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宇宙論の教科書

総研大の天文学専攻が大学院生に薦める天文学のテキストがまとめられたウェブサイトがある。どれも名著ばかりで素晴らしいテキストの数々である。

しかし、こちらで紹介されているテキスト、大学院で初めてその分野を学ぶ人向けかと言われると、そうではない気もする。特に私が専門の宇宙論に関しては難易度の高いテキストが並んでいる。ということで、私の独断と偏見で、大学院で宇宙論を学び始める学生にお薦めするテキストを何冊か紹介したい。

まずは、最近刊行された、辻川さんの「入門・現代の宇宙論」である。宇宙論を学び始める人はまずは一般相対性理論を学ぶものだが、こちらのテキストは一般相対性理論を前提としない。内容は膨張宇宙からビッグバン、CMB、大規模構造などの話題がコンパクトにまとまっている。

次は、松原さんの「現代宇宙論:時空と物質の共進化」だ。おそらく、日本で宇宙論を学ぶ学生の多くがお世話になったのではないか?CMBや大規模構造の話が包括的にまとまっていて、標準的な宇宙論の教科書である。

同じ松原さんの教科書でも、以下の2冊はレベルが高いが、より宇宙論を物理的に学びたい意欲的な学生にオススメのセットである。

宇宙論の中でも特に宇宙マイクロ波背景放射(CMB)に焦点を当てた教科書としては、この分野の世界的第一人者だる小松さんの教科書がオススメ。CMBの物理が詳しくまとめられている。

副読本として、これまたCMBの理論的研究の第一人者の杉山さんの以下の本はCMBの物理がコンパクトに纏まっている。

宇宙の大規模構造を取り扱った本は松原さんの「大規模構造の宇宙論」。初期宇宙で生成された揺らぎが、いかに現在の宇宙に進化してきたかを学ぶことができる。

ここまでは、日本語で読める宇宙論の教科書を紹介してきた。宇宙論の様な専門的内容を日本語で学べる事は大変ありがたい話である。ここからは、洋書を紹介する。

宇宙論の入門としてハードルが高くない教科書はBarbara Rydenの教科書。私の出身の宇宙論研究室では大学4年生がこの本を使って輪行をやっていた。こちらは最新の翻訳版もある。

私が宇宙論を最初に学んだテキストはDodelsonの「modern cosmology」だ。特にCMBのゆらぎ計算が丁寧で、自分で手を動かして計算しながら読み薦める教科書としてはこの本が一番読み進めやすいのでは?初版では構造形成の話が薄かったが、第2版ではかなり増補改訂されており、宇宙論のテキストとして標準的な内容となっている。

Weinbergの「cosmology」も宇宙論の標準的教科書としてよく読まれているが、個人的にはクセが強めで難しかった。こちらは小松さんによる日本語訳もあり。

同じWeinbergでも「Gravitation and cosmology」は1970年代の古い本であるが、特に一般相対性理論の部分で学びが多く、大学生の頃に自主ゼミで読んだ。

ちなみに、私の専門の遠方宇宙の宇宙論的構造形成は、以下の2冊がオススメである。

以上で、個人的にオススメな宇宙論のテキストの紹介を終える。宇宙論を学び始めようとしている大学生・大学院生の参考になれば幸いである。

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