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わが家の猫生活【その六十六/突然の別れ】

長らくご無沙汰してしまった「わが家の猫生活」シリーズ。モモちゃんが天にのぼり、娘3匹になったわが家の猫も、少しずつ歳を取っておばあちゃんになってきたところまで書いてきた。猫さまたちは、歳を重ねたら毛がバサバサしてきて、食欲があったり、なかったりと不安定になってきた。人間が歳を取るのとちょっと似ている。

書くか書かないか悩んで半年経ってしまった。今日は、ハナちゃんが天にのぼったときのことを書こうと思う。ただ天にのぼったという話でいいのかもしれないけれど、これまでずっとこのシリーズを読んでくださった方もいるので、すっ飛ばすのも嫌だなと思って。少し特殊な話になるため、メンタル弱っている人は飛ばしてください。

***

キョンちゃんとハナちゃんの母娘コンビは、相変わらず母がボスで、ハナちゃんはお気に入りのコンテナで丸くなってお昼寝するのが日常だった。モモちゃんがよく行っていた茶畑は目の前。ハナちゃんもたまに遊びに行っていた。

ある年の11月15日。
夜、姉が泣きながら電話をしてきた。
「ハナちゃんが、ハナちゃんが……」
涙をこらえながら、姉は事の顛末を話し始めた。

その日の夕方、ごはんの時間になってもハナちゃんが帰ってこない。母がいつもの調子で、庭に出て「ハナちゃん、ごはんだよー」と何度か呼びかけると、モモちゃんそっくりなあの声で「ガオーン」と鳴きながら茶畑から戻ってくるのが見えたという。

「どこに行っとんたん?」と言いながら、母がハナちゃんを目で追っていたそのとき、大きな犬がハナちゃんに襲いかかった。それは、近所の人が飼っていた猟犬で、猟で山に入った帰りだった。

猟犬が、猫を襲うことなんてあるの?
正直、私は悲しむより驚きの方が大きく、一瞬戸惑った。その猟犬は、同じ日に別の家の飼い犬2匹も襲ったということだった。このお宅の方が、警察か役所か分からないが、どこかに通報して集落の人たちの知るところとなった。

猟犬を集落で放し飼いにしているのは、田舎ではわりと「あるある」な話だ。今はわからないが。私も昔、山間部の集落を車で走っていたときに何度か遭遇し、「こんなところで放し飼いにしていいのだろうか」と思ったことがある。

***

ハナちゃん……。ただ母の声に反応して、茶畑から走って家に帰ろうとしただけなのに。

母はあまりのことに茫然となったが、やがてオンオン泣きながら、ハナちゃんを抱えて戻ってきたそうだ。猟犬は急所を突くので一撃だったようで、亡骸にひどい損傷(と言うのは辛いけど……)はなかったという。こんなに冷静に書いているけれど、何年も経った今でもやり場のない虚しさが込み上げてくることがある。事を大きくしたところで彼女が戻ってくるわけでもなく、わが家は静かにハナちゃんを埋葬した。最初の飼い主・隣人のヒロさんが眠る墓が見える、わが家の土地だ。

室内飼いではなかったので、事故に遭うことがあるかもしれないとは思っていた。でも、まさかこんなお別れがやってくるなんて想像していなかった。

当然、わが家は数ヵ月お通夜状態だった。

「しょうがないよ。どっちみち、おばあちゃん猫で、そう長くは生きられなかったんだから」と、何度も家族同士言い聞かせた。もしこのとき、一緒に暮らしていた猫がハナちゃんだけだったら、立ち直れなかったかもしれない。そのままナントカロスまっしぐらだったと思う。

ハナちゃんのごはんをいつも横取りしていた母猫のキョンちゃんは、しばらく落ち着きがなく、ソワソワしていたそうだ。娘がいないことに気づいたのだろうか。

こうして、わが家の猫さまは2匹になったのだった。今日はハナちゃんが旅立った日。あちらでガオガオ鳴きながら、モモちゃんと父子で遊んでいるかもね。


私のお気に入りショット。
写真を撮ろうとするとすぐに近づいてくるので、
なかなか撮れなかったハナちゃん。
いつもこんな具合(汗)でした……。

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