漫才 「パンを食べてたとき」

「お気に入りのパンを食べてたときの話をするんですけど」

「お気に入りのパンって何なんです?」

「クロワッサン」

「あークロワッサンパンね」

「そう。その日はいつものようにクロワッサンパンに縦に2つ切れ込みを入れまして」

「ぼろっぼろになるわな」

「私の言うクロワッサンパンは世間では食パンということになってるから大丈夫」

「そっちか。コッペパンの前提で話してましたわ」

「気分によるんだけどね。で、その切れ込みにマーマレードとマーガリンを塗ると」

「マーマレードジャムと味のある油脂ね」

「うん。このマーマレードジャムを一旦放っておくんですけど、カピカピになっていって約3分後ですかね、完全に乾ききった時点を飽和乾燥点と呼ぶんですけども」

「ドライマーマレードジャムとも言います」

「学名はそうなんですよね。でも、この日は飽和乾燥点を過ぎても放置したらどうなるのかなと思いましてね。ほんの出来心だったんですけどもやっぱり緊張しまして、それでも一応記録だけは取らないといけないと」

「クロワッサンパンの動向の模写を始めたんですか?」

「そんな野暮なことはしないですよ。グラフを描きましてね」

「円?棒?線?」

「全部」

「形容するなら猛者ですわ。それで結果の方はどうなったんです?ここからはノーカットで聴きたいんですが」

「まず結論を言いますとね、大きな生命体と化すんですよ」

「それはクロワッサンパンと乾燥マーマレードジャムと味のある油脂が一体となって口に入れたときの風味がすごいとかそういう類いの?」

「いや生命体と言ったら語弊があるのかもしれない。共同体と言いますかね、感情的なところで両者が繋がりを築くんですよ」

「倫理的なことか。時間軸で辿っていくとどうなるんですか?」

「3分半過ぎた頃から10秒毎にマーマレードジャムから新芽が出てきてパンに根を張り始めるんですよ。うちの飼い犬のラッキーがこれにミルク溢したら最終的に各々鷲のマークの緑黄色野菜となりましてね」

「ラッキーちゃんのスポンサーは大正製薬なんですかね」

「どうなんでしょう。で、味のある油脂は3分過ぎたらすぐにクロワッサンパンと音を立てながら化学反応起こしまして」

「ちなみにどんな音?」

「ジュージューみたいなのかなと思ってたら意外にもエルモの足音みたいな。ペタン、トン、ペタン、トンという感じですね。で、飽きずにずーっと見てたんですけど丁度5分後に窓から青い人参が炎を出してカロテン!カロテン!と言いながら飛んできて」

「高温で自らの栄養素を誇示する人参ですね」

「そうなんです。厄介な奴だと思いながらそちらに気を取られていたら10秒後クロワッサンパンが具無しナポリタンになっていたんですよ」

「炭水化物と脂質の成れの果てね。それをあなたはどうしたんですか?」

「諦めて、緑黄色野菜を切り刻み具無しナポリタンに放り込んで具有りナポリタンとして美味しくいただきました」

「美味しくいただいたとのことなので一旦やめさせていただきます」

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