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  • 樋口一葉『にごりえ』現代語訳

    樋口一葉『にごりえ』現代語訳したものです。 現代語訳: 西東 嶺(さいとう みね)

最近の記事

芥川龍之介『食物として』 現代語訳

以下、本文です。 金沢の方言では、「うまそうな」というのは「太った」ということだ。例えば、太った人を見ると、「あの人はうまそうな人だ」などと言うらしい。この方言はちょっと食人族が使う言葉のようで面白い。 僕はこの方言を思い出すたびに、自然と僕の友達を食物として見るようになっている。 里見弴(さとみ とん)君などは皮造りの刺身にしたら、きっと美味しいに違いない。菊池君も、あの鼻などを椎茸と一緒に煮れば、脂っぽくて美味しいだろう。谷崎潤一郎君は洋酒で煮ると絶品の美味しさだと

    • 芥川龍之介『悪魔』 現代語訳

      芥川龍之介『悪魔』の現代語訳です。 芥川龍之介が、古い本に書かれてた話を紹介しています。 その話は、キリスト教の神父ウルガンが悪魔を捕まえたときの話です。 以下、本文。  神父ウルガンの目には、他の人の見えないものまでも見えたそうである。特に、人間を誘惑に来る地獄の悪魔の姿などは、はっきりと形が見えたと言う、――ウルガンの青い瞳を見たものは、誰でもそういうことを信じていたらしい。少なくとも、南蛮寺のイエス・キリストを礼拝するキリスト教徒の間には、それが疑う余地のない事実

      • 樋口一葉『にごりえ』 第八章 現代語訳

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        • 樋口一葉『にごりえ』 第七章 現代語訳

          主な登場人物 ・源七 ・お初 ・太吉 第七章は、再び、源七、お初、太吉の三人家族の話です。 第七章 思い出したところで、今さらどうにかなるものか。忘れてしまおう、諦めてしまおうと決意しながらも、去年の盆に二人で浴衣を揃えてお祭りに出かけたことが考えなくても何度も心に浮かぶ。盆になると仕事に出る気もなくなり、お前はそれではダメだと諌める女房の言葉が耳障り。 「ええ、何もいうな、黙っていろ」と横になると、「黙っていては、生活できません。体が悪ければ、薬を飲めばいい。お医者さ

        芥川龍之介『食物として』 現代語訳

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        • 樋口一葉『にごりえ』現代語訳
          8本
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          樋口一葉『にごりえ』 第六章 現代語訳

          主な登場人物 ・お力 ・結城朝之助 第六章は、お力が、父親・祖母・自身の過去などについて打ち明ける話です。 第六章 「十六日に必ず待ってます。来て下さい」と言ったことなんかも忘れ、今まで思い出しもしなかった結城朝之助に意外に出会ってしまい、アレと驚いた顔つきが普段の姿に似合わないその慌てふためく様子がいかにも滑稽で、カラカラと男が笑うのでお力は恥ずかしく、 「考え事をしながら歩いていたから、突然の出会いで慌ててしまった。よく今夜は来てくださりました。」 と言うと、 「あ

          樋口一葉『にごりえ』 第六章 現代語訳

          樋口一葉『にごりえ』 第五章 現代語訳

          第五章は、主に娼婦たちの赤裸々な気持ちが描かれています。 第五章 誰が「白鬼」という名付けたのか、無間地獄のような恐ろしい場所がそこには広がっている。どこにからくりがあるのか分からないけれど、逆さまに落ちる血の池や借金の針山に登ることが求められる。そんな場所から「寄っておいで」と甘い声が聞こえるが、それは蛇のように怖ろしいものだ。 それでも、母親の胎内で十カ月過ごし、母の乳房にすがって育ったこともある。紙幣やお菓子を取りに「おかしをおくれ」と手を伸ばす子供の可愛らしさもあ

          樋口一葉『にごりえ』 第五章 現代語訳

          樋口一葉『にごりえ』 第四章 現代語訳

          第四章の主な登場人物 ・お初: 源七の女房。28歳、29歳。 ・源七: お初・太吉という妻子がありながら、お力という情婦が忘れられない。 ・太吉(たきち): 源七とお初の子。「坊主」や「小僧」と呼ばれる。太吉郎とも。 第四章は、源七・お初・太吉の3人家族の話です。 第四章 同じ新開の町外れに、狭い路地があり、八百屋と床屋が並んでいます。雨が降る日は傘もさせないほど窮屈で、足元には落し穴がある溝板が所々にあります。両側に立つ長屋は、突き当りのゴミ置き場には、非常に狭い家の

          樋口一葉『にごりえ』 第四章 現代語訳

          樋口一葉『にごりえ』 第三章 現代語訳

          主な登場人物 ・お力 ・結城朝之助。結城: 男。お力いる店に通うようになった客。前章の第2章で登場。 第三章は、お力と結城のやりとりがメインです。 第三章 客は結城朝之助という人物で、自分が遊び人だと名乗るけれど、真面目で正直な部分が時々見えて、実際には無職で妻子もいない。遊ぶのに元気の良い年頃だから、これをはじめとして週に二、三度は通った。お力もどことなく心が引かれるのか三日も姿が見えないと手紙を出すほどの様子で、仕事仲間の女性たちは関係ない焼き餅ながらからかった。

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          樋口一葉『にごりえ』 第三章 現代語訳

          樋口一葉『にごりえ』 第ニ章 現代語訳

          第2章の主な登場人物 ・お力 ・結城 朝之助(ゆふき とものすけ) …… 男。名前が明らかになるのは、第3章。 第2章 ある雨の日の中、退屈そうに山高帽子をかぶった30代の男が、店の前の表の通りを歩いていた。 「あの男性を捕まえなければ、この雨で客の足が止まってしまう」とお力は駆け出して袂(たもと)にすがり、「どうしても行かせません」と駄々をこねた。 男は容姿端麗であった。普通ではない事情がありそうなお客を呼び入れて、二階の六畳の部屋で、三味線はなかったが、しめやかな物語

          樋口一葉『にごりえ』 第ニ章 現代語訳

          芥川龍之介『谷崎潤一郎氏』現代語訳

           私は初夏の午後、谷崎潤一郎氏と神田に散歩に出かけました。谷崎氏はその日も黒いスーツに赤い襟飾りをつけていました。私はその豪華な襟飾りから、ロマンティシズムを象徴しているような印象を受けました。しかしこれは私だけではありませんでした。通行人たちも、男女問わず私と同じ印象を持っていたようです。彼らとすれ違うたびに、誰もが谷崎氏の顔をじろじろ見ていました。しかし、谷崎氏はその事実を認めようとしませんでした。 「あら、君が見られているんだよ。そんな夏着じゃないから。」  私は確かに

          芥川龍之介『谷崎潤一郎氏』現代語訳

          樋口一葉『にごりえ』 第一章 現代語訳訳

          第一章の登場人物 ・お高、高ちゃん …… 銘酒屋「菊の井」の女性。ウデがなく、1人でもお客さんが欲しい。 ・お力、力ちゃん …… 銘酒屋「菊の井」で女性。ウデのある人気の女性。『にごりえ』のメイン人物。 ・源七、源さん …… 第一章では会話の中のみで登場。お力の元常連客。今は落ちぶれて金がない。 なお、銘酒屋とは、お酒をだす料理店と建前で表向き営業して、実態は女性を売っていたお店。 第1章では、銘酒屋「菊の井」ので働くお力とお高の2人のやりとりがメインです。 以下が本文で

          樋口一葉『にごりえ』 第一章 現代語訳訳

          芥川龍之介『あばばばば』現代語訳

          登場人物 ・保吉(やすきち) …… 主人公。教師 ・店主 …… 原文では主人。眇(すがめ)の主人。斜視。眇・斜視とは、黒目の方向が正面でない。若い眇の男性。 ・小僧 …… 店員。 ・女 …… 細君・途中から登場するメイン人物。 現代語訳: 西東 嶺(さいとう みね) 以下、本文です。  保吉はこの店の主人をずっと前から知っている。  ずっと以前から、――あるいは海軍学校に赴任した当日だったかもしれない。彼は、ふとこの店に寄った彼は、マッチを1つ買いに入った。店には小さい飾

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