「新規事業の予算の取り方について考える」
こんにちは。Buildサービス推進チームのMorihiroです。いまでも多くの企業における新規事業企画およびその予算取りの進め方は、以下のようになっているケースが多いと思います。
1.新規事業のアイデアと企画の中身を考える
2.新規事業を開始するために必要な初期投資額を見積もる
3.新規事業の市場規模を推測し、将来の売上を見積もる
4.以上の検討結果を事業企画書を予算権限を持つ人にプレゼンテーションして予算承認を取る
何をやっても今より遥かに高い確率でそこそこの成功を得られたであろう高度経済成長時代ならばこれで良かったのでしょうが、今の時代においてこのやり方にありがちなのが以下のような展開です。
1.机上でアイデアを考えても、たいていは誰でも考えつくアイデアか、現実と乖離した妄想しか出てこない
2.それを本当に完成させようとすると「売れるかどうかわからないのにこんなに投資しないといけないの」と恐ろしくなるような初期投資額が出てくる
3.初期投資額を正当化する売上計画を一生懸命考えて書く
4.「本当に売れるのか?」と追及されて予算承認取れずに終わる
今の時代の新規事業への取組みにはこれとは少し異なるアプローチが必要ではないかと言うことを考えています。
A.企業として、組織として「新規事業創出に向けた試行錯誤の取組みのために継続的に確保する少額の予算枠を設ける」(金額は新規事業の売上見通しや成功確率に基づいて決めるのではなく、企業の財務体力や経営方針によります。大事なのは、アイデアや企画があって始めて予算をつけるのではなく、継続的に試行錯誤する取組み自体を予算化することです)
B.その予算枠を、「不完全でも良いので『顧客のリアルなフィードバックを得るため』のものづくりと、顧客のフィードバックをもとにした継続的な改善活動」の取組みに使う
C.この取組みの中で実際の顧客のフィードバックから「確実なヒットの手応え」をつかんだテーマに対して、あらためて従来型のプロセスを適用して、事業化する。
ITを活用したサービス開発の分野では「顧客のフィードバックをもとにした継続的な改善活動」を効果的に行うための様々な手法があります。例を挙げると
・UXデザイン
・クラウドネイティブアーキテクチャ
・アジャイル開発
といったものです。
「UXデザイン」とは
「デザイン」といっても、単に「見栄えのするかっこいい画面を作る」というような表向きのことではありません。「UX」とは、「 UserExperience」(ユーザー体験)の略です。安価で、機能がたくさんあるものがより売れる、競争に勝つ、という時代ではなくなりました。顧客はどのような体験をしたいと思っているのか、という視点を出発点として、その体験を顧客に与えるためのサービスを設計していく、という考え方をとことん研ぎ澄ませていくことで、顧客に選ばれるサービス、顧客にお金や時間を使ってもらえるITサービスを作っていくことです。
そのためには、顧客(ユーザー)のフィードバックを継続的に得る仕組みづくりと活動が不可欠です。ユーザーインタビューをはじめ、ユーザーの行動を観察したり、ITサービスにおいてはユーザーがどのようにサービスを使っているのかについての様々なデータをITを利用して集めることで、顧客からのフィードバックを収集し、サービスの改善に活用することが重要になってきます
「クラウドネイティブアーキテクチャ」とは
CloudNativeComputingFoundationという団体があって、そこで「クラウドネイティブ」という言葉の意味が定義されています。
https://github.com/cncf/toc/blob/main/DEFINITION.md
クラウドネイティブ技術が得意とすることは「試行錯誤の取組に適している」ということです。従来型のIT技術においては、初期段階でまとまったIT設備投資が必要でしたが、クラウドの活用により、始めること、止めること、増やすこと、減らすことがより柔軟にできるようになります。またITサービスの開発においては、機能を追加したり変更したりすることに伴い多くの作業やテストが発生し、変更が多くなればなるほど手間と時間とコストが膨れ上がるという課題が有りましたが、様々な自動化の技術や手法によりこうした課題を解決します。
「アジャイルアプローチ」とは
「アジャイル」というキーワードの原典は、「アジャイル・ソフトウエア開発宣言」(https://agilemanifesto.org/iso/ja/manifesto.html ) です。(2001年発表)もともとは上記の通り、ソフトウエア開発工学の分野における用語ですが、ここで出てくる「計画に従うことよりも変化への対応を」の考え方は、ソフトウエア開発だけでなく、新規事業に取組む活動全般にも応用できるポイントであると考えています。
最後に
これらの手法を用いることで、新規事業立ち上げのリスクがゼロとはいえないまでも、本格的な投資を行う前に不確実性をある程度削減することで、企業ごとの経営体力に応じた新規事業への取組みが可能になるのではないかと考えています。