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誤解だらけ? 知られざる花粉のすがた

花粉は、黄色くてトゲトゲだと思われがちだけど…

みなさんは花粉の形にどのようなイメージがあるでしょうか?
花粉は「黄色くてトゲトゲしていて丸い」、そんなイメージがあるかと思います。私もいろいろな花粉を観察するまで同じように思っていました。空気清浄機や掃除機のCMでは、髪の毛やハウスダストなどと一緒にトゲトゲした花粉が描かれます。
ではここで、花粉症の原因になっているスギの花粉を見てみましょう。

スギ花粉

全然違いますね。どちらからと言えば丸くて地味であまり花粉っぽくありません。では、CM等で使われている花粉はいったい何でしょうか? ここで、ヒマワリの花粉を見てみましょう。

ヒマワリ花粉

黄色くてトゲトゲしていて丸い形をしていると思います。CM等で使われている写真はヒマワリではないですが、近い植物の花粉ではないかと思います。花粉症の原因になっているため、凶暴な痛々しい感じが必要なのかもしれません。

それでは、ほかの花粉症の原因になっている花粉の形態はどうでしょうか? 
著者はイネ科花粉症です。イネ科花粉症はヒノキ花粉が終わるころの5月中旬くらいから始まります。原因植物種はハルガヤやカモガヤです。

カモガヤの花。(河川敷で見たことがある気がします。これがカモガヤだったのか…by編集部I)

カモガヤの花粉を見てみましょう。スギ花粉と同様に丸い形をしていますが、色がまったく異なり、灰色で表面はざらざらしているように見えます。

カモガヤの花粉

ほかにも、秋の花粉症の原因の一つのカナムグラの花粉は透明で、ボコボコと大きな穴があいたような形をしています。

カナムグラの花粉

このように、一つに花粉といっても色々な形があって、花粉のイメージである「黄色くてトゲトゲしていて丸い」だけではありません。むしろ、似ている形もありますが、植物種ごとにまったく異なる形をしていることがわかります。

ブタクサ=セイタカアワダチソウ!?

秋の花粉症の代表格であるブタクサですが、Google検索で「ブタクサ 花」で検索すると、ほとんどの画像がセイタカアワダチソウとして表示されます(検索結果のうち上から20枚の写真をみると、セイタカアワダチソウ13枚、ブタクサ2枚、クワモドキ(別名:オオブタクサ)3枚、その他2枚でした)。

ブタクサとセイタカアワダチソウの写真を並べてみましょう。

ブタクサ
セイタカアワダチソウ

並べてみると全然違うことがわかります。ブタクサは風媒花で、花の色が地味な緑色です。一方、セイタカアワダチソウは虫媒花で、黄色の花を咲かせます。開花時期はブタクサの方が少しだけ早く咲きます。せっかくなので、花粉の写真も並べて見てみましょう。

ブタクサ花粉
セイタカアワダチソウ花粉

ともに丸くて黄色ですが、ブタクサの花粉はトゲが丸くて、セイタカアワダチソウはトゲトゲしています。大きさはセイタカアワダチソウが一回り大きいです。

そもそも、ブタクサに対してセイタカアワダチソウは花粉症になりにくいです。ブタクサは風媒花で大量の花粉を飛散させます。一方、セイタカアワダチソウはブタクサと同じキク科ですが、虫媒花で空気中に花粉はあまり舞いません。むしろ、セイタカアワダチソウは晩秋まで開花するため、訪花性の昆虫に餌源として利用されています。

インターネット上でブタクサが間違えられる理由

どうして、ブタクサとセイタカアワダチソウが間違えられるようになったのでしょうか?

この2種は荒地などに同所的に生息するため、勘違いされたことが原因ではないかと考えられます。そして、間違った情報がまとめサイトなどに掲載されることで、正しくブタクサが認識されないようになってきたのではないかと思います。

ブタクサとセイタカアワダチソウをネットで検索するたびに、間違った情報が出てきてしまいます。ネットで広まってしまった情報は正しい情報を発信していくことでしか、正していくことができません。このような間違いは普通にあることですので、本記事を読んだ方も少しでいいので気に留めていただければと思います。

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著者
日下石 碧(にっけし・あおい)

1987年宮城県生まれ。神戸大学大学院人間発達環境学研究科で博士(理学)を修了。専門は送粉生態学。小学生の頃から花粉を観察し、昆虫や雌しべについた花粉の同定・計数をしている。


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