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「音楽プロデューサーとは何か」を読んで

浅川マキ、桑名正博、りりィ、南正人、イルカ。

そんな錚々たるビッグネームを世に送り出した音楽プロデューサー寺本幸司氏のこの著作は、克明なドキュメンタリーであり、長く深い想いの旅路であり、屹立した人生の断面でもある。

ひとと出会い、才能を見つけ、繋がり、響き合い、共に夢を追いかけていく。それは思いがけず転がっていく人生のサイコロの軌跡。

1960年代後半からこの国のなにもかもが劇的に変わっていくなか、音楽プロデューサーとして時代と切り結んでいく。

直感と美意識、時代を読み、才能を見抜く眼力。ひととの距離の縮め方、その親和力。真っ直ぐで力強いまなざしを持って、トラブルにあいながらもそこからまた何かをつかんで立ち上がる。

正確に記された日時、場所、人物名。半世紀以上も前のことなのだ、と気づくと、その鮮明な記憶こそが、かけがえのないひとたちに伴走し、濃密に生きた時間の証なのだろう、と思えてくる。

そして、その克明さのなかから、自分よりも年若い才能が自分より先にこの世を去ってしまった悲しみもまた立ち上がって来て、書き残すことへの強い意志が伝わる。




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