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畜生
畜生(動物)は、弱肉強食の世界です。
いつ自分より強い敵に殺されてしまうかわからないという恐怖におののかなければならず、心は緊張に支配されています。
また、天敵に食い殺される苦しみや、人間に捕獲され生きたまま皮を剥がれる・食用肉にするため悲惨な方法で殺されるといった、多くの苦しみが存在しています。
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動物には心配ごともなさそうだし、動物にうまれることはそう悪いことでもなさそうだという人がいるけれど、それは動物の本質を見抜いていない人の意見である。
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しかし、動物たちは地獄の住人や餓鬼とはまた別種の苦しみのくびきにつながれている。
それは愚かさのもたらす苦しみである。
海に住む動物たち、魚や貝や亀、それにそれらよりもっと小さい動物のことを考えてみよう。
大きい動物は小さい動物を食べ、小さい動物は大きい動物にへばりついて、体のくぼみを食い荒らしている。
彼らは大きな食物連鎖の中にあって、他の動物を食べ、自分も他の動物の食べものになっていく、この輪の中から一歩も外に出られない、また出よういう智慧もわかない。
陸に住む動物たちも例外ではない。
他の動物や人に殺されて食べられたり使役されることから免れるのは難しい。いつもびくびく周囲を警戒していて、ゆったりできる時間はほとんどない。
とくに、人に殺され使役される動物たちは、まったく自分の自由というものを奪われている。羊は人に飼われて毛をとられる。
虎や熊はその毛皮のために殺される。
じゃ香鹿は角めあての狩人がねらっている。
殺して肉をとるために飼われている動物たちは、さらにあわれである。
彼らは殺されるために生まれ、育てられるのだから。
しかし動物たちは、自由を奪われたそんな状態にいながら、そこから脱けでることができない。
自分でどうしたらよいのか、わからないのである。
動物の心は愚かさに曇らされている。
愚かさや無知のために、果てしない苦しみの中にあって、しかもそこに埋没しているのである。
(中沢新一『虹の階梯』)
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