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そんな日のアーカイブ 毒杯

人間ドッグのなにがいやって、あのバリウム。なんとも気持ち悪くて。その前に飲まされる発泡剤もいやで。うっ!

台にのって横を向いてごくごくとゆっくりと飲んでください、といわれて、野上弥生子さんが言ってた「地獄の飲み物」を口にする。

ああ、この姿はソクラテスが毒杯をあおった姿に似てはいまいか、


という弥生子さんの言葉を実感した。

で、台の上で、七転八倒。あっち向け、とまれ!もうちょっと左。いきとめて。今度は右。行き過ぎ。戻って。今度は長くいきとめて。・・・死んじゃうって。

矢継ぎ早や、とはこのことか、と思いあんたのいいなりになんかなりたくない!とか言ってみたくなる。

そりゃあ、そっちの都合もあるだろうけどぐるぐる回らされると、目が回るのよ。で、左がどっちがわからんようになってしまうのよ。後生だから、もうちょっとやさしく言っとくれ。

弥生子さんもこんなふうにぐるぐる回されて、たいへんだったろうなあ。

心電図、超音波(これもいき止める)採血、胸と胃のレントゲン、血圧、脈拍、視力、聴力、肺活量、眼底検査、身長、体重計測、内診がセット、あとはオプション。

待って、呼ばれて、受けて、待って、呼ばれて、受けて・・・はあー。

ラウンジのソファに座って、見たこともないおじさんやおばさんたちと、何度も何度も顔合わせながら、声をかけることもなく、結局はどのひとも、知らないひとで終わる一日。当たり前のことなんだけど、なんだかそんなことに疲れてしまう。
 
まあ、ここまで生きてこられたのだから、どこかしら問題はあるわけで、それはそれでしかたないのだけれど、ああかもしれん、こうかもしれんという取り越し苦労に似た不安がいやなんだなあ。

検査は病気を見つけるためのもの。早期発見が鍵だといわれ、あおる毒杯。毒杯が病を知らせる。それもこれもみな長生きのため。ぐるぐる回る思考。

読んでくださってありがとうございます😊 また読んでいただければ、幸いです❣️