漫才 「力士と結婚したい」

「この世で一番薄着かつ一番強い人と結婚したいんです、私は。」

「あらコロッセウムで出待ちしてる方?」

「いやあんまり彫り深い顔の人は好みじゃない」

「あー剣闘士は軒並み非塩顔だからね。あなたが結婚したいのはどんな人なのよ。」

「お相撲取りさん。薄着、塩顔、強い全部揃ってるんだから」

「力士ね。古参ぶるなら力士呼びした方がいいよ」

「相撲の古参って蘇我蝦夷をトリオ時代から推してるおばあとかだよ?無理すぎ」

「蘇我は基本ピンなのよ。小ボケ担当が長らく歴史に名を残す訳ないんだから」

「稀に見る天才だったんだろ、蘇我が。とにかく私は力士と本気で結婚したいから一緒に作戦を考えてほしいの」

「いいんだけどさ、力士と結婚するっていうのはそう簡単じゃないと思うよ?」

「立教医科歯科にはいかないってわけね」

「私大国立大の順番で一朝一夕みたいなこと言わないでください。力士と結婚願望があるなら力士と仲良くなる必要があるよね」

「やっぱりまずは土俵入りかなあ」

「それはハードル高すぎるって。キレて砂まみれにされて終わるだけだから。そうじゃなくてすごく若い力士と友達になったらどう?」

「わんぱく相撲のタニマチになるってこと?」

「あなたの恋愛対象年齢にもよるけどショタコンと呼ばれる覚悟はある?」

「ツチノコくらいは」

「幻ほどの覚悟ならやめときな。同い年くらいの人と友達になればいいじゃん」

「え、私LDH系とか無理だよ?」

「ティーンの力士はEXILEにかぶれてないのよ。一昔前の野球部じゃないんだから」

「そうなんだ、安心したわ。じゃあ私が相撲部のある高校で女子高生やるからあなた相撲部員やってよ。練習しときたいから」

「りょ。」

「チャラいなー、LDHじゃん。力士なら力士らしく了解ごわすって言ってコントインしてよ」

「この女おもんないですねー」

「ふぅー、力士目当てで山2つ越えなきゃなんない高校来たけど全然力士に会えないなー。あれ?力士じゃない?すみません力士ですよね?」

「自分、相撲部でごわす」

「うわぁ甚しく力士だー!こんなに力士な人初めてですー!」

「あんまり力士を形容詞的用法しないでほしいでごわす」

「私、実は力士なら誰でもいいんですけどー」

「いきなりでごわすね。気持ちがいい。」

「ええ、せっかく力士に会えたんですから言っとかないと」

「因みに自分、四股名が炊飯なんすけど…」

「全然いいです。最悪右翼とかでもいいです」

「あと、まだ髷が結えてなくて…」

「どうでもいいです。逆にお下げが似合う力士とか萌えません?」

「見ての通り自分は坊主っすけどね」

「本当に私は強い力士だったら誰でもいいんですよ。暴飲暴食酒池肉林何でも許しますし」

「三大欲求は大いに満たせそうでごわす」

「睡眠だけはあんまり許せませんけど」

「競技のためを思ってそこを何とか」

「そこだけは譲れないんです、すみません。」

「むにゃむにゃ相撲取るのはほぼ死を意味してるでごわすよ?」

「あと実を言うともうちょっと痩せてほしいとも思ってます。ごめんなさい。」

「…ちょっとちょっと!炊飯がぎゃん泣きする前に一回止めるわ。力士と結婚したい女にそんなわがままを言う権利はないのよ」

「え、力士って自堕落ゆえのあのフォルムだと思ってたから戒めとして言ったんだけど」

「あれがベスト体型でありアイデンティティなのよ、力士にとって。勝手に戒めないで?」

「そんなー。じゃあ私力士じゃなくて蘇我氏と結婚したい。」

「そうしなよ。では、今から蘇我氏の近付き方を考えるので一旦やめさせていただきます」

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