オボ・ラクト・ベジタリアニズム、がんもどきの倫理、画像生成AIのトレーサビリティ
あまり手間やお金をかけずにタンパク質や食物繊維などを取れるように家では納豆ご飯、豆腐とワカメの味噌汁、目玉焼き、野菜と煮豆のサラダあたりの食事を食べることが多い。ヨーグルトも好きだし、ホエイ由来のプロテインも飲む。
このような食事はオボ・ラクト・ベジタリアニズムと言い、割と一般的な様式らしい。まだ「命」になってさえいないなら動物性タンパク質を取り放題なので、栄養学的な問題はほとんどない。
だけども味噌汁の出汁に煮干しが使われているし、納豆のタレやサラダのドレッシングなどにも動物性の材料が含まれており、うま味成分のために命が奪われている現実もある。
宗教的な戒律が厳しい外国人が来日するときつねうどんやたぬきうどんを食べがちだと聞く。
小麦と大豆が主成分なので確かに様々な宗教的戒律に適応できるし、アレルギー的な問題も起きにくい。これもヴィーガンの観点だと出汁の鰹や煮干しはどうなんだという問題がないわけでもないが、出汁は魚自体を食べているわけではないからそこまで強い信念がない限りはノーカンと思う人もいるらしい。
多様性は前提としても、うま味成分だけ取られて身を食べてもらえない命の取り扱い。僕自身としては出し殻になった煮干しを炊き込みご飯の具材にした「いりこ飯」を作ることがある。まだまだ出てくるうま味とほろ苦さ。栄養的にもカルシウムやタンパク質が取れて申し分ない。
そんなことよりも、「きつね」や「たぬき」が良いのかって話もある。本当にきつねやたぬきを材料に使っているわけもないから愚問だけど、雁の肉が食べたかった坊主が代用品として考案した「雁もどき」については、「ぜんぜん煩悩を断ち切れてないじゃん!!」となる。
その辺は昨今の技術的進歩によって本物の肉にしか思えないような大豆ミンチ肉にも感じたりもしていて、どういう理由で肉を食べないのかに対する思想の整合性問題はなかなか面白い。
閑話休題。画像生成AIにおける学習元のトレーサビリティが問題になっていくとも感じている。
わかりやすいところとしては絵柄などの話になっていくのだけど、それはあくまで収益分配の話であってエシカルさの観点で問題となるのは、児童ポルノや公然猥褻などに属する画像の学習データが本当に違法性のないものだったのかというものだ。
公然猥褻については、ディペイズマンによるものだから単純な背景合成でなんとかなる気もする。どう見ても秋葉原駅の周辺で顔出しのコスプレイヤーが露出している動画が掲示板などで話題になっていたこともあったが、本人の逮捕リスクを含めて最悪なデジタル・タトゥーではある。そういう画像や動画が適法的に生成可能になっていくのは一部の性癖の人々にとっては福音なのかもしれない。
それでも、児童ポルノについては、なんらかの学習元が存在している。AIモデル自体は適法な絵を参照しているにしても、その絵は完全な想像だけで描けるものではなく、元になった画像の元になった画像と最後までたどっていけば違法性のある画像を誰かしらは所持(脳内保存を含む)していたという話になってしまう。それは味噌汁の出汁であって生身の人間ではないのだからこそ被害を訴えることさえできない。そもそも「精度が高すぎる」と思って消費すること自体にも倫理的な問題がある。
きつねうどんやたぬきうどんのように元の材料には一切含まれていないと言い切れる程度の精度の合法公然猥褻や合法ロリに対しては、被害者のいない非実在青年なのだから規制するな!と思えるが、そこで満たされる煩悩が限りなく本物に近くなったり、学習元を辿っていくと何もないとは言い切れない画像や動画について、どのような態度で接するのかは難しい。それについては「多様性」ではかわせないのだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?