Hempel Award 2023 優秀賞 渡邊祐万
ー優秀賞受賞おめでとうございます。パンデミック後、やっと現地の審査会に参加できるようになりました。今回ヘンペルアワードに応募した理由から聞いていきたいと思います。
アパレルデザイン科の3年生になったら、自分の実力を試すために海外のコンテストに出してみようと思っていて、国際交流センターに海外コンテストのスケジュール一覧をもらいに行きました。締切が近いものから見ていったのと、応募のしやすさ、あとは中国に行ってみたいという好奇心です。
ー海外の学校は6月頃が卒業シーズンで、卒業制作をそのまま応募している人も多かったようです。渡邊さんも授業で制作したものを応募したのでしょうか?
このコンテストのために新しくデザインしました。応募した後に、2年生の修了制作を出している人も多いと聞きました。私もそうしたらよかったのかもしれません。今回制作した作品も3年生の前期の課題と振替にはなりましたが。
ーデザイン画から新たに制作したんですね。今回の作品のコンセプト「New Light」について教えてください。
コンテスト自体にテーマ(「原生・再生 To be Reborn」)が決まっていましたよね。それに合わせて考えました。小さい頃から日本の伝統的なものが好きで、それと結びつけたくて、折り紙と竹細工からインスピレーションを受けました。細やかな手作業と、モダニティを引き出す素材のコントラストを意識しています。継承されてきた美しさから「New Light(新たな光)」をテーマに設定し、さらにそこから生まれる美しさを目指しました。
ー制作の進行はどうでしたか? 最終審査会の1週間前にお会いした時はまだ1体も完成しておらず、間に合うのか心配になりました。
コンテスト自体初めてだったのと、5体制作というのもあり、時間配分がうまくできませんでした。ファイナリスト発表は6月中旬で、夏休みも学校に来て作業していましたが、なかなか進まず、特に形出しと素材探しに時間がかかりました。パーツがたくさんある分、作業量も多く、先生や友達にもたくさん手伝ってもらいました。間に合ってよかったですが、最後の方はやっぱり寝られませんでした。次にチャンスがあれば、絶対に計画的にやります!
ーメンズランジェリーのTバックだったり、かなり露出度が高いコレクションで、フィッティングの時に急遽アンダーウェアを用意していましたね。
本当は全部見せたかったんです。新しいものを生み出す上で、新しい価値観も提案したかった。ドラァグクイーンの人たちと仲が良くて、そういうところから影響されています。最近の海外コレクションでも上半身裸とか、肌を見せていくオープンさがいいなと思っていて、そういう自分の趣味のこだわりです。ただ、自分がいいと思っても、着る側が過度な露出が無理であれば、それはダメだというのも理解しつつ、見せたい部分が見せられなかったのは残念でもあります。
また、サイズが合わずに1体出すことができませんでした。着せられなかったアイテムもあります。マネキンに着せて制作していたのですが、実際のモデルさんは華奢に見えて、思った以上に骨格がしっかりしていました。今は作品撮りのために作り直しています。
ーヘンペルアワードの最終審査会は2日間で、1日目がプレゼンテーション、2日目がファッションショーでした。プレゼンテーションにはどんな準備をしましたか?
制作に追われていたので、前日の夜に、事前に送ったコンセプトを読み返して、何を伝えたかったのかをメモに書き出したくらいです。プレゼン会場に入ると、思ったよりも審査員がいて圧倒されましたが、隣に通訳の方がいてくれたので安心感はありました。
ー今年は『装苑』副編集長の玉利亜紀子さんが審査員として参加されていて、審査員は全員で8名でした。審査員から何か質問はされましたか?
私はされませんでしたが、人によって審査の部屋から出てくる時間が違ったので、質問を受けている人もいたようです。あとは、ポートフォリオ的なものを事前に準備すればよかった。言語も違うので、そういう配布資料があればもう少し伝わったかもしれません。
ーファイナリストは渡邊さんを入れて28名でしたが、他の参加者の作品を見て、感じたことは?
コンテストといえば「造形物」というイメージが自分の中にありましたが、みんなの作品はちゃんと服として機能しているし、デザイン性もあるものばかり。縫製も綺麗でクオリティも高いし、生地加工はどの人もやっていたので、こんなこともできるんだという勉強にもなりました。ぱっと見のシルエットだけじゃなく、細かいディティールにもこだわっていて、見ていてワクワクしました。
私は服を着て写真を撮ったりするのが好きで、モノづくりも好きで、作る人になりたくて文化服装学院に入学しました。当時、進路としては語学系も考えていたので、今回参加して、これから語学も本格的に学ぼうという気持ちになりました。もっと喋れるようになれば、もっとみんなに色々なことを聞けるようになりますから。
ー2日目のファッションショーと授賞式は、昨年オープンしたという南宋徳寿宮遺跡博物館で行われました。
ショーは本当によかったです。会場の豪華さと、裏方のプロ意識が印象に残っています。映像、照明、リハーサル、舞台裏、全部が良い体験で、学びが多かった。参加できてよかったです。
ー来年参加する人に向けて。
まずは、作品を頑丈に作ること。ショーは早着替えで、どうしても衣装が壊れてきてしまうんです。休憩の度に制作者は縫い直したりしていたので、縫い針、縫い糸、安全ピンは必須です。あと、サイズ感。コンテストの場合は、あまりフィットしたものは避けた方がいいというか、誰が着てもデザイン画通りになるようなものをデザインした方がいいと、自戒も込めて。今回参加できて本当に楽しかったし、今後参加する方も素晴らしい経験ができると思います。
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