見出し画像

Hempel Award 2021 優秀賞 近藤 旭

2021年、ポストパンデミック時代のコンテストとして、オンライン応募とリモート審査会を採用し「持続可能な発展」を解き明かしたヘンペルアワード。16の国と地域から977件の応募があったという中から選ばれた、文化服装学院の3人に制作の背景を訊きました。「世界中の人々の口元を緩めていく」というコンセプトでコレクションを制作した、近藤さんのストーリーから。(2021/07/12)

ーコンテスト応募のきっかけから、お話してもらえますか?

アパレルデザイン科2年生になって、コンテストを一生懸命やろうって決めて、1つのコンテストに10枚とか応募していたんですけど、全然通らなくて。学内のソアロンデザインコンテストが年度内最後と聞いていたんですが、それにも通らなかったんです。そのあと、冬休みに入る手前くらいに担任の先生から「中国でコレクション形式のコンテストがあるけど、どう?」って言われて、応募したのがきっかけでした。それと、尊敬する文化の先輩が高円寺でお店をやっていて、このコンテストもその人の影響でやってみようって気持ちに。結構アドバイスをもらっていました。

ー他の2人は修了制作を応募していましたが、近藤さんも修了制作の作品でエントリーしましたか?

いや、僕は別で作りました。まさか通るとは思っていなくて、1ヶ月で4体を全部作って、ルック撮影と動画撮影もして、発送して提出っていうことで、結構焦りました。応募条件には4〜5体って書いてあったので、それで4体製作しました。

4体のデザイン画

ーコンテストのために新しくデザイン画も描いて、実物も制作したんですね。制作はどうでしたか? 1ヶ月で4体制作するのは大変だったと思うのですが。

とりあえず作れそうなところからと思って、ヘッドピースとか、靴とかを先に仕上げつつ、ボディの張り感をどうやって出そうかなって考えて。ボンディングという、生地と生地を貼り合わせて厚みを出す方法で、デザイン画のシルエットを再現しました。表がベルベットで、裏側にメルマという厚いダンボールニットみたいな生地をボンディングしています。ボンディングした分、生地が厚くなってしまって縫い合わせるのが大変でした。糸がすぐ切れちゃったりとか。あと結構重いです。ぬいぐるみの目とか口の部分は、生産管理実習室で刺繍していただきました。ボディの部分は目のパーツを立体的に作ったのを手縫いでまつっているところもあります。

ぬいぐるみのパーツ

ーうまくいったなと思うところは?

割とイメージ通りに作れた感じはあります。立体裁断が得意で、全部立体で形を出しました。細かいところは先生に聞きながら作りました。

ーこの”Nyoppon”というのは、どういう意味なんですか?

「世界中の人々の口元を緩めていく」っていう、よくわかんない感じで、でまかせみたいな感じで書いたんですけど。みんなが自然と笑顔になるようなものを作りたいなって思って、こういうコンセプトで制作しました。小学校5年生くらいの時にイラストクラブに入っていて、そこで描いていたキャラクターでした。漫画とかも描いてたんですよ。そこからの影響が強いです。

ーヘンペルアワード自体のテーマとは完全に関係なく、自分のコンセプトで応募したんですね。

はい。あまり考えていませんでした。11月くらいにエドウィン(EDWIN)とのコラボレーション企画があって、その時からこのキャラクターで作っています。エドウィンのプロジェクトはそのまま修了制作になりました。デニムのパンツを解体してまたつなぎ合わせて作ったんです。目の部分はプラスチックで。ヘンペルのとはまた違ったディティールで作っています。

エドウィンとのプロジェクト

ー英語はどうでしたか?

Google翻訳を使ったり、英語ができる人にお願いしたりしました。ウルトラマンの怪獣を作っている工房で映像を作っている方がいて、その人が映像も撮ってくださって。僕の話を英語に訳したものを当て込んでもらいました。​

制作した動画の一部

ー最終審査会のプレゼンはリモートだったと思うのですが、どんな状況でしたか?

最終審査会は夕方の6時くらいだったんですけど、ちょうどインターンをしていて、インターン先の衣装の会社でプレゼンしました。インターン先の人たちに見守られながら。日本語で話したんですけど、あんまり言いたいことは言えなかった感じです。通訳の方とも事前に内容を共有していましたが、自分の言葉で話したいなって思って、その場の言葉で話したら、あんまり伝わっていませんでした。審査員の方には「どういう時に着るんですか」っていうのは聞かれました。発表ショーも見て、僕の作品、靴が結構歩きにくいんですけど、モデルさんはしっかり歩いてくれていました。

ーどうしてファッションを志しましたか?

高校生の時、古着屋でバイトをしていて、そこでたまたま見たシャツが、すっごい綺麗なドレープが入ってるシャツで、ブランド名を見たらY's(ワイズ)って書いてあったんです。調べていくうちに(山本)耀司さんのブランドだってことを知って、そこから文化服装学院を卒業されてるって聞いて、文化にしようと思いました。

ー卒業後は?

自分で個人でやっていけたらなって思ってます。衣装も興味があって、インターン先は2.5次元舞台の衣装の会社で、そこもすごく面白いんですけど、フリーで活動していきたいと思っています。

ー今後コンテストにチャレンジする人に向けてのアドバイスを。

コンテストっていうと傾向と対策っていうのがあるらしいんですよ、先輩曰く。デザイン画の配置の仕方もテンプレートがあるらしくて、ここにタイトル、ここに生地スワッチとか、審査員に伝えることを重視して、A4サイズ1枚ににどうまとめるかが大事だって。確かにそうやって一次審査を通すことも大事だと思いました。通ってからじゃないと経験できないこともあるし。でも自分のやりたいようにやった方が楽しいかなって。通ったから言えるのかもしれないですが、僕は今回作りたいものを純粋に作れたコンテストだったので。作りたいものを自信を持って、とにかくやってみたらいいんじゃないかなって思います。

HEMPEL AWARD China International Young Fashion Designers Contest
主催:中国ファッション協会、ヘンペルインターナショナルグループ
開始年:1993年
開催地:中国・北京
応募資格:35歳以下、国籍・居住地不問、チーム不可
応募作品:テーマに沿った創造的なコレクション4~5体
提出作品:着色デザイン画
賞:金賞(1 名)賞金 50,000中国元(約 79 万円)北京から日本への往復航空券、1 週間北京観光
銀賞(2 名)賞金 20,000中国元(約 31 万円)北京から日本への往復航空券、1 週間北京観光
銅賞(2 名)賞金 15,000中国元(約 23 万円)、その他賞あり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?