2021年上半期楽曲10選

 こんにちは。普段はしがない大学生をしております者です。初めてこういったレビューを書くので、勝手がわからず至らない点もあるかもしれませんが生暖かい目でご覧ください…。

 まず、始めに言っておくことが2つあります。
1.次の2曲を意図的に除外しています。
LINE LOOP-サンドリオン
幸福なわがまま-三月のパンタシア
 この2曲は、このnoteを見る皆さん方のかなり多くが既に知っているか、別の方がレビューを書くと予測できるので禁止カードとして除外しました。見てくれる方が知らなそうな曲をあげていきたいというのが理由です。私はこの2曲も大大大好きです。
2.アーティスト、作家、作品は被らせないようにしてみました。
 以上です。それではよろしくお願いします。

深夜徘徊
歌唱:GUMI
作詞:シャノン
作曲:シャノン

 超高品質のボカロトラップ楽曲です。シャノン氏はMVも自分で手掛けており、楽曲の空気感と見事に合致した映像美も魅力です。
 深夜に眠れず街に繰り出す主人公に起こる異常現象を描いた楽曲で、Aメロやサビ直前の映像から分かるようにサビ部分では重力異常が発生しています。それを表すように、サビのドラムフレーズが四つ打ちに変わり、空気感もガラッと変化します。特にベースの動きが最高なので、ベースがよく聴こえるいい機器で聴くのを推奨したいです。Bメロ→サビの流れは聴くたび鳥肌が立つ部分のひとつです。
 構成がわりと珍しく、Aメロ→イントロ→Bメロ→サビ…となっています。無駄を省いた面白い構成です。イントロ(?)やアウトロでは虫の声らしき音が印象的に使われ夏の終わり~秋にかけてを思わせ、季節感も演出しています。ボーカルエディットも、あくまでVOCALOIDを楽器として扱い電子音的側面を前面に出した調声が曲調との合致を生んでいます。
 3分と短い楽曲ですが、みっちり詰まった展開と不思議なMV演出で3分とは思えないほど体感時間が長いと思います。

Wonder NeverLand
歌唱:にじさんじ(月ノ美兎、卯月コウ、シスター・クレア、花畑チャイカ、町田ちま、ジョー・力一、リゼ・ヘルエスタ、鈴原るる、レヴィ・エリファ、健屋花那、不破湊、メリッサ・キンレンカ)
作詞:kz(livetune)
作曲:kz(livetune)
編曲:kz(livetune)、やしきん(F.M.F)

 にじさんじ3周年記念プロジェクト「PALETTE」の記念すべき一曲目として公開された楽曲です。
 まず、とにかく感動を呼ぶような雄大なサウンドメイキングが特徴でしょう。単純に曲がいいので、にじさんじやバーチャルyoutuberについて全く知らなくても心を動かされる楽曲だと思います。言わずもがな、にじさんじのオタクであれば涙腺に来ること間違いなしです。
 全編に渡って、幾重にも重ねられた高音圧のロー部分のサウンドが、多人数のボーカルやブラスやウワモノといった情報量の多いサウンドを支えており、楽曲のバランスを保っています。kz氏の電子音中心のオケとやしきん氏のギターサウンドが組み合わさったハーモニーの調和が聴き所です。
 「いつまでも僕ら 子供のまま 遊び続けよう」という歌詞が、にじさんじひいてはバーチャルyoutuberの存在意義を象徴している感じがします。
 先日、この楽曲にも参加している花畑チャイカ、卯月コウと他二人(夢追翔、社築)の四人が行ったNKODICEというゲームの配信(こちら)のラストにおいてこの楽曲がネタにされました。上にあげた歌詞をそのまま表したかのようにCHINKOOCHINCHINを出し、子供のように大喜びする彼らが、バーチャルyoutuberという人を楽しませる活動の到達点なのではないかとこれを書いていて思います。くだらない下ネタが好きな人や、興味がある方は是非(なんか感動的に締めましたが本当にバカみたいな配信です)。

シーサイド
歌唱:菅原圭
作詞:菅原圭
作曲:菅原圭
編曲:蛙目書店

 Youtube上では2019年に活動を開始し、2020年10月公開のフライミで知られるようになった新進気鋭のアーティスト、菅原圭の現時点での最新楽曲です。
 明言は避けますが、とある方の別名義の活動でもあります。別名義での活動において語っていた内容によると、作曲は感覚で行っているらしく、コードの動き等は編曲担当にほぼ任せているようです。編曲の話は後でもう一度触れます。
 歌唱面では、なんといっても独特な歌声が特徴です。裏声の音域やフレーズの切れ目で歌声を綺麗に掠れさせる技術があるようで、グロウルともヒーカップとも取れない特殊なサウンドが楽曲にアクセントを与えてますね(例えば0:16秒辺りの「風が 風が 強く【凪】いでる」などです)。他にもオクターブ上コーラスを取り入れたサビフレーズも注目です。
 メロディラインは間を多く取った構造になっており、他楽器もユニゾンして無音になる部分がサビフレーズを中心に随所にあることから、ゆったりとしていながらも引き付けられる箇所が多くある曲です。
 編曲の蛙目書店は作詞作曲の菅原圭、コードアレンジのmsy、編曲のおきたねむ(尾北ねむ)の三人のユニットという形式のようです。過去にはこのユニット名義でニコニコ動画にボカロ楽曲を投稿していることや、msy氏はTwitterで多くのボカロPをフォローしており、尾北ねむ氏は個人名義でボカロ曲を発表していたことからも分かるように「シーサイド」もかなりボカロ文化に根差した音楽性をしています。ボカロ好きな方におすすめしたい一曲です。


歌唱:コヤマヒデカズ(CIVILIAN)
作詞:コヤマヒデカズ(CIVILIAN)
作曲:CIVILIAN
編曲:CIVILIAN

 中国のオンライン小説サイトに投稿された小説作品「魔道祖師」のアニメ化に際し、日本語版のオープニングテーマとして製作された楽曲です。私はこの作品については全く知らないのですが、コメント欄を見る限り、しっかりと作品にリンクしていてアニメ視聴者からの評価も高い楽曲となっているようです。
 楽曲面は、フレーズにペンタトニックスケールを多用することで古代中国を背景にした作品世界を表します。ほとんどの部分で通奏される弦楽器(琴?)と随所に入る笛の音色とが、CIVILIAN特有のローが分厚いサウンドと声量のあるボーカルに乗っかることで、アニメOPとしてアニメ視聴者を作品世界に引き込むと同時にバンドとしてのCIVILIANらしさを出すことに成功しています。
 コヤマ氏は去年3月に喉を痛め手術しており、最近の楽曲では叫び倒すような声を使うことが少なくなっています。そのためか、代わりに3:08のように広がりのある高音フレーズが多くなっています。このようなフレーズはバラードとの適合性が高いことから、これからのCIVILIAN楽曲はバラードに注目するべきだと思います。
 2021/6/2には2ndアルバム「灯命」をリリース。他の注目楽曲「正解不正解」や「千夜想歌」も収録されています。このバンドは個人的に、実力の割に絶妙に知名度がないと思っているので、CDを買うなりyoutubeの音源を聴くなりして、この機会にCIVILIANを聴いてみてください。

ハローグッバイ、サニーデイ
歌唱:ひこ(CAT ATE HOTDOGS )
作詞:ひこ(CAT ATE HOTDOGS )
作曲:ひこ(CAT ATE HOTDOGS )
編曲:CAT ATE HOTDOGS

 CAT ATE HOTDOGSは、2019年に十代才能発掘プロジェクト「十代白書」でグランプリを受賞して以降、「kikanju」「yoru」「ヤドカリ」等の楽曲を発表し活躍を続けるロックバンド。メンバーはthe band apart、サンボマスター、アルカラ、ZAZEN BOYS等の影響を受けており、本楽曲も爽やかかつテクニカルな楽曲となっています。上にあげたバンドやハヌマーン、SAKANAMON等が好きな方は必聴のバンドです。
 動き回るリードギターはナチュラルな空間系エフェクトで爽やかに空間を広げ、バッキングは邪魔しない音作りで曲を支えます。
 特筆すべきはボーカルの声質。この手のバンドとしては珍しくハスキーで低めですが、この声質のおかげか、リードギターに存在感で負けないようになっています。
 ベースとドラムに関しては、正直あまり目立たない構成になっています。その理由としては縦横無尽に目立ちまくって曲を引っ張るリードギターの支えが必要であることがあげられますね。
 当楽曲の特徴といえば、バンアパや田中秀和を思わせる奇っ怪なコード進行です。1:17では当たり前のようにイキスギコードが使われています。かなりセオリーを外したコード回しなので分析が難しいです。他にも落ちサビの刻み方からSAKANAMON等の影響が見られるなど、爽やかギターロック系統が好きな方には必ず刺さるであろう楽曲です。
 
お召し上がりは今日中に
歌唱:森中花咲
作詞:40㍍P
作曲:40㍍P
編曲:40㍍P

 にじさんじ所属バーチャルライバー森中花咲氏のメジャーデビューアルバム「下剋上」からの一曲です。我らが40㍍P制作で、「純情スカート」や「からくりピエロ」などを思わせる、ピアノやオルガンが前面に出たサウンドがとてもお洒落です。
 なんといっても歌詞が秀逸。youtubetopicには歌詞もなくコメント欄もないので、是非別サイトで歌詞を見ながら聴くのを推奨します。一言で言うと、

 えっちです。

 タイトルからも分かりますが、そういうことです。インストがカフェで流れていそうなオトナなサウンドに乗せて「ねえ、私をこのまま帰さないで」とか言われたら、くまさんず(彼女のファンの総称)は尊死しちゃいますね。
 ちょっと技術的な話もします。歌唱面は、アルバムの他の楽曲よりはウィスパーめな感じです。同じアルバム内でも、「下剋上」などは力強く歌い上げており、歌い分けが緻密です。
 メイン部分のほとんどで丸の内進行(4361)が運用されており、改めてこの進行の強さを感じられます。40㍍Pの4361はつよい。イントロのエレピサウンドで一気に心を掴み、ムーディーなリードギターに繋ぐことで歌部分に引き込んでいく楽曲構造は見事です。

ハルガレ
歌唱:MARiA
作詞:じん(自然の敵P)
作曲:じん(自然の敵P)
編曲:本間昭光

 私が個人的に最も敬愛するミュージシャン、じん(自然の敵P)氏によるMARiA氏への提供楽曲です。編曲にはJ-POP界のビッグネーム本間昭光氏がついています。
 イントロ抜きで突然Aメロからスタートという特異な構成です。Aメロフレーズとサビフレーズではヨナ抜き音階(ペンタトニックスケール)がふんだんに使われており、極めて日本的で日本人特効のメロディとなっています。Bメロは一転して通常の音階に。じん氏は同じMARiA氏が歌う「RED」や「アディショナルメモリー」等でも、この「Aメロヨナ抜き、Bメロ通常」と似た動きを運用しており、相当気に入っていることがわかりますね。
 0:08や0:24ではE♭7にストリングスのF# が乗っかることでジミヘンコード(E7#9)ができています(個人的にここがめっちゃ好きです)。
 サビ終わりのフレーズ「青い、春枯れの鮮やかな色」の部分がTHEじんという感じがして大好きです。類い稀なメロディセンスが光ります。じん氏は先日のニコ生(現在も視聴可、45分くらい)において、吉幾三氏や八木節等をリスペクトして「カゲロウデイズ」を制作したと発言しており、日本人特効なメロディは民謡などから来ているのかもしれません。
 どこまでじん氏が作ってどこから本間氏が作ったのかは分かりませんが、メロと構成とコード以外は本間氏の手により「じんの曲になりすぎないようにする」よう、あくまでMARiA氏のアルバムの一曲となるよう編曲されているような感じがします。楽器の音が控えめでボーカルより目立つ部分が少なく、MARiA氏のボーカルパワーを最大限生かす形となっているのもヒットメーカー本間氏の采配でしょう。
 余談としては、横槍メンゴ氏によるMVにおいてバスが印象的に使われている点があります。バスが出てくる曲は、電車が出てくる曲に比べると大分少ないです。私の記憶にはトーマ氏の「サンセットバスストップ」やn-buna氏の「メリュー」ぐらいしかなく、「バス曲」に一曲追加された感じですね。

フォニイ
歌唱:可不
作詞:ツミキ
作曲:ツミキ

 ボカロ黄金期の息吹を残すアーティストツミキ氏の最新楽曲です。これまでの楽曲はキーボードやシンセも存在感がありながらもあくまでギター主体、といった感じでしたが、この曲はギターレスかつカットアップやサイドチェインを多用しているテクノ系となっており、ツミキ氏二期の楽曲と言えるでしょう。
 イントロは軽快な四ツ打ちに乗せたボーカルカットアップ。最初聴いたときはPSYQUI氏を感じました。その後はBメロ→サビで転調を2度行い飽きさせない構造です。サビはツミキ氏がよく使う印象的な進行(ⅣM7→Ⅲ7→Ⅵm7→Ⅴm7→Ⅶm7-5→Ⅲ7→Ⅵm7→Ⅴm7→Ⅰ)で、ギターレスとなり大きな音楽性の変化がありながらも「ツミキ感」を維持しています。二番においてもほぼ全てのセクションごとに転調が行われます。
 CevioAI可不の極めて自然な発声によりハイクオリティなテクノサウンドが引き立っています。
 ツミキ氏は先日オリジナルCD「SAKKAC CRAFT」を発売し、他にもmaimaiでらっくすに「チエルカ/エソテリカ」を提供するなど、様々な面で大活躍しています。これからも要注目のボカロPです。

君になりたいから
歌唱:緑仙
作詞:ぼっちぼろまる
作曲:ぼっちぼろまる
編曲:ぼっちぼろまる

 にじさんじ所属バーチャルライバー緑仙氏の1stEP「It'sLie」に収録された楽曲で、サブスク開始4か月後の6月にフルMVがyoutubeにて公開されました。実質的には緑仙氏のデビュー3周年記念楽曲です。
 一言でいえば、RADWIMPS等の影響を受けたお手本のような正統派良質バラードです。本当に正統派なのでかなり聴きやすいです。サビでの大きな盛り上がりと迸る緑仙氏の高い歌唱力が魅力です。
 楽曲制作はぼっちぼろまる氏で、緑仙氏とぼっちぼろまる氏は去年3月公開の「イツライ」においてもタッグを組んでいます。「イツライ」と本楽曲はかなり関連が深いので、同時に楽しむと面白いかもしれません。
 ぼっちぼろまる氏はBUMP OF CHICKEN、ASIAN KUNG-FU GENERATION、RADWIMPS、wowaka等などのアーティストからの影響を公言しており(個人的にはSAKANAMONとかハヌマーンも感じます)、これらのアーティストが好きな方は彼の他の楽曲(「アイシー」、「図書室ボーイズサイエンス」等)をチェックすると楽しくなれると思います。

アイロニーナ
歌唱:flower
作詞:煮ル果実
作曲:煮ル果実

 煮ル果実氏の最新楽曲です。今回も様々な要素が織り混ぜられた盛りだくさんの楽曲です。
 イントロ、Aメロでは軽快な四つ打ちとテレキャスの音色を中心に多種のシンセによる肉付けがなされています。Bメロはかなり静かになり、EDMのブレイクダウンのような様相を見せ、盛り上げながらサビへ続きます。サビは煮ル果実氏の手癖である4362進行(「紗痲」等でも使用)と四つ打ちサウンドが特徴です。二番は一転トラップサウンド化し、サックスソロ→謎の転調からBメロフレーズ→大サビ…という比較的オーソドックスな構成です。
 歌詞もMVもかなり難解な楽曲です。背景ストーリーは正直よくわかんないです。「トラフィック・ジャム」などのキャラクターも出てきますし。考察はコメ欄の天才に頼るのがいいと思います。しかし、歌詞のストーリーを抜きにしてもとにかく良質なサウンドで聴けるのがこの曲の魅力ですね。
 他には、煮ル果実氏の直近の4楽曲は全て5文字目に「ー」が入るのも面白いです。6/23には新アルバム「POPGATO」の告知もされており、収録曲のタイトルは全てこの法則に則ったものになっています。今後に期待がかかるアーティストのひとりです。

 最後に、泣く泣く選出漏れとした楽曲をまとめてタイトルと制作陣だけ紹介します。長々と駄文を失礼しました。ありがとうございました。

Dawn
歌唱;LiSA
作詞:LiSA 
作曲:草野華余子、堀江晶太
編曲:堀江晶太

identity crisis
歌唱:luz
作詞:hotaru、luz
作曲:堀江晶太
編曲:堀江晶太

最深
歌唱:ACCAMER
作詞:Syudou
作曲:Syudou
編曲:tomolow

イスカノサイ
歌唱:あらき
作詞:あらき
作曲:堀江晶太
編曲:eba

ヨルノブルース
歌唱:メガテラ・ゼロ
作詞:メガテラ・ゼロ
作曲:メガテラ・ゼロ
編曲:Mr.FanTastiC

此処に咲いて
歌唱:森中花咲
作詞:Chinozo
作曲:Chinozo
編曲:Chinozo

1day
歌唱:ぼっちぼろまる
作詞:ぼっちぼろまる
作曲:ぼっちぼろまる
編曲:ぼっちぼろまる

Virtual strike
歌唱:早瀬走、メリッサ・キンレンカ
作詞:TeddyLoid
作曲:TeddyLoid
編曲:TeddyLoid

Roulette!
歌唱:MonsterZ Mate(コ―サカ、アンジョー)
作詞:un:c
ラップ詞:高坂はしやん
作曲:Neko Hacker
編曲:Neko Hacker

又三郎
歌唱:suis
作詞:n-buna
作曲:n-buna
編曲:n-buna

分かってないよ
歌唱:WurtS
作詞:WurtS
作曲:WurtS

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