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掛川花鳥園スタッフのゆるゆる自由研究 【歩く猛禽類】

花と鳥とのふれあいが楽しめるテーマパーク、掛川花鳥園のスタッフによる、園内の鳥たちのディープな情報や楽しい実験をスタッフブログから集めたよりぬき連載。今回は歩く猛禽類たちを紹介します

歩く猛禽類

猛禽類といえば、空中最強のハンター。掛川花鳥園でも、猛禽類たちのフライトショーは大人気です。

しかし、当園では猛禽類による「飛ばないショー」も行っています。これは特別に訓練したわけではなく、野生の習性を利用したショーです。一体どんなショーなのか、鳥と合わせていくつかご紹介します。

※バードショーは鳥の体調や気分、感染対策、季節などによりプログラムが異なります。現在開催中のショーはHPで最新のものをご確認ください。

フォークランドの悪魔(フォークランドカラカラ)

スタッフの足について歩いているのはフォークランドカラカラのディア。

フォークランドカラカラはハヤブサの仲間。その名の通りフォークランド諸島近辺にすむ鳥で、主な獲物はウサギ、鳥の雛や卵のほか、羊などの腐肉、昆虫、ミミズなどさまざまなものを食べます。好奇心旺盛な賢い鳥で、当園のディアは簡単な鍵なら器用に開けてしまいます(動画は箱開けショーの様子)。
ハヤブサの多くは生きた鳥を巧みな飛行で捉えるのに対し、フォークランドカラカラはミミズを探したり、海鳥の巣穴を探すために爪や嘴で穴を掘ったりする地上の狩りを得意とします。フォークランド諸島にはペンギンのコロニーもあり、地面のほうが獲物が多いのでしょう。ショーではその習性を活かし、隠した餌を探し出してもらっています。
余談ですが、賢く、物怖じしない性格から、家畜の羊を襲ったり、人から帽子や道具を奪ったり、索具を壊したりするので、ほとほと困り果てた人たちに一時期は「フォークランドの悪魔」と呼ばれ、駆除されてしまったこともあるほどだそう。

砂漠を駆けるフクロウ(アナホリフクロウ)

全長20cmほどのこの小さな鳥はアナホリフクロウの「ひの」。
野生ではアメリカ大陸の砂漠や草原に生息しており、プレーリードッグの古巣などを利用したり、足を使って土や砂をかき出したりすることで「アナホリ」の名がつきました。
ほかのフクロウに比べ、すらりとした足は走り回るのに有利です。

トンネルから顔を出すのがかわいい

ショーでは、野生のアナホリフクロウの穴を掘って使う習性を活かして、トンネルに潜る様子をお客さんに見てもらっています。しかし、肝心の土を掘るところはまだ見せられていません。「ひの」はスタッフから「アナホッテルトコロミタコトナイフクロウ」の異名をつけられている鳥。花鳥園内の床は芝や木材、ショー会場はコンクリート。ヨーロッパで人工育雛で育った「ひの」は砂に触ったことすらありませんでした。


ひの」は砂に触ったことすらありませんでした。
そこで、スタッフは一度人工的に砂場を用意してみました。

そのへんの土ではなく、購入した床材

「ひの」はすぐに近づいて砂入れの縁に乗ろうとして踏み外し、勢いそのまま砂に「ザシャーッ!」……。

初めて見た砂に警戒はすれど、内からあふれる好奇心と本能とで葛藤しつつ、徐々に近づいていき、初めてうっすらと爪の先が当たり、「これが……砂……」とかそんな感じのやつを期待していたのに

あっさり砂に入ってしまって感動のシーンとはなりませんでしたが、気を取り直して砂に餌を入れて探させるなど、穴を掘るように促してみたものの、餌を見つけ出したら用無しとばかりに出てしまい、穴を掘る様子はありません。

餌を探す様子

もっと工夫しないと、本来の生息地で見られるような穴掘りは見られないようです。今後の課題です。

これ……
なに……

ヘビ狩り名人(ヘビクイワシ)

長いまつげに優雅な冠羽、白い羽に赤い顔のコントラストも美しい、すらりとした体形のこの鳥はヘビクイワシの「キック」。特に体が白い個体で、凛々しい姿にスタッフからは「キック姐さん」とも呼ばれています。
ヘビクイワシ はサハラ砂漠以南のアフリカ大陸に生息する鳥で、サバンナや草原を主なすみかにしています。獲物は昆虫のほか、カエルや鳥の卵や雛、爬虫類や両生類など。小さな獲物は直接嘴で取って食べますが、ヘビなどの大きな獲物は蹴って踏みつけて殺してから食べます。ダチョウなどとは違って空を飛ぶこともできる鳥です。

ヘビのおもちゃにキック!

ここで,ほかの大形の猛禽類との足比べをしてみましょう

ワシミミズクの足
ヒメコンドルの足
ヘビクイワシの足

ワシミミズクの足は獲物を捕まえてがっちり掴めるような、鋭く、持ちやすい構造になっています。
ヒメコンドル はワシミミズクやヘビクイワシに比べて華奢です。ヒメコンドル の獲物は動物の死体などで、生きた獲物を捕まえたりすることはありません。肉を裂くための鋭い嘴はもっていますが、爪や足はそこまで強くなくてもよいのかもしれません。
ヘビクイワシの足は面積は大きくはないものの、分厚く、爪も太いです。短い爪は獲物を捕まえるより、踏んだり蹴ったりするときに力を入れやすいのでしょう。

それでは、そんな足で蹴られるヘビの気持ちになってみましょう。

この動画は、キックに蹴られる目線で撮影したものです。実際はカメラではなく手前のマットを蹴っていますが、勢いが伝わるでしょうか。

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BIRDERでは、さらに花鳥園の鳥たちについて、毎月いろいろなテーマで紹介する連載を掲載しています。楽しい漫画やイラスト入りで、会いに行きたくなること間違いなし!
BIRDER3月号の連載テーマは「鳥のコミュニケーション」
鳥はさまざまな方法で人を呼んだり、コミュニケーションを取ろうとします。今回は鳥が人をよく見分け、反応を使い分ける様子などをご紹介します!


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掛川花鳥園

掛川花鳥園は「花と鳥とのふれあい」が楽しめるテーマパークです。
広大な敷地の中に大温室やスイレンプール、池や牧場などを備えています。
冷暖房完備のガラスハウスは、夏涼しく冬は暖かく、全天候型なので雨の日でも安心。一年中快適な空間で花や鳥とのふれあいをお楽しみいただけます。

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