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ブルーピリオドとヒカルの碁


今大注目の漫画、『ブルーピリオド』は東京藝術大学を舞台に(正確にはその入試から始まるわけですが)、した作品です。
先日、単行本の8巻が発売されました。
美術を題材にした漫画はそれほど多くはないと思いますが、その中でも突出した売上、話題になっている漫画です。

美術に興味の無かった高校生二年生の矢口矢虎が、授業で描いた1枚の絵を通して、美術藝術の世界に引き込まれ、日本最難関の藝術大学、東京藝大を目指す、という導入で物語ははじまります。

私はこの漫画を読んでいて、『ヒカルの碁』を思い出しました…(全く的外れかもしれません…)。
 それは、全く未知の世界である美術=囲碁の世界を知り、その最難関である東京藝大を目指す=囲碁のプロ棋士を目指す、というあたりもそうなのですが、この漫画も目指す世界、フィールド・ステージが変わると、知り合い関係って大きく変わっていくよねって漫画なんです。
その点がすごく『ヒカルの碁』ににてるなぁと…(そんな漫画、いっぱいありますけど笑)。そういう展開がとても好きなんです。

『ヒカルの碁』も囲碁の世界ですが、部活仲間から院生、そしてプロと自身の成長で関わるキャラクターが刷新されていきます。だんだんその世界の高みに近づいて行く。この漫画もそうで、矢虎の関わる人間がだんだんと変わっていきます。
もちろん、友人は友人として登場はしますが、彼と深い関わりをする人物が予備校生になって、藝大生になって、巻を経るごとに変わっていく。

ただ、個人的には『ブルーピリオド』は6巻までの試験編がピークのような気がしています。それは、やはり目的が明確であること、主人公の成長が著しく感じられ、読んでいて高揚感がある、その2つの大きな魅力があるからです。

読者のほとんどは初期の矢虎と同じ素人の目線なわけですから、よくわからない美術の世界、藝大試験の疑似体験という点で、非常に訴求力の高い巧みな作りになっている作品だと思います。だからこそ、合格さえしてしまえば、王道漫画として道しるべは消えてしまうのです。スパンは短いですが、『ヒカルの碁』のプロ試験編がもう終わってしまった感じです…。
今後、自分の作風、作品と向き合う『矢虎の絵』的な話になっていくとは思うのですが、美術は正解もないので、より難しい展開に入って行くとは思うのですが、相変わらず面白いので、今後もますます楽しみです。

この作品の白眉は5巻、海辺の民宿で自身の裸を描くシーンです。
このシーンは本当に素晴らしくて、芸術的で文学的だと感じました。


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