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小噺①

一度手に入れた幸せを手放すことは耐え難い。ましてやそれが他人の手で為されるのならば尚更だ。

だが現実は非情だ。こちらの事情なんてお構いなしにやってきては奪い取っていってしまう。無力を嘆いても、非力を恨んでも、全ては無意味。涙がこぼれそうになるのを堪えて天を仰いだ。既に奴は点となり蒼空に消え去っており、必死に睨み付けても空しいだけだった。最後の一つだった鯖サンド、とても楽しみにしていたのに。

降谷白久

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