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新連載の解説――文学をボーダーから考える

 『文学+』のWEB版では、文芸批評に適度な速度――論文的な粘り強いものでも、SNS的な一過的なものでもない――を取り戻すこと、また文学のメタ言説を増やすことを目的としているが、それだけではない。さらに、商業メディアがカバーしにくい文学的なものをフォローすることも目的としている。そのために同人誌や地方誌を取り上げたいと考えているが、他に、文学のボーダーで創作や評論をしている文章を掲載することも積極的に行いたい。
 今回寄稿いただいたni_kaは、デジタルメディアを用いて詩を追及してきた作家である。その試みはこれまでモニタ詩やAR詩に結実し、詩の拡張という形でジャンルを問うものであった。
 文学は、たとえば純文学を例にしてみれば、文芸誌と文学賞がそれなりに完結したエコシステムとして機能しており、それゆえに文学的なものの縮小再生産のループを描くリスクをともなっている。それを批判的にとらえるには、ボーダーで何が起こっているのかを観測する必要がある。
 こんなことをいうと、ボーダーがメインストリームの植民地のような印象を与えるが、そうではない。そもそも、場合によっては物語以上に、語り方や私的言語に特化してきた純文学もまた、文学的なもののボーダーにあるジャンルであることを再認識しなければならない。
 ni_kaの記事は隔月(不定期)連載で、他の論者からの連載も予定している。ni_kaの詩論は、『文学+』の創刊号と2号――「女子的ウェブ文化とブログ詩の誕生」「AR詩、言葉の限界へ、ハローキティとともにわた詩は浮遊する――詩人であるための条件論」――で読むことができる。

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