"General theory of relativity"(Dirac)を読む14
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Chapter14は``Ricci tensor”。ようやく一般相対性理論を理解するための数学的準備が終わる。
$${R_{\mu\nu\rho\sigma}}$$の2つの添字を縮約する。反対称な添字で縮約を取ると、結果は0になる。一方、その他の添字の場合、式(11.4)、(11.7)、(11.8)という対称性のため、結果は符号の違いを除いて同じとなる。
今、最初と最後の添字について縮約を取って、
$$
R_{\nu \rho \mu}^\mu=R_{\nu \rho}
$$
と置くことにする。これをRicci tensor(リッチテンソル)という。式(11.8)に$${g^{\mu\sigma}}$$をかければ分かる通り、リッチテンソルは対象である。
$$
R_{\nu \rho}=R_{\rho \nu} .\tag{14.1}
$$
さらにもう一度縮約して
$$
g^{\nu \rho} R_{\nu \rho}=R_\nu^\nu=R
$$
を得る。この$${R}$$はスカラーであり、スカラー曲率、全曲率と呼ばれる。これは三次元の球面に対して正となるように定義されている。
ビアンキの恒等式(13.4)は5個の添字を含む。そこで、縮約を2度行い、ダミーでない添字を1個持つ様にしてやる。$${\tau=\alpha}$$と置き、かつ$${g^{\mu\rho}}$$をかければ、
$$
g^{\mu \rho}\left(R_{\mu \rho \sigma: \alpha}^\alpha+R_{\mu \sigma \alpha: \rho}^\alpha+R_{\mu \alpha \rho: \sigma}^\alpha\right)=0
$$
あるいは、$${g^{\mu\rho}}$$は共変微分に対して定数とみなすことができるので、
$$
\left(g^{\mu \rho} R_{\mu \rho \sigma}^\alpha\right)_{: \alpha}+\left(g^{\mu \rho} R_{\mu \sigma \alpha}^\alpha\right)_{: \rho}+\left(g^{\mu \rho} R_{\mu \alpha \rho}^\alpha\right)_{: \sigma}=0\tag{14.2}
$$
となる。
さて、計量テンソルを用いて曲率テンソルの上付き添字を下付き添字に下げてやり、さらに式(11.8)を用いると、式(14.2)の第一項は
$$
\begin{aligned}
g^{\mu \rho} R_{\mu \rho \sigma}^\alpha & =g^{\mu \rho} g^{\alpha \beta} R_{\beta \mu \rho \sigma}=g^{\mu \rho} g^{\alpha \beta} R_{\mu \beta \sigma \rho} \\
& =g^{\alpha \beta} R_{\beta \sigma}=R_\sigma^\alpha
\end{aligned}
$$
の共変微分となる。第二項、第三項もそれぞれ縮約を取ると、
$$
R_{\sigma: \alpha}^\alpha+\left(g^{\mu \rho} R_{\mu \sigma}\right)_{: \rho}-R_{: \sigma}=0
$$
となる。あるいは、第一項と第二項でダミーの添字に注意すると、
$$
2 R_{\sigma: \alpha}^\alpha-R_{: \sigma}=0
$$
である。これはリッチテンソルに対するビアンキの恒等式である。添字$${\sigma}$$を上げれば、
$$
\left(R^{\sigma \alpha}-\frac{1}{2} g^{\sigma \alpha} R\right)_{: \alpha}=0\tag{14.3}
$$
となる。リッチテンソルを具体的に書き下してやると、式(11.3)より、
$$
R_{\mu \nu}=\Gamma_{\mu \alpha, \nu}^\alpha-\Gamma_{\mu \nu, \alpha}^\alpha-\Gamma_{\mu \nu}^\alpha \Gamma_{\alpha \beta}^\beta+\Gamma_{\mu \beta}^\alpha \Gamma_{\nu \alpha}^\beta \tag{14.4}
$$
であるが、第二項以下は明らかに$${\mu,\nu}$$に対して対称であるが、第一項はそうではない。第一項が対称であることを示すには、多少の計算が必要である。
行列式$${g}$$を微分するには、行列の各要素$${g_{\lambda \mu}}$$を微分して余因子$${gg^{\lambda \mu}}$$をかければよいので、
$$
g_{, \nu}=g g^{\lambda \mu} g_{\lambda \mu, \nu}\tag{14.5}
$$
したがって、クリストッフェル記号の定義式(7.5)より、
$$
\begin{aligned}
\Gamma_{\nu \mu}^\mu & =g^{\lambda \mu} \Gamma_{\lambda \nu \mu}=\frac{1}{2} g^{\lambda \mu}\left(g_{\lambda \nu, \mu}+g_{\lambda \mu, \nu}-g_{\mu \nu, \lambda}\right) \\
& =\frac{1}{2} g^{\lambda \mu} g_{\lambda \mu, \nu}=\frac{1}{2} g^{-1} g_{, \nu}=\frac{1}{2}(\log g)_{, \nu}
\end{aligned}\tag{14.6}
$$
となり、式(14.5)の第一項も対称であることが示せた。
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