漫画「輝夜姫」 長年、胸に刺さり続ける少女の言葉。
清水玲子さんという、異次元レベル(あくまで個人の感覚です)の作家さんがいます。作品のスケールやその内容が、一体どこから生み出されているのかが不思議なくらいの。
少女漫画家、というよりSF作家、と呼ぶ方がしっくりくるような。
未来から来られたのかな?という、これから起こり得そうな壮大なスケールの物語と細かい設定。どの作品も、描かれた時代を感じない近未来感が強い。
美しい絵柄から織り成される、華美で残酷なその内容に、酷く人間らしい生々しさを感じます。
(表現が独特で、非常に繊細な描写なので、合わない人には合わないかもです)
『秘密』は、メディアミックス化で多くの人に知られる作品となり、正直に自分もこちらの作品が記憶に新しいです。
とは言え、自分は熱心なファンということでもなく、コミックスも所有しておらず、過去作もほとんど読めておりません。
(読むのに精神を消費する気がします。娯楽としての漫画というよりも、重厚な文学に近いと思う)
なんでしょうか。こう、気軽に「これ好き!」というのではなく、一種の畏怖の念を抱くような。
私なんぞが語るなどおこがましい!
と思えてしまうのですが、時を重ね、コミックスが手元にあるわけでもなく、定期で読み返すわけでもなく、ストーリーも殆ど記憶にないのに。
とある一人の登場人物の言葉が、ずっと記憶に残っているのです。
実際に誰かが自分に向けて放った言葉でもなく、無茶苦茶好きで丸暗記する勢いの台詞という訳でもない。
そんな不思議な感覚について、綴ろうと思います。
その少女は、『まゆ』。
輝夜姫は、学生時代に掲載誌lalaで読んでいた気がするのですが‥‥さすがに記憶が朧げです。
ただ、多くの読者と同様に、おそらく『まゆ』のことは当時大っ嫌いだったんじゃないかなー‥‥。
その昔、Zガンダムで女性視聴者のヘイトを集めまくったという、ベルトーチカくらいには嫌われていたのでは。(ベルトーチカが嫌われてる理由が私はわからないんですが)
同性のみならずに、嫌われ要素を煮出したような彼女。昔の漫画やアニメではお馴染みの「お荷物ヒロイン」ポジション。
されど見た目に反して攻撃的で、とにかく主人公の晶への執着と依存が徹底的だったように記憶しています。
現代でいえばメンヘラってやつかと考えると、他人に思えてこなくなる‥‥。
そんな彼女が、おそらく作中で初めて、過去からずっと抱えていた本心を吐露するシーン。
記憶が朧げすぎたので、漫画アプリで調べてきました。第60話。
父親である柏木に、自分への愛情は一切ないどころか「今まで一度も自分の娘だと思った事はない」と言い放たれ。
彼女のモノローグが入ります。
(輝夜姫、結構な長編です。されど一話から彼女の軌跡を追った上で知るべきモノローグかと思うので、興味を持たれた方はこんなん読んでる場合じゃなく。
作品そのものをお読みいただくことを勧めます。なので、あくまでかいつまんだ内容で触れることにします)
「自分をかわいそうだと思ったことはない」
「親の虐待で殺されたり、飢えて死んでいない」
「だから私なんかが自分をかわいそうだなんて思っちゃいけない」
そう自分にずっと言い聞かせて。
幼い頃から、哀しいことや辛いことがあれば、残酷な童話や歴史の本を読み。
残酷で、理不尽で、不幸な現実を確認して、
「大丈夫まだ下がいる」
そう、自分に言い聞かせ続けることで。
とっくに壊れていた自分の心から目を逸らして、騙しながら生きてきたのかなって。
もう、本当に何十年ぶりにこのモノローグを読んだかわかりませんが、やはり涙が出ます。
傍若無人でわがままで自己中心的で、多くの読者に嫌われていたであろう、まゆ。
両親から得られなかった愛情を、自分を否定しない(立場上出来ないであろう)晶へ依存、執着することで代替しようとしていたのか。
この、辛い時、しんどい時。正常な人間なら、好きなことしたり笑ったり、人とあったり話したりしてして気持ちを切り替えるんですけど。
まゆの行動がすごくわかるんですよね。
以前に人間関係と仕事で精神状態がおかしかった時、YouTubeに2ちゃんのスレをまとめた動画があったんですけど。
ひたっすら、仕事以外の時間は無表情でその、夫がオカシイ嫁がオカシイ、義母にいびられ、義実家で奴隷扱いとか。DVでの離婚とか托卵とか。
釣りかどうかもわかりませんが、そういう気が滅入るようなものを、ひやすらにずっと見続けていました。
善悪とかなく、もう無心なんですよね。自分自身でなぜその情報を選んで取得しているかがわからない。
この他、今日なんかもですが、心身共に気が落ちてるなって時に。凶悪事件とかの記事やまとめを見ちゃったりしてます。
何となく、無意識でまゆのように。
「ホラ大丈夫、私は不幸なんかじゃない」
「もっとひどい目に遭ってる人は沢山いるんだ」
「だから私は大丈夫なんだ」
と言い聞かせようとしているのかもしれません。
自分の置かれた現状より悲惨と思える情報を並べて、まだ大丈夫、ほら大丈夫、と。
歪んでいる、というよりも。人として何かの機能が壊れているのだろうと思います。
というよりも‥‥幼い頃から比較や無関心晒された結果、自分自身に一番無関心になり、さらなる不幸と比較することでどうにか精神を保つ。
まともじゃないですね。
この下へ下へと奈落の底へ落ちていく精神状況を立て直すには、まず、その現況と向き合い、実状を把握して『認める』ことが肝心なのだと思います。
十人十色ですから、同じ漫画を読んでも「はぁ?ただの悲劇のヒロイン症候群だろ!みんなから嫌われてるんだから、コイツが居なくなれば皆んなしあわせだろ。」という感想を持たれる方も多々いらっしゃると思います。
ただ、情報過多になりはしているものの、昔のように『世界は自分の半径数メートルだけ』ではありません。
自分自身で、生きる場所を選択できる可能性は、確実に増えています。
「自分は不幸じゃない」
と、言い続け、自身の苦しさや哀しさを否定して押し込めるんじゃなくって。
他の誰かと比べるんじゃなくって。
今の私は、自分は、あなたは。
笑えますか?
泣けますか?
食べ物の味、わかりますか?
飲み物の味、わかりますか?
好きなもの、ありますか?
好きなこと、できますか?
眠れますか?
身の回りに、あなたの辛さが全く理解されないと感じても、似た苦しみを抱えている人が、必ずどこかに居ます。
物理的に一人だとしても、本質的に一人ではない。孤独ではない。
そう信じられるような世界になるといいな。
しかし‥‥まゆにしても、機能不全家族を元凶としており。その環境で生まれ育てば、負の連鎖を生み出す可能性は限りなく高くなる。
「児相が」「警察が」「政治家が」と責任転嫁をし続けても負の感情は解消されません。
社会全体に必要な縁が生まれ、他人事して断絶することのない世の中に、変わっていけるかどうかのターニングポイントかも知れませんね。
ほぼ断絶選んでる、精神的引きこもりのお前が言うな!って話なんですけど。
自身が何かの力になれるのであれば、尽力は惜しまないと思います。まぁ、気力体力枯渇しとるのだがね。
疲れているなと思っても、友人と他愛のない話をして美味しいもの食べたら疲労が吹っ飛ぶこともあります。
人間は、人と人との繋がりで生きる生物。その縁のもつエネルギーが、より善き方向へ活かされますように。
という、変人の自分語りを含む独り言にお付き合いいただきました、そこのあなた。
かなりの変人ですね?
嘘です。すみません。貴重な時間をありがとうございます!!
そんな奇特なあなたに。
なんかいいことありますように!
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