スケッチ4
台湾の地下鉄の水色のプラスティックの座席に座った。
隣では若い女性が新聞を読んでいた。きりっとした顔立ちできびきびした感じだ。なんだか気になってついつい盗み見た。
新聞はむろん漢字ばかりだが、なんとなくわかるところもある。そのひとは経済のページをしげしげと見ていたが、その裏には美容欄とか家庭欄とかもある。
本の紹介の欄に漫画本のランキングがあり、そこに日本の漫画家である井上雄彦さんと弘兼憲史さんの名を見つけて、うれしくなった。
うれしくなってニヤけていたのか、そのひとに怪訝そうに見つめられてしまう。これはなんとも。言葉が通じないので、ごまかしようもなく、いかんともしがたい。
気まずいなか、しばらくしてそのひとの携帯が鳴った。
慌てて新聞をわさわさと畳んで早い口調で話し始めるが、どうやらそのひとの降りる駅に付いたらしく、新聞を脇に抱えて席を立った。
が、出口近くで抱えた新聞がばさりと落ちてしまった。
あっと思って見ているとそのひとは平然と携帯で話しながら、ハイヒールを履いた足でその新聞をずるずると外まで引きずっていった。
そこまで見たらドアが閉まった。
読んでくださってありがとうございます😊 また読んでいただければ、幸いです❣️