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「金曜日の挑戦」について

株式会社文芸社の通信講座「小説創作で学ぶ 文章の技術」が行っている「金曜日の挑戦」。毎週金曜日、Twitter上で、小説から引用した一節のなかで伏字としている比喩表現は何かを考えていただく、という企画である。

2021年12月17日(金)現在、42回目を迎えた。何事にも飽きっぽい中の人がこれまで継続できているのも、フォロワーをはじめとして、ご参加いただいたすべての方々(挑戦者たち)のおかげである。この場をお借りして心より感謝申しげたい。

一部のフォロワーの方から「比喩クイズ」とも呼ばれている「金曜日の挑戦」であるが、その難易度はさまざまである。答えが拍子抜けするほどシンプルなときもあれば、挑戦者たちの阿鼻叫喚でリプライが埋め尽くされるほど難題なときもある。原文の比喩を言い当てた挑戦者には「That's right」という言葉をお贈りしているが、実はこの企画、言い当てていただくことを一義的な目的としていない。

当講座が考える文章作法において、「正しい表現」というものはない。「的確な表現」「適切な表現」はあるにしても、「正しさ」という概念は脇に置いている。言葉はつねに変化するものであり、またその変化が表現の可能性を押し広げると考えるからである。

この意味においても、「金曜日の挑戦」の原文(作家による比喩表現)は、唯一の正解とはいえない。出題した当日の18:00頃、「答え合わせ」という体裁で原文をツイートしているものの、作家の比喩を紹介するというニュアンスに留めたいというのが本心である。(「正解」ではなく「That's right」という抽象化した英語を用いている理由もここにある)

伏字の黒丸を中心として、衛星的に思考の軌跡を描いていただくこと。

挑戦者たちに、引用文のコンテキストや作家の文体を足がかりとして、あれかこれかと思案していただくことが企画の主眼であり、原文と符合するかどうかは二義的なことと考えている。そしてまた、その思案を通して作家の直喩的イメージの豊かさやユニークさ、意外性、工夫などに関心を抱いていただけたなら本望である。もちろん、Twitter担当者も毎週、勉強に励むつもりで出題していることを申し添えておきたい。

今夏、「金曜日の挑戦 特別編」と銘打って「比喩を使って桜が舞う様子を書いてみましょう」とお題を出したことがあった。プレゼント企画ということもあって、60以上の挑戦(リプライ)をいただいた。

挑戦者たちの文章を小冊子にまとめて当選者に贈呈したところ、思いのほかお喜びいただけたことや、その後、挑戦者たちにつながりが生まれたことを心から嬉しく感じた。来年、新たに特別編を開催できればと考えている。

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2022年1月、当講座の第5期がはじまる。「正しい文章」「正しい小説」の書き方を教える、ということはしない。受講生とのインタラクティブな関係において、ともに表現の可能性を探求することが当講座のビジョンである。

〈了〉



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