チラシ配りのうた 3
宅配便で配るべきチラシが届いた。その包みを手に取って、まあ重いこと!と驚く。千枚はあるな、きっと。こりゃあ、たいへんだあとちょっと血が引く。
ぺりぺりぺりとあけてみると、なかからB5サイズの黄緑色の紙が山ほど出てくる。うわあ、やっぱり、千枚だあ。
その紙には、赤やら濃い緑の字で、こう書いてある。
「売り家探しています。○○○3丁目から6丁目」
これくらいの土地で、とか古家があってもいいとか、道路は何メートル、とかこまごま条件が書いてあって、「査定します。秘密厳守」とある。
つまり、これを見て、ああ、うちも買い替えようかな、査定だけでもしてもらおうか、と思って電話をかけてくるひとがいたなら、それが例のリアクションてことなんだな、と納得する。
しかし、こういうB5のチラシ一枚にそんなちからがあるのかなあ、とも思う。どこでもポイポイと棄ててしまうんじゃないのかなあ。そしたら、リアクションなんてないじゃんかあ。
といいながら、まてよ、自分も同じようなチラシの裏側の求人に答えたのだったなと思い返す。チラシは表書きだけで、裏はなにも書いてない。もうチラシ配りの募集はしてないってことかな。リアクションなくて、わたしが首になったらまた募集するかな。
それでも、まあ、なんとなく、偶然、それを手に取るひともいるかもしれないくて、仔細に読むかもしれなくて、たまたまそうことを計画していたひともいるかもしれん、と思うことにしよう。
配布するべき町内の住宅地図が同封してある。手当たり次第に入れるのではなく。これを見ながら、1ブロックずつ確実に配っていくほうが残しがなくてかえって早い、と山崎さんは言った。
いったいどれくらいの戸建てがあるのかしげしげと地図を眺めた。何枚かの地図がテープで張り合わせてある。
自分のマンションを基点にして、視野を広げる。細い道に沿ってあっちむいたりこっちみたりする小さな家が密集している。いつも通る道の奥にこんなに家があるのだと知る。
その1軒1軒に全て氏名が書き込まれてある。が、それはなんと細かい文字だろう。老眼乱視の目には判読不能である。
ふっふっふっ。うちのプリンターはコピーも出来るスグレもの。拡大コピーすればいいのだ!。
大きくした地図をがさごそかき集めて張り合わせて、作戦を練る。効率的に配る策があるはずだ。3丁目から行って、6丁目に足を伸ばして・・・行ったことのない道を頭の中でたどる。
うーん、わたしは地図の読めない女であることを忘れてはいけない。向きを変えたらもうわからなくなるに違いない。迷子になるかもしれんぞ、とかも心配になる。
ま、やってみなきゃわからんさ。案ずるより・・・大変だったことは山ほどあるけど、まあなんとかなってきたじゃないか、と自分を励ます。
さても本日よりわたしはチラシを配るひとになった。チラシを配ってお金をもらう。つまり、ふふ、プロ!だあ。
読んでくださってありがとうございます😊 また読んでいただければ、幸いです❣️