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掛川花鳥園スタッフのゆるゆる自由研究 【フラミンゴがほうきを返してくれません】

Author:掛川花鳥園飼育スタッフ

花と鳥とのふれあいが楽しめるテーマパーク、掛川花鳥園のスタッフによる、園内の鳥たちのディープな情報や楽しい実験をスタッフブログから集めたよりぬき連載!
第5回はほうきを返してくれないフラミンゴです。なぜそんなことになってしまったのか、顛末をお話しします。

ここはオオハシとトキの水辺。

3月下旬ごろからフラミンゴをはじめ、トキやキンケイは繁殖期に入り、夏に
かけてクロエリセイタカシギも産卵シーズンを迎えます。

そこで鳥たちが熱心になるのが巣作りです。巣材を集めたり、卵を産むのによい場所を探したりと、忙しそうにしています。
中にはお客様用の手洗い場の中で産卵しちゃった鳥もいました。

ホールインワン

これはキジの仲間、イワシャコの卵です。

イワシャコ
死んだように寝ている姿が隠れた人気

キジの仲間は一定数卵を産むまで抱卵をしないので、産み落としっぱなしで卵を放置してしまうことがよくあります。野生下では抱卵前も親鳥がきちんと管理するわけですが、飼育下だとまじめにやらない親鳥も多いです。
今回はたまたまシンクがちょうどよさそうに見えてしまったのか、ぽんと産み落としていってしまいました。

こちらはクロエリセイタカシギの巣。

プールの中に鳥の羽根を集めた巣になっています。クロエリセイタカシギは本来なら浅瀬や水辺に住んでいるので細い枯れ木などを集めて巣を作ることが多いです。掛川花鳥園にいるシギはその環境にあった物を臨機応変に使っています!

枯れ木、鳥の羽根までは皆さんも「ああ~なるほど、巣の材料ね。分かるわ~」と納得しやすいと思うのですが、ここで当園のオオフラミンゴを見てみましょう。

スタッフが使う掃除用ほうきを巣材にしてしまうのです。

本来なら土をクレーター状にクチバシで盛り、その中に産卵することが多いフラミンゴたち。シギたちと同じく羽根を使ってくれたらうれしいのに!これでは掃除ができません!

ただでさえお客様から「フラミンゴの目こわーい!」と言われているのに、さらに怖いこの眼光!藻類を主食にしている草食系と思いきや、獲物を狩ろうとでもいうようなオーラを感じます……。

僕「でもごめんな、掃除したいからもらうで」
ギュワッ
僕「ぬおおおお!!」
逃げるオウゴンキンケイ

観察しているとスタッフだけではなく、近づく鳥でさえも攻撃しようとします。

どどーん

ああ、座り込んでしまいました。
ほうきを取り返せない絶望と同時に「魔女みたいでかわいい」という喜びも感じてしまいます。バードスタッフの性(さが)でございます。

また別の日には、モップのバケツの上に重ねて置いてたほうきを、一緒に置いていたチリトリをどけて座っていました。
「ゴミが散らばる!」の前に「卵のためにわざわざ一生懸命ほうきを盗ろうとした姿勢がたまらなく尊い!」と思ってしまいました。これもバードスタッフの性です。決して私がおかしいわけではないと思います。

変わったものに執着する例ではシロトキも。自分とほぼ同じ大きさの容器を巣材に持って行こうとしていました。どう使うつもりだったのでしょうか。

このように、営巣中の鳥たちは予想外なところに卵を産んだり、意外なものを巣材にしたり、こだわりを見せてくれたりと、いつも楽しい発見があります。

野生の鳥の営巣は、観察すると鳥が嫌がって巣を放棄してしまうこともあり、慎重な観察が肝要になるので、営巣の様子をじっくり見られるのは飼育員ならではかもしれません。

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BIRDERでは、さらに花鳥園の鳥たちについて、毎月いろいろなテーマで紹介する連載を掲載しています。楽しい漫画やイラスト入りで、会いに行きたくなること間違いなし!
BIRDER9月号の連載テーマは「ケープペンギンのゆきちゃんの人工育雛(後編)」
なぜペンギンの雛を人工育雛するに至ったのかのレポートの後編です。

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掛川花鳥園

掛川花鳥園は「花と鳥とのふれあい」が楽しめるテーマパークです。
広大な敷地の中に大温室やスイレンプール、池や牧場などを備えています。
冷暖房完備のガラスハウスは、夏涼しく冬は暖かく、全天候型なので雨の日でも安心。一年中快適な空間で花や鳥とのふれあいをお楽しみいただけます。

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