(佐々木雄嵩)

 法螺(ほら)貝奉納による開演の儀に続き、白拍子が扇を手に舞うと、会場は荘厳な雰囲気に包まれた。直垂(ひたたれ)や狩衣(かりぎぬ)姿の楽隊が笙(しょう)や竜笛などで管絃(かんげん)を演奏。最後は雅楽演奏家の柴垣治樹氏(41)が、胡人(こじん)の装束で朱の仮面を付け、独自に解釈した「右方還城楽(げんじょうらく)」を躍動的に舞った。

 柴垣氏は「演奏がやんで無音で舞う場面で、能登復興を祈り、何げない日常の幸福に感謝をささげた」と話した。

雅楽の演奏に合わせて舞う柴垣氏

 演奏会は大盛況で、拝殿に入れず立ち見する人も。市内から訪れた夫婦は「復興の祈りが被災地に届けば」と話した。境内では支援金の呼び掛けもあり、9万4312円が集まった。これに小笠原貴紀宮司(64)が私費を足し、10万円を石川県神社庁に届ける。

経験と危機感を後進に

 小笠原宮司は1995(平成7)年の阪神・淡路大震災から、長年にわたりさまざまな災害被災地の支援活動を行ってきた。

 阪神・淡路大震災では、被害の甚大さを知り「被災地の力になれれば」と発生7日後に神道青年会の一員として現地入り。損壊した200社以上で、ご神体の搬出やがれき撤去などを行った。2011年の東日本大震災では、土佐神社でチャリティーコンサートなどを開催した。

 今回の演奏会は元々、「コロナ禍で疲弊した地元住民に、神社で心和む時間を過ごしてほしい」と小笠原宮司が昨秋に計画していた。雅楽の演奏や奏者の育成を行っている柴垣氏を紹介され、共に計画を進めていた。

 そのさなかに、能登半島地震が発生。国内外で平穏無事を祈って雅楽の演奏などを行う主韻会(名古屋市)の代表を務める柴垣氏と、30年近く被災地支援を継続してきた小笠原宮司の思いが合致し、チャリティー企画に変更した。趣旨に賛同する四国在住の雅楽愛好家有志らも参集した。

白拍子に魅了される参拝者ら

 日本を代表する鳳笙(ほうしょう)楽器師、柴垣建男(たつお)氏の四男である柴垣氏は、、幼少時から雅楽に親しんできた。全国各地の寺社と深く交流を持ってきたこともあり、能登半島地震で被災した寺社や人々の窮状に胸を痛めてきたという。

 柴垣氏は「被害を受けた寺社関係者が『まずは地域の復興から』と奮闘する姿に心を打たれた。今も復旧作業が進まない寺社は多く、損壊した建造物や文化財には多額の修理費が必要だ。雅楽の演奏と舞を通し、少しでも助け合いの後押しができれば」と語った。

 小笠原宮司は「被災者に寄り添いたいという思いが一番にあった。微力ながらも、積み重ねてきた支援の経験が、次の支援に生かされてきたと思っている」と話した。

 体力的には現地での直接支援などが難しくなってきたが、これまでの経験を伝え、後進を育成するという支援の在り方もあるかもしれないと考えている。また、土佐神社のある高知市は、南海トラフ巨大地震で甚大な被害を受けると予測されている。

 「われわれは被災地を応援するとともに、将来の災害にも危機感を持つ必要がある。大災害への備えを日常的に行い、被災地の現状を自分事として考える機会を作る活動を続けていければ」

演奏会の司会進行を務める小笠原宮司

 小笠原宮司は、能登半島地震の被災地入りの時期や可能な支援の形を検討中だという。

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