樋口一葉『にごりえ』 第五章 現代語訳
第五章は、主に娼婦たちの赤裸々な気持ちが描かれています。
第五章
誰が「白鬼」という名付けたのか、無間地獄のような恐ろしい場所がそこには広がっている。どこにからくりがあるのか分からないけれど、逆さまに落ちる血の池や借金の針山に登ることが求められる。そんな場所から「寄っておいで」と甘い声が聞こえるが、それは蛇のように怖ろしいものだ。
それでも、母親の胎内で十カ月過ごし、母の乳房にすがって育ったこともある。紙幣やお菓子を取りに「おかしをおくれ」と手を伸ばす子供の可愛らしさもあ