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「旅人からのギフト」というテーマを見て思い出したある離島にまつわる思い出

POOLOJOBの執筆課題に「旅人からのギフト 旅をする側の人間として、旅先に還元できること or やれることはなんだと思いますか?3つに絞って教えて下さい。」というテーマがあったのだけど、これがとても書きにくくて。

普段、旅先に貢献できることを考えてないわけではないけど、それはあくまで個人的な想いや経験に基づいていて、他の人にうまく伝えられないし。
いままでの記事は楽しさの提案なので書くのに抵抗はなかったけど、今回は「旅人は旅先にこうやって貢献すべし」みたいに他人の行動を規定するような表現になりがちなのも書きにくかった理由のひとつ。

そして過去の体験にもこのテーマに引っかかる理由があるのです。

10年以上前にある離島への移住促進のプログラムに参加したことがあります。
鹿児島県にある人口150人ほどの本当に小さな島。
実際に島にも行ったのですが事前研修も2,3回ありました。
島の方のお話を聞いたり、島で仕事を作るやコミュニケーションをテーマにしたワークショップもしたり。

当時はちょっとした移住ブームでしたが、いまの地域おこし協力隊のような公的に移住しやすくするような仕組みはまだあまりありませんでした。
それでも島のいいところだけを伝えるのではなく、様々な角度から島の現状や島で暮らすことを伝え参加者にも考えてもらおうというとても意欲的なプロジェクトだったと思います。

一週間後には実際に島に向かうタイミングでの事前研修最終回が終わり、主催者や参加者何人かで食事に出かけました。
参加者のひとりにある有名大学を卒業した20代半ばの女性がいました。
食事の席の雑談で、彼女に研修イベントの主催側の人と島での受け入れを担ってくれる方のふたりからこんな言葉が投げかけられていました。

「あなたはいい大学を出ていて島にはない能力をもっているのだからそれを生かして島に貢献しなくてはいけない」
「島の人が苦手な情報発信はまかせたい」
「島にあるものを活かした新しい事業を起こして欲しい」

発言した方の想いも充分に理解できます。
それでも……

彼女とは研修で何度かあっただけでそれほど親しいわけではありませんでした。
それでも、彼女に起業や広報といったジャンルでの経験も興味もないし得意でもないだろうことはなんとなく分かっていて。
むしろ、そうではなくて自分が手を動かす生き方をしたいので島への移住を考えていることも知っていました。

彼女は投げかけられる言葉に黙ってうつむいていました。
なにか言いたいことはありそうだけどうまく言葉にならないみたいで。
だからつい口を挟んでしまいました。

「彼女は農業や漁業をやるために移住するんじゃだめなんですか」
「いやそういうわけではありませんけど…」
「実際の島の生活を見る前から、そんなふうに間口を狭くするのはあまりいいことだとは思えませんが」
「…まあ、そうですね」

その後、2泊3日で島を訪れたあと、彼女は半年ほどお試しで島に移住して東京に戻った。
ぼくはしばらく悩んでいたけど、東京で暮らすことを選んだ。

もういちど言うけど、主催者側の言葉も充分に理解できる。
島に足りないもの、単純に人数だけでなく島にないものをもたらしてくれる人を呼び込むために手間暇とコストをかけてプロジェクトを立ち上げたのだから。

とはいえ、誰かが無理をしたり気持ちを押し殺すことでうまくいくものでもないよね。

島で企画を進めていた人とはその後も時々やりとりが続いた。
イベントで東京に来たときには出展のお手伝いをしたりも。
しかし移住して牧場を経営していたその人もやがて別の土地に移っていった。

2015年に島の火山が噴火した。
すべての島民が島の外へ避難した。
「この島では50年に一度くらい噴火があって、そのたびにいろんなものがリセットされる」
島を訪れたときの現地の人の言葉がリアルになった。

旅人が残すギフト。
じつはそのこのからずっと心に残っている。
訪れた土地の役に立ちたいし関係を持ち続けたいと思うのは確かだけど、それは純粋に「やりたい」という気持ちからきているのだろうか。
自分自身の心を覗きこんでもその答えは分からないけど。

今日も旅はつづく。

【参考】
ぼくが参加しようと思ったキッカケはこちらの記事。
それと当時通っていた起業スクールに島の方がいらっしゃってお話してくださったから。
たくさんの人が関わっていたプロジェクトだったけど思ったような結果が残せなかったことは参加した側としても残念なのは本当です。

https://shigoto100.com/beginning


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