異種族恋愛……だけじゃない! 映画『マイ・エレメント』ネタバレあり感想

 ディズニー・ピクサーの最新作『マイ・エレメント』を観てきました。簡単に感想を書いていきます。

 ※以下ネタバレを含みます。

映画『マイ・エレメント』概要

 『マイ・エレメント』は2023年8月に劇場公開されたディズニー・ピクサーの映画。監督は『ファインディング・ニモ』『Mr. インクレディブル』の脚本や『アーロと少年』の監督を担当したピーター・ソーン氏です。

 火・水・土・風の4つの「エレメント」が暮らす世界を舞台としたファンタジー映画で、少女の自分探しや異種族同士のロマンスなどが中心に描かれます。

 あらすじは以下の通りです。

エレメント・シティでは、火・水・土・風の4つのエレメントたちが暮らしている。町には、違うエレメントとは関わらないという約束があった。家族の店を継ぐことを夢みる火の女の子エンバーは、ある日水の男の子のウェイドと出会い、徐々に親しくなっていく。

映画ナタリーより

感想

 いやあ、もうほんとによかったです!!

 予告見て「あ、これ絶対好きなやつだ」と判断し、最大限の期待とともに鑑賞に臨みましたが、その期待を超えるレベルで楽しめました。

 以下、項目ごとに感想を書いていきます。 

設定・シナリオ

 「優秀だけどちょっと精神不安定な女の子が、実家のお店を営業停止の危機から救うために異種族の男の子とともに奔走。その過程で自分の内面の課題に向き合う」という非常にわかりやすいログライン。冒険、恋愛、自分探し、家族といった諸要素が綺麗に混ざり合っていて、すごく「観やすい」かつ「心に残る」物語でした。

 特徴的だと感じたのは、世界観の描写が必要最低限で済まされていたところです。

 予告などで「火・水・土・風の4つのエレメントが暮らす世界」と説明されていたので、各エレメント同士の対立関係や複雑なアイデンティティ・ポリティクスを描く作品だと予想していたのですが、実際には「土」と「風」についてはほとんどメインストーリーに絡んでこず、「火」と「水」(あるいは、「火」と「それ以外」)という単純な構図でストーリーが展開されました。

 全体を通して振り返ると、この思い切った引き算のおかげでメインテーマがはっきりと伝わる構成に仕上がっていたように感じます。

テーマとその描き方

 テーマの一つは「自分探し」。子供の頃から父親の後継として育てられた火の女の子・エンバーが、水の男の子・ウェイドとの冒険の中で「自分のやりたいこと」を見つめ直す物語です。

 最終的にエンバーが見つける「ガラス職人」という目標について、前半はほとんど示唆されないことがとてもリアルに感じました。幼少期から「お店を継ぐこと」を当たり前に目指してきた彼女としては、そもそも「自分が何をしたいのかを考える」という発想自体がなかったんですよね。

 また、現実世界ではどちらかといえば男性ジェンダーに割り当てられてきたであろう「家業を継ぐ」という性役割を女性主人公のエンバーに課した上でそこからの解放を描くという構造も面白いと感じました(本作の舞台設定から「女性の自由」の物語を作るなら、「火の許嫁と水の恋人の間で葛藤する」という方向もあり得たと思うんですよね)。

映像・演出

 アクションシーンが物凄く良かったです。それぞれのエレメントで能力や弱点がかなり具体的に設定されていることもあり、迫り来る困難をどう切り抜けるのか、エンバー・ウェイドたちの一挙一動に注目させられました。

 また、背景や自然物がほとんど実写に近い作画に仕上がっており、クライマックスの洪水のシーンは大迫力でした。

 音楽に関しては、「音楽自体で魅せる」というよりは黒子に徹するタイプのBGMが多かった印象ですが、個人的に一番秀逸だと感じたのはエンバーがウェイドに連れられて地下にある「ビビステリアの花」を見に行く時のBGMです。私が観た劇場だと右側のスピーカーから偏って出力されており、音楽に包み込まれるというよりはどこか遠くから語りかけられる感じで、やや意識が遠くなったような浮遊感を味わいました。

まとめ

 以上、映画『マイ・エレメント』の感想でした。複数のテーマを上手に絡めながら主人公たちの様々な葛藤を過不足なく描いた極上のエンターテインメント。筆者はあまりディズニー・ピクサーには詳しくないので過去作との比較はできませんが、個人的には「傑作」だと感じました。

 細かい演出やセリフ回し、声優さんの演技などもほんとうに素晴らしくてまだまだ語りたいことは尽きないのですが、一旦このあたりにしておきます。

 今回は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました!

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