「 未定 」#52

イズコは爆風で吹き飛ばされ全身を強く打ち動けなかった。周囲で上空のドラゴンに弓を射るものが数人いたがあまり効果はないようだ。しかしドラゴンは上空を旋回しほどなくどこかへと姿を消してしまった。

全身の痛みが少しずつ薄らいできてようやく周囲を見渡す余裕ができた。煙が上がり焼き焦げた匂いがする。視線の先に炎に焼かれた無数の死体が重なり倒れているのが見えた。ドラゴンが去ったのを見て街の人々が怪我人や重傷者を運び出している。そういえば先程の歌い手のエルフは大丈夫だったのだろうか?

「おい、君大丈夫か?」ふいに男に声をかけられた。

「僕は大丈夫だ。怪我もしていないみたいだ」

「そうか、早くこの場所から移動しろ、死にたくなかったらな」

「わかった」
シーレの街にたどり着いていきなりこれか。やはり自分が行く先々にはトラブルがついて回るということを今回も証明したことになった。イズコはとにかく情報を得るために酒場と宿屋を探すことにした。
酒場を見つけて店内に入る、がやがやとにぎやかな店内、どうやら先程のドラゴンの襲撃の話で持ちきりのようだった。なぜドラゴンが街を襲撃したのか、いろいろな憶測が話題になっている。銀の鬼が送り出したという噂も飛び交っていた。






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