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ColorAMA Award コウ セイホウ

イタリアの糸会社Filmar(フィルマー)が主催する第5回 ColorAMA Awardは、2022春夏シーズンに向けたニットのカプセルコレクションを提案するという実務形式のコンペティション。この春、文化服装学院のニットデザイン科を卒業し、国内のアパレルメーカーに勤めるコウ セイホウさんにコンテストのことを訊きました。(2021/07/19)

ーこのコンテストの募集があったのが2020年10月頃でした。応募した時のことを教えてください。

当時、ニットデザイン科の3年生だったんですけど、クラスで説明会がありました。ニットのコンテストだったので、学園内にある国際交流センターの方が説明に来てくれたんです。課題とかではなく自由応募ではあったんですが、応募してみようかなと。

ーウェブアプリを使って応募するんですよね?

ウェブ上のテンプレートページ

はい、デジタルでの応募でしたね。ウェブ上にセーターと靴下のテンプレートがあって、それにパターンや色、使う糸を選んでいくんです。ムードボードも作成して、ウィメンズとメンズ3体ずつのカプセルコレクションを提案するプロジェクトでした。

コウさんのカプセルコレクション

ー実物制作がないので、実際のデザイナーの仕事に近そうですね。コウさんのコレクションのテーマは何でしたか?

私の故郷は鉄鋼業の街なんですが、 1990年代に一時解雇によって、何千もの家族の運命が変わり、労働者階級が最大の犠牲者になりました。 経済は深刻な後退に見舞われ、産業構造を調整する時間がなく、1990年代初頭の技術革新の波を逃してしまったんです。 人権と持続可能な経済成長を大切にする社会と、自然と人が暮らせる街が理想とし、「My Iron Homeland」というテーマにしました。

ーつらい記憶がインスピレーション源になったんですね。

テーマは哀しいんですけど、コレクションは明るい感じを伝えたくて。カラーパレットには黄色やブルーを使いました。春夏シーズンの提案なので。

ー応募には、トレンド調査やマーケット分析も必要でしたね。今回に限らず、いつもどのようにトレンドリサーチをしていますか?

お店をよく見ています。このシーズンはどんな柄、どんな色とか、何が流行っているのかなと。あとは、Vogue Runway(ヴォーグランウェイ)のアプリ、MATCHESFASHION(マッチズファッション)のアプリ、古着のアプリ、全部見ます。

ー未来、現在、過去の服を全部見ているんですね。その中でも好きなデザイナーはいますか?

川久保玲さん、マルジェラ(Martin Margiela)さん。

ー今回は何に1番時間がかかりましたか?

IllustratorとPhotoshopを使ったデジタル資料の作成に1番時間がかかりました。それでも3日くらいで提出しました。デジタルは好きで、中国にいる頃にもポスターを作ったりしたことがあります。英語は苦手ですが、Google翻訳などを使って提出しました。

ー受賞者の発表は、糸とニットの国際見本市Pitti Filati(ピッティ・フィラーティ)で行われたようですね。

受賞は出来ませんでしたが、Filmarの2022春夏トレンドブックに、私を含むファイナリストのコレクションが掲載されています。

Filmar 2022春夏トレンドブックから
https://www.filmar.it/media/pdf/cololora-book-2021-filmar.pdf

ー文化服装学院に入学する前は?

中国で高校を卒業して、留学のために日本語学校で日本語を勉強しました。川久保さんや三宅一生さんなどの日本のデザイナーが好きで、日本で有名な文化服装学院に入学しました。きれいな服を着るのが好きなんですが、自分でもそれを具現化する技術を身につけたいと思ったんです。ニットデザイン科に進学したのは、伸びたり縮んだりするニットの素材が好きだから。あと先生が優しいです。

ー卒業制作はどんな作品を作りましたか?

卒業制作は上野千鶴子さんの本を読んで、フェミニズムをテーマにしたコレクションを作りました。今回のコンテストのテーマもそうですが、社会のことに興味があるんですよね。本も好きで、日本語の本はまだ難しいんですけど、中国語の本をよく読んでいます。映画も好きです。

ー今後の目標はありますか?

とにかく仕事を続けて経験を積めたら、独立して色々な国に行ってみたいです。

ー海外のコンテストを目指す人にアドバイスを。

英語が分からなくても、怖がらずに、自分の考えを伝えられたらいいのかなと思います。こうやってファイナリストに残れることもあるかもしれませんし!

ColorAMA Award
主催:Filmar
後援:Consorzio Promozione Filati
開催地:イタリア
応募資格:ファッション/デザイン/テキスタイル/ニットを専攻している学生 (4名までのチーム可)
提出作品:「スモールトレンドデジタルカプセルコレクション」の作成
賞: 最優秀賞 賞金2,000ユーロ(約24万円)、作品の実物制作

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