見出し画像

青柏祭中止をうけて、能登の祭りについて思うこと

今回は、能登の祭りが住民にとってどのような存在なのか。思うままに書き連ねます。


【ひとつの俳句から考えること】

帰る気になかなかならず山車に従き
稲畑汀子

石川県七尾市の小丸山城址公園に、
この句碑が建っている。

高浜虚子の孫で「ホトトギス」名誉主宰の稲畑汀子さんが七尾市を訪れた際に読んだ句。


おそらく石川県民以外は、
山車を「だし」と読んだであろう。
私も去年まではそう読んでいた。

普段見慣れない巨大で彩りな山車が街中を巡行している様子が楽しくて、
その雰囲気から離れられず、
なかなか帰る気になれない。そんな一句。

七尾市の青柏祭の「でかやま」に惹かれ、
彼女は「山車」を「やま」と読んだであろう。


災害・観光・食・祭り・暮らし・ふるさと

最近は古書を開いて歴史家活動をしているので、
つくづく思うのは、
「災害・観光・食・祭り・暮らし・ふるさと」
は一体であるということ。

特に能登は災害の伝説・逸話が多い。
それだけ過去の人が後世に伝えたかったのだと思う。
(もちろん、生贄や男女差別の話もたくさんある。)

囲炉裏のそばで近所の人と集まって藁を揉みながら、
ばあちゃんたちが孫を抱えながら話す内容は、
ちょっと怖くて、暗い。


科学的なエビデンスは無いかもしれないけど、
今日この日まで語り継がれてきた先人たちの知恵を、
今こそ借りる時なんじゃ無いかと思うのです。


海であばれて海岸沿いの家々を飲み込む大タコ、
家々をなぎ倒す大蛇、
黒々とした猿鬼や、天狗に、河童に、龍。
そんな風にして、
孫が怖がりそうな化け物や妖怪にすることで、
囲炉裏を囲みながら、
何世代も語り継がれて来たんだと思う。


見方の違い


妖怪や伝説は見方によっては「観光資源」となり、
「災害」の記憶でもあり、
飢饉や旱魃や厳しい自然環境を生き抜く「食」となり、
魂を沈める社と「祭り」であり、
「まちづくり」とコミュニティの軸であり、
「ふるさと」の記憶。



青柏祭の過去の伝記


今回は、
青柏祭が開催出来なかった過去の伝記を紹介。

青柏祭のそもそもの成り立ちは、
Wikipediaに載っているのもは石川縣鹿島郡誌の内容と相違ないです。
3猿としゅけんの話です。

「災いを沈める」ために、祭りを開催するのです。


「黄金の山」
出典:石川縣鹿島郡誌(昭和3年発刊)を一部意訳しています。

 旧幕府時代、七尾町においては、府中町に貿易上の特権を与え、郡奉行の御印の使用を許していた。
 また鍛冶町には能登一国の鍛冶職の特権を、
 魚町には漁業ならびに販売上の特権を許していた。

しかるに山王社(現在の大地主(おおとこぬし)神社)では、毎年4月中頃の申の日を中日として三日間祭礼を行い、以上の三ヶ町(府中町・鍛治町・魚町)は曳山(山車)を作って、山王社に集り、その後、小丸山山麓にある郡奉行所の前に集合して、御代万歳を唱え祝した。
この行事が終わると納税を免じられたという。

 かつて七尾に大飢饉があって人々が困憊の極みに達した時があった。

そのため三町の人々は、山車の催しを行う力がなくなるほどになったが、しかし山車の催しを行わないことには営業上の特権を奪われてしまう恐れがあるので、鳩首凝議したが、日々空しく過ぎるのみで、いい策が浮かばなかった。

たまたま出羽本間家(現在の山形県)の年貢米上納のための御用船が寄港し、船長は七尾町の窮状を見て、

「糊口を凌ぐことさえできれば山車を作ることが難しくない」旨を聞き、
独断で町民に飯米を給与し、祭礼を行わせた。

 このようにして上米船は、山車の組み立てが起こなわれるようになったのをみると、数日にして順風に碇を上げて、帰国の途についた。

小口の瀬戸を出て、穴水町の兜沖に至る頃、
追い風が急に向かい風に変じて進むことができなくなってしまった。

止むをえず船を岸に近づけるよう向きを転じると、遥かに黄金を打つ音が聞こえてきた。

いぶかしき事だなと思ってその音のするあたりを探してみると、これはこれは、どうしたことであろうか、

山のような黄金が波打ち際に燦然と輝いてあるのであった。

船長は天の惠と非常に喜んで水夫に指図して、そのその黄金を船に運ばせるけれども、採っても採ってもなくならないのであった。

そのうち東の暁闇の頃になり、ふとみれば不思議や不思議、黄金の山はいつしか肌黒い土の山に戻ってしまっていた。これは兜村の銭塚であるといいます。

 船長は、山王社を伏し拝みながら、山のような黄金を運び、順風に帆を孕ませて航海を続け、難波を経て奥州出羽に帰り本間家にその黄金を奉ったといいます。

さいごに

災いが起こったときこそ、祭りをすべきです。
以上。ここまで読んでくれてありがとうございました

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?