日記 3月24日 エッセイ風に

気持ちのいい朝だったなどという表現はよくするが、今日は気持ちの悪い朝だった。
なにしろ、夢がとんでもなく不可解だったのだ。
見た夢は僕がそこかしこで、タバコを吸っている夢だった。しかも電子の。
しかも、その電子タバコはスマートフォンのようなサイズなのだ。
夢の中の僕は偉そうにしていて、毛皮か何かの上着を羽織っていた。
疲れている気持ちをタバコで浄化させたいと思い、それが夢に出てきてしまったのだろう。
自分のストレス発散方法はタバコしかないのかと、憂鬱な気持ちで朝を迎えた。タバコなんて吸ったことないのに。

「みんなーそろそろ準備してー」
と母のいつもの支度コールで布団を剥がされる。
まだサナギだった僕を無理やり羽化させて、整理しきれない気持ちをそのままに、よししょと起き上がることにした。
今日は週に一回の教会の日だ。

妹はなぜか今日、念入りにメイクをしていた。髪も巻き上げて、服も着ているので、最終メンテナンスといったところだろう。
「今日は何かあるの?」
と日常会話を試みたら
「うん、ライブ」
と僕の会話を半分の意識で、もう半分は前髪にむいていた。
推しのライブだからといって、その推しとやらは妹のこと一切見向きもしないのに、大一番と言わんばかりの準備に、心の中で嘲笑した。
失礼だとは思っているが、そういう人が大勢集まって、推しは誰かもわからないファンに向かって、金銭分のサービスを施す。
これだからアイドル稼業は。と、僕の回らない頭が差別をした。

今日、唯一あったいいことを挙げるとするならば、服の選択が早かったことだ。いつも悩みに悩んで部屋を散らかしては親に怒られる。
先がわかる悪循環をなぜか毎度毎度引き起こしてしまう。今日はそのリスクが回避できて、少しだけ気分が良くなった。


教会に着くと、従兄弟がいて、いつも、どの距離感で話せばいいかわからなくなる。
友達以上の関係なことは確かだが、同時に友達以上に相手に対する知識が浅い。好きな食べ物、アニメ、ゲーム、趣味。何一つ知らない。
けれど、子供の頃からの知り合いだから、とりあえず「おう」とフランクに、毎週作り出される薄い壁を壊すように、挨拶だけ交わした。
みんなはどうしているのだろうと、会うたびに考えてしまう。

牧師の話は、興味深いが、わかりづらいところもある。
韓国の牧師なので片言で、おまけに、従兄弟が俺の方で寝始めてしまった。これも毎度のことだ。本当に何しにきてるんだこいつは。
しかし、変な話だが、整っている顔に甘えられるのは、そこまで嫌な気持ちにはならない。こういう距離の詰め方は、男女問わず、少し俺は弱いんだ。

教会が終わり、妹と母親はライブに、俺は自宅に向かうために反対の電車に乗った。
何気に、一人で帰りの電車を使ったのは初めてかもしれない。けれども俺はもう19だ。電車一本で悩むような子供ではない。
いつも通り乗り換えまで降りたのだが、ここからは一駅だ。俺は散歩も兼ねて、歩くことにした。
散歩は、色々なインフルエンサーから良いと言われているし、散歩しているとなんだかアーティスト感が出てくる。
今思うと、イキっている行動に過ぎないが、効果も感じているし、歩くのは好きなので、誰も来ないツイキャスを開きながら、マップに従って家に帰った。

家では俺一人。
小説の推敲と更新をしていたら2時間経っていた。
散歩している間に、友達にゲームを誘ったのを忘れていて、連絡したら快く許してくれて一緒にゲームをした。こういう友達を増やしていきたい。

1時間ほどゲームをして、相手は夜ご飯だと通話を切り、クッションに埋もれながら完全に一人の時間が訪れた。
お腹が空いているが、気力が湧いて来ず、出前をとるか、食べに行くかなど、うだうだ考えていたら、時刻はとっくに九時を回っていた。
結局、冷凍庫にあった冷凍食品を苦しくなるまで食べて、また横になってしまった。
今思えば、さっさと冷凍食品を食ってギターの練習でもすれば良かったのに。とパソコンを打ちながら後悔している。

フリーレンを一話見て、昨日のように感化されて思いついたネタをスマホにメモした。
こういう日が毎日続いては欲しいが、疲れているのに続きを書くか、お風呂に入ったほうがいいんじゃないかと、さっきみたいにどうでもいい優柔不断でリビングをうろうろしてしまった。
結局、メモに少し細かく書き加えた後、お風呂にゆっくり浸かり、気分が落ち込まないように音楽をかけて寝る支度をした。

ベットに入って、数分、何もしない時間が訪れた。よくあることだ。
自分は何をしているんだろうと、自問自答を繰り返して、絶対に答えはやってこない。
意味ないことだとわかっているのに、考えると、雪だるま式に悩みが増えて、重く、辛くなってしまう。
近くにあったギターを自分に言い訳をするために少しだけ鳴らして、成長しない様は、まるで今日の自分だと思って、今日を終えるためにパソコンを閉じた。

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