見出し画像

時の面影 を観た

1/29からNetflixで配信された『時の面影』を観ました。

レイフ・ファインズ主演で、キャリー・マリガン、リリー・ジェームズが共演。監督はサイモン・ストーン。

舞台は1939年の第二次世界対戦前のイギリス。
大富豪の未亡人のプリティ(すげー名前)が自分の土地にある墳丘墓の発掘を、アマチュアの考古学者のバジル・ブラウンに依頼するところから物語は始まる。

とにかくキャリー・マリガンが大好きなので観た。そういう人は多いと思う。『ドライヴ』でも『シェイム』でも最高だ。
主演のレイフ・ファインズはヴォルデモートよりもお爺ちゃんだった。

で、今作は世界が第二次世界大戦へと進みきな臭い匂いを増していく中、遺跡の発掘を通して、この映画を観ている人々の心に一人の男が発掘される話を描いている。その男はアマチュアの考古学者のブラウンである。彼はもう六十も半ばだろうが、地元の博物館でめっちゃ安い金額で仕事を引き受けて、シコシコ働いている男です。たくさんの経験はあれど、大きな功績はない。こういう人は、たくさんいる。宮沢賢治も、石川啄木も、中原中也も、フィンセント・ファン・ゴッホもそうだろう。

物語の途中、どうやらこれはすごい発見だぞと大英博物館が乗り出してきて、めちゃくちゃ横柄で権威のあるデブ考古学者が出張ってくるんです。そんで案の定手柄を横取りされそうになる(ていうかされる)んですが、その時、ブラウンが奥さんに対して、「俺は何年も土をいじくってきたんや!土のことなら何でもわかるんや!」と自らの矜持を吐露するシーンがあるんですが、熱くて良い。そう、あんなデブに負けるわけにいかない。

彼は30年を超える年月、発掘をしてきた男ですが、大きな評価はないわけです。ただのアマチュアとして、誰にも顧みられることはありません。
そうして、この『サットン・フー』というイギリスの重要な遺跡の発掘の功績の光が当たるのが2009年頃だというわけですから、半世紀以上、彼自身、時の狭間に埋もれていたわけです。
序盤、彼が発掘中に事故で崩落に巻き込まれて、土に埋まるシーンがあります。助けに来た皆がブラウンを掘り起こすシーンがあるんですが、この映画は、そういう意図があるんだろうなと思います。ここはいいシーンです!
しかし、土に埋もれてるシーン、耳に土が入って大変そうだ、なんか詰め物してるのかしらと、それが気になって集中出来ませんでした…(Netflixだとついついながら観しちゃうし…)。

そして、この『サットン・フー』の遺跡の中で掘り起こされる、墓と推測される舟が出てきますが、死者を乗せる舟といえば、黄泉の国への旅路が想起させられます。夫を亡くしたプリティ夫人は体調が優れないこともあるけれども、いつも、死にたそうな面持ち。どこかこの舟に乗って、自分も黄泉の国へ行きたいとでもいうような風情で、その辺りが心を打ちます。そうして、黄泉の国への舟といえば『ファーストマン』が思い出されて、泣けました。エンディングで出てくる宇宙もまたそれに繋がりとてもきれい。

世の中には、すごい人がいっぱいいると思う。私は個人的に現代アーティストとかも好きなので、色々な方の作品を観ているが、この人他とは違うなと思う、そういう評価されていない人もたくさんいるし、それはいずれの分野でも同じだと思う。
この世界に、宝石のような人間がどれほど転がったままなのだろうか。

結構いい映画でした。キャリー・マリガン最高でした。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?