ITS 2016 JEWELRY ギセラ フェブリナ ジュオノ
ー2016年の7月が最終審査会だったので、ちょうど5年前ですね。ITSに応募した時のことを教えてください。
BFGUでの修了制作が終わったすぐ後に、ITSの募集が始まりました。それが1月中旬頃で、締め切りは3月末だったと思います。コンテストのことは知っていたので、修了制作のポートフォリオを英語に作り直し、素材サンプルを追加で制作して送りました。
ーBFGUではファッションデザインコースでしたが、ジュエリー部門に応募したのはなぜ?
もともとはファッション部門に応募していたんです。ポートフォリオには、コレクション用に制作したジュエリーの資料なんかも全部いれていたので、それがジュエリー部門でファイナリストに選出された理由なのかなと思います。コレクションのジュエリー制作は友人のララサティ デワンガ プテリにお願いしていたので、デュオでのファイナリストになりました。応募したコレクションは、私の修了制作が元になっているので、コンセプト自体は私のものです。
ーコレクションのコンセプトは?
「DICHOTOMY PLAY(二分された遊び)」、創造性の生き生きとした様子や二面性を表現する、変化に富んだコレクションです。応募にあたり、ITSはサステナブルなコンセプトを求めていました。なので、ポートフォリオには、私のコレクションもサステナブルだと書いたんです。
私の作ったジュエリーは廃棄される色鉛筆から出来ています。色鉛筆は、子どもの頃に自分自身を表現するために与えられる教育ツールなので、創造的な楽しみを完璧に表現できると思いました。色鉛筆の工場に連絡して、規格外で販売できないような色鉛筆がないか尋ね、廃棄される色鉛筆をひと箱送ってもらいました。それを材料にジュエリーを作ったんです。修了制作のコレクションの服は、再利用(re-use/re-purpose)出来るように多機能に作っていて、色々な着方が可能です。このテクニックをジュエリーにも取り入れました。
ーデュオでの制作はどのように進めたのでしょうか?
ララサティと直接会って話したのは、修了制作が始まる前の夏休み。彼女はエスモード・ジャカルタの時の同級生で、ハンドメイドジュエリー制作の経験があったので、私のコレクションのためにジュエリーを作ってくれないかお願いしました。それからはインドネシアと日本で遠距離での制作です。ジュエリーに廃棄色鉛筆を使うことを決めてから、2人でデザインについて話し合いました。彼女が制作を担当するので、出来る出来ないの判断をするのに一緒に話し合う必要があったんです。素材を日本から送り、彼女がインドネシアでジュエリーを制作、そのあと日本に送り返してもらいました。輸送途中に壊れてしまって作り直さなければならなかったものがたくさんあったことを思い出します。
ー遠方の相手とオンラインでやりとりし、直接会わない制作方法は、パンデミックの今まさに世界中で行われていることですね。
本当ですね。当時はSkype(スカイプ)で連絡を取り合っていました。彼女は仕事をしていたので、お互い日中の作業が終わった夜に毎日1、2時間。ファイナリストに選ばれたあと、ジュエリー部門のスポンサーであるスワロフスキーのためのプロジェクトがあり、追加の制作も必要でした。約3週間でスワロフスキーを使ったジュエリーを制作し、最終審査会のためにイタリアに発ちました。
ー最終審査会のことを教えてください。
イタリアのトリエステという街に3日間滞在しました。トリエステに到着すると、ITSのスタッフが出迎えてくれ、彼女ともここで合流しました。1日目は、展示ブースに作品の設営をし、2日目に審査がありました。審査員の前で英語でのプレゼンテーションです。ジュエリー部門の審査員は5人のはずでしたが、プレスや関係者など、もっと大勢の人が見学していました。まずコンセプトを説明し、どんな素材を使ったか、どのように制作したか、そして審査員たちは作品を実際に触ったり、身につけたりしていました。いくつか質問もされましたが、割とカジュアルな感じでしたよ。別の会場でプレスの方々にポートフォリオを見せながら話すインタビューの時間もありました。3日目はファッションショーと受賞者の発表が行われました。
ー印象に残っていることは?
ファイナリストになれて、とても嬉しかった。有名なファッションコンテストのひとつですし、たくさんのことを経験できました。世界中から集まった人たちに出会うことができて、彼らはみんなファッションを愛していて、とてもクリエイティブ。私も彼らの作品や文化から学びがありました。まるで、ひとつの大きなファッションの祭典のようでした。大好きなデザイナーの一人であるイリス・ヴァン・へルペン(Iris van Herpen)と話したり、スタイリストのロッタ・ヴォルコヴァ(Lotta Volkova)やクリエイティブな人たちと会うことも出来ました。
ー2016年はイリスがジュエリー部門の、ロッタやデムナ(Demna Gvasalia)がファッションとアクセサリー部門の審査員として参加していましたね。今年はスケジュールや審査方法も変わってしまったようですが。
去年も確かオンライン開催でしたよね。仕方ないこととはいえ、悲しいですね。私が参加した時には、昼食会やパーティもあり、ファイナリスト同士や、そこに集まった人たちと交流できる機会がありました。それはやはりオンラインと全く違う経験だと思います。
ーインドネシアは現在ロックダウンの最中だと聞きました。お仕事はどうしていますか?
どこにも行けないですね。スーパーマーケットくらい。今はジャカルタで、アートディレクターやファッションスタイリストとして働いています。ロックダウンの前はとても忙しかったので、仕事の予定を全部組み替えなければいけませんでした。ファッションブランドやテレビ、セレブリティやコマーシャルのディレクションやスタイリングの仕事をしていて、映画やコンサート、ミュージックビデオのために衣装のデザイン制作を行うこともあります。その合間に、映画製作について学んでいるので、将来的にはファッションフィルムを手掛けたいと思っています。
ー今後、コンテストにチャレンジする人にアドバイスをお願いします。
コンテストに応募する機会は全員にあります。ファッション以外のリサーチをしてください。外に出かけて、色々なものを見て、たくさんの友達を作ってください。身の回りのことから学び、インスピレーションを得ることが出来ますし、たくさんの人と出会うことで知識の幅がさらに広がります。たとえ失敗したとしても、常に新しいことにトライしてください。私のジュエリーだって、何度も何度も壊れて、最適な接着剤にたどり着くまで、10回も15回も、何度も試したんですから。
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