台所刑事(ゆふ)

クリアなスープと違い、チゲはアクも一緒に煮込む事で旨味が増す。
グツグツと煮えたぎる赤い汁を見ているうちに確信を持ち。携帯を手に取った。

「道明寺、被害者の子ども達の保育園を調べて。」
「深田さん、今何時だと思ってんすか!」
「朝の4時よ。チゲが出来たわ。」
「保育園て…なんなんすか。」
「確か妻は全員働いていたわ。すぐ調べて。」

携帯を切って、ガスの火を止める。
1分クッキングの収録に行く前に仮眠を取ろうと横たわったが、上手く眠られなかった。
と、携帯が鳴る。道明寺だ。

「ふ、深田さん!ほ、保育園、全員同じ‼︎」
「だと思ったわ…。道明寺、犯人はママ友よ。
保育園では、異文化業種の女が集まって、得意な分野を持ち寄るの。…確か妻たちは整形外科医、お掃除代行サービス、弁当屋だったわね。チゲのような旨味が…。死体全体がいつまでも出てこない理由、分かる?」
「ウ、オエッ!」
「そういうことよ。じゃあ後は宜しく。」

内科医、DJ、広告代理店。
一見何の関連も無いように見えた男たちの連続殺人事件は、私の推理によって、あっさりと幕を降ろした。
さあ、シャワーを浴びて収録に行かねば。

私の名は深田恭子。
1分クッキングの先生であり、
またの名を、台所刑事。

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