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餓鬼

餓鬼界は、飢えと乾きの苦しみの世界です。

人間の世界でも、アフリカの貧困地域などでは、食べたくても食べられず死んでいく人が多くいます。

人間の場合、極度の飢え・乾きに陥ると死に至りますが、

餓鬼の世界では、その状態でも死ぬことができず、果てしなく長い間苦しまねばならないと言われています。

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餓鬼に生まれたものは、地獄の住人のつぎにひどい苦しみを味わうことになる。餓鬼は私たち人間とはちがう次元に住むこともあるし、人間界をうろついていることもある。

餓鬼は渇きと飢えに苦しんでいる。

まず生まれた環境のせいで、ひどい苦しみをなめている餓鬼たちがいる。

荒れはてた不毛な土地に生まれた彼らは、食べものや水を探して、もう何百年もさまよいつづけているけれど、ひとかけらの食べもの、一滴の水さえ見つけることができない。

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向こうの方に小川を見つけても、いざそこにたどりついてみると、もう渇き切っている。

果実のたわわに実った緑の林が遠くに見えて、そこへあえぎあえぎたどりついてみるのだが、もう葉っぱすら枯れ落ちてしまっている。

夏は夜の月さえ焼けるほど暑く照り輝き、冬の太陽は死んだように弱弱しく、ひどい寒さである。

別の餓鬼たちは、あまりに不幸な身体に生まれついたがために苦しむ。

巨大な図体をしているのに、食道は針の穴ほど、ガブガブ水を飲んでものどをとおるのはごくわずかで、そこをとおりぬけている間に渇いてしまう。

食べものが胃にたどりつけたとしても、夜にはそれが火を発して内臓は焼けただれてしまう。

足はひょろひょろだから、遠くに食べものを見つけてもそこまでたどりつけない。別の餓鬼の腹には寄生虫が住みついていて、飢えをさらにかきたてている。

(中沢新一『虹の階梯』)

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